行政書士は「法定相続情報証明制度」の利用において、相続人の正当な「代理人」としてすべての手続きを代行することができます。
1. 法定相続情報証明制度とは?
まず前提として、この制度は2017年に法務省が開始したものです。
従来、銀行の口座解約や不動産の名義変更などを行う際、相続人はその都度「亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本一式の束(非常に分厚くなることが多いです)」を各窓口に提出し、確認を待つ必要がありました。
この制度を利用すると、戸籍の束と「法定相続情報一覧図(家系図のようなもの)」を一度だけ法務局に提出すれば、法務局が無料で「認証文付きの法定相続情報一覧図の写し(法定相続情報証明書)」を必要な枚数だけ発行してくれます。
以降は、分厚い戸籍の束の代わりに、このペラペラな証明書1枚を各窓口(銀行や証券会社など)に提出するだけで相続手続きが進められるという、非常に便利な制度です。
2. 行政書士が代行できる具体的な業務内容
この制度を利用するためには、法務省が定めた国家資格者(弁護士、司法書士、行政書士、税理士など)が代理人となることが認められています。行政書士にご依頼いただいた場合、以下の業務を全て丸投げすることが可能です。
戸籍謄本等の収集代行
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍や、相続人全員の戸籍などを、職権(職務上請求)を用いて全国の役所から迅速に収集します。
法定相続情報一覧図の作成
収集した戸籍をもとに、法務局が定める厳格なフォーマットに従って一覧図(家系図)を作成します。
法務局への申出・受領代行
依頼者に代わって管轄の法務局へ書類一式を提出し、発行された「法定相続情報証明書」を受け取ります。
その後の手続きの代行
発行された証明書を用いて、銀行口座の解約・払戻し、証券会社の口座移管、自動車の名義変更などの手続きをそのまま引き続いて代行することが可能です。
3. 行政書士に依頼する際の「絶対的な注意点(境界線)」
ここが最も重要なポイントであり、現実的なお話になります。行政書士は万能ではありません。相続財産の内容によっては、最初から他の専門家(司法書士など)に依頼した方が、二度手間にならず費用も安く済むケースがあります。
以下の業務は、法律により行政書士が行うことは禁じられています。
不動産の相続登記(名義変更) ➔ 【司法書士の独占業務】
相続財産に「土地や建物」が含まれており、その名義変更をしたい場合、行政書士は登記申請ができません。もし不動産がある場合は、最初から司法書士に法定相続情報証明の取得から登記までを一括して依頼するのがセオリーです。
相続税の申告 ➔ 【税理士の独占業務】
相続税の基礎控除額を超えており、税務署への申告が必要な場合は税理士の領域です。
相続人同士の紛争解決・交渉 ➔ 【弁護士の独占業務】
「誰がどの財産をもらうか」で相続人同士が揉めている場合、行政書士は代理人として交渉や調停を行うことはできません(行政書士が関与できるのは、すでに全員の合意が形成されている平和的な相続のみです)。
まとめ
どのような人が行政書士に依頼すべきか?
法定相続情報証明制度の利用を含め、行政書士への依頼が最も適しているのは以下のようなケースです。
1. 相続財産に不動産がなく、預貯金や有価証券、自動車などがメインである。
2. 複数の銀行に口座があり、解約手続きを全て専門家に丸投げしたい。
3. 相続人同士で揉め事は一切なく、遺産分割の合意ができている。
もしご自身の(あるいは依頼者の)ケースに不動産が含まれている場合は、行政書士ではなく司法書士を窓口にすることをお勧めします。もちろん、多くの行政書士は提携する司法書士や税理士のネットワークを持っていますので、「まずは行政書士に相談して、登記の部分だけ司法書士に回してもらう」というワンストップ対応を行っている事務所も多数存在します。