【第十七話】菩提寺に手紙を書く

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コラム
祖母の菩提寺は、
生家からそれほど遠くない場所にありました。


「もしかしたら、何か分かるかもしれない」


そう思い、
まずは手紙を書くことにしました。


突然訪ねるのは失礼かもしれない。
まず事情を伝えよう。


そう考えて、丁寧に手紙を書き、
投函しました。


返事を待ちましたが、
一週間ほど経っても連絡はありません。


やはり難しいのかもしれない。


そう思いながらも、
思い切って電話をかけてみました。


少し緊張しながら事情を伝えると、
ご住職はとても穏やかな声で言いました。


「一度、来てみますか」




こうして、
お寺を訪ねることになりました。




正直、
断られるかもしれないと思っていました。


というのも、
お寺の過去帳は昔のように
簡単に見せてもらえるものではありません。


個人情報の問題や、
身元調査に使われることもあるため、


今では
閲覧を禁止する運用をするようお達しが出ているようです。
ですから、基本的に過去帳を見ることはできません。
あくまで、ご住職のご厚意で抜粋したものを教えて頂きます。


実際、訪ねたときも
まず目的を聞かれました。


私は、
先祖のことを知りたいという気持ちを
正直に話しました。


するとご住職は、一通の封筒を取り出し
名前が書かれたメモを机の上に広げて下さいました。


そこには、
戸籍には出てこなかった名前がありました。


そしてもう一つ、
目に止まる言葉がありました。


「初代 長蔵」


最古の戸籍に出てくる
あの長蔵です。


しかし、
そこにはこう書かれていました。

「初代…?」
その言葉を見たとき、


正直、つながったという感覚はありませんでした。
むしろ、
新しい疑問が生まれました。


何の初代なのだろう。


ただ、
ひとつだけ確かなことがあります。


誰かが
何かを始めた人物だった。
その可能性です。


さらにご住職は、
当時の地域の話もしてくださいました。


この地域は漁師が多かったこと。
「口減らし」といって
子どもを丁稚奉公に出すこともあったこと。


漁に出て
帰ってこない人もいたこと。


そしてこの地域は、
何度も津波に襲われていること。


そのため、
古い過去帳の多くは
失われてしまっているそうです。


資料は、
いつまでも残るわけではない。
そんな現実も、
改めて思い知らされました。


もしあなたが
先祖を調べていくとき、
戸籍に出てこない名前や
聞いたことのない言葉に出会ったら、
どう感じるでしょうか。


「分かった」と思うでしょうか。
それとも、
「もっと分からなくなった」
と感じるでしょうか。


調査というのは、
答えが見つかるほど、
新しい疑問が生まれる
ものなのかもしれません。



そしてもう一つ、
思いがけないことが分かりました。


このお寺には、
長男家のお墓もあるというのです。


しかも、
長男家は今も隣町に住んでいて、
この寺の檀家になっている。


ご住職は、
その連絡先を教えてくださいました。


先祖調査のカギを握るであろう長男家。


その扉が、
思いがけない場所で
開いた瞬間でした。


次は、
その家に手紙を書くことになります。

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