【第十六話】生家の前で

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コラム
新しく取り直した旧土地台帳を見ながら、
もう一度その場所へ向かいました。


前回とは違います。
今度は、地番のズレを整理した上で辿り着いた場所でした。


通りを曲がると、
一軒の家が見えてきました。


ここだ。


旧土地台帳に載っていた先祖の名前。
その土地が、今の地図のどこに当たるのか。
法務局で地図を重ねて確認した場所です。


生家は、今も残っていました。


そしてそこには、
親戚の方が住んでいると母から聞いていました。


母を通じて声をかけてみましたが、
返ってきたのは、少し困ったような言葉でした。


「もう高齢でね。昔のことはよく分からないんだ」


結局、話を聞くことはできませんでした。
少し拍子抜けした気持ちもありました。


自分の中では、
ここまで調べてきた流れがある。


戸籍を取り寄せ、
郷土史を読み、
法務局で地番のズレを確かめて、
ようやく辿り着いた生家です。


けれど、
それは私の物語であって、
相手にとってはそうではないのかもしれません。


考えてみれば、
母と父でも反応は違いました。


私が先祖調査に熱中していても、
「そうなんだ」という反応の人もいる。


親戚であっても、
距離があればなおさらです。


家の話というのは、
必ずしも誰もが語りたいものではないのかもしれません。


遠い昔の出来事。
自分の生活とは直接関係のない話。


あるいは、
触れたくない事情がある家もあるでしょう。


調査をしていると、
資料は客観的です。


けれど、人の記憶や感情はそうではありません。


戸籍や土地台帳には残っていても、
語られない家の話もある。


そんな当たり前のことに、
このとき初めて気づきました。


もしあなたが突然、
遠い親戚から連絡を受けて、


「先祖のことを教えてください」


と言われたら、
どう感じるでしょうか。


嬉しい人もいれば、
戸惑う人もいるかもしれません。


家の歴史は、
誰にとっても同じ温度ではないのだと思います。


連絡できる親戚も分からない。
長男家の連絡先も見つからない。


同じ名字の家に
アンケートを出すことも考えましたが、
近すぎる地域では現実的ではありませんでした。


そこで、
ひとつ思い当たる場所がありました。


菩提寺は同じはず。


次はそこに聞いてみよう。


調査は、
また少し違う方向へ進み始めました。
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