行政書士が取り扱う「不動産に関わる業務」は、非常に多岐にわたります。行政書士は主に「役所への許認可申請」と「権利義務・事実証明に関する書類の作成」のプロフェッショナルであり、不動産そのものの売買を仲介するわけではありませんが、その周辺の法的手続きやトラブル予防において重要な役割を担っています。
1. 不動産に関する「許認可申請」業務
不動産を特定の目的で利用したり、不動産に関わる事業を始めたりする際、役所の許可が必要なケースが多くあります。行政書士は依頼者に代わってこれらの複雑な申請を行います。
農地転用許可(農地法関連)
行政書士の不動産業務で最も代表的なものです。畑や田んぼ(農地)に家を建てたり、駐車場や太陽光パネルの設置場所として利用したり、あるいは農地のまま売買する場合、農業委員会の許可や届出が必要です(農地法第3条、4条、5条)。
宅地建物取引業(宅建業)免許の申請
不動産屋(不動産仲介業や分譲業など)を新たに開業する際、都道府県知事や国土交通大臣の免許を受けるための申請手続きを代行します。免許の更新や、役員・専任の宅地建物取引士の変更届なども行います。
建設業許可の申請
不動産に建物を建てる、または大規模なリフォームを行う建設業者向けの許可申請です。一定規模以上の工事を請け負うには建設業許可が必須となります。
その他の許認可
民泊新法に基づく「民泊(住宅宿泊事業)」の届出、旅館業法の許可、開発行為の許可申請、道路位置指定の申請など。
2. 「権利義務・事実証明」に関する書類作成業務
不動産の売買や賃貸、相続などにおいて、後々のトラブルを防ぐための法的な書面を作成します。
契約書の作成
不動産の売買契約書、賃貸借契約書、土地の境界に関する合意書などの作成を行います
※ただし、不動産業者として仲介に入ることはできません。
相続関連(遺産分割協議書の作成など)
不動産を含む遺産を誰がどのように引き継ぐかをまとめた「遺産分割協議書」の作成を行います。また、それに伴う相続人調査(戸籍収集)や財産目録の作成も担います。
内容証明郵便の作成
家賃の滞納者に対する督促、立ち退き要求、敷金返還の請求など、不動産トラブルの初期段階において、意思表示を明確にするための内容証明郵便を作成します。
3. 役所等での「事実調査」業務
不動産取引や活用を安全に行うための事前調査を行います。
公法上の規制調査
その土地にどのような建物を建てられるのか(用途地域、建ぺい率、容積率など)、都市計画法や建築基準法、その他の条例(景観条例など)による制限がないかを役所で調査します。
現地調査・図面作成
許認可申請に必要な現地の写真撮影や、配置図・平面図などの簡単な図面作成を行うこともあります。
他士業との連携
実際の現場では、行政書士が農地転用の手続きや遺産分割協議書の作成を行い、そのまま連携する司法書士に登記をバトンタッチする、といったチームプレーがよく行われます。
行政書士は、不動産を「活用したい」「事業を始めたい」「契約を安全に結びたい」という段階での心強いサポーターとなります。