はじめに:立ち止まってしまったあなたへ
「どうしたいか分からない」
この言葉を心の中でつぶやいたことはありませんか?
転職すべきか、今の会社に残るべきか。
結婚するべきか、もう少し待つべきか。
親の介護をどうするか。
子どもの進路をどう導くか。
この関係を続けるべきか、終わりにすべきか。
人生には、答えが見えない岐路がいくつも現れます。そして、その度に私たちは立ち止まってしまいます。
私はこれまで、数え切れないほどの「困っている人」と対話してきました。経営者も、管理職も、現場の社員も、そして最近では、人生の岐路に立つ個人の方々も。
彼らの多くが最初に口にするのが、この言葉です。
「どうしたいか分からないんです」
でも、大丈夫です。実は、この状態は決して悪いことではありません。むしろ、ここからが本当のスタートなのです。
今日は、この「分からない」状態から抜け出すための、最初の一歩をお伝えします。
なぜ「どうしたいか分からない」のか
まず、理解してほしいことがあります。
あなたが「分からない」のは、考えていないからではありません。
むしろ、考えすぎているからです。
私がこれまで出会った人たちを思い返すと、「どうしたいか分からない」と言う人には、共通点がありました。
パターン1:選択肢が多すぎる
「転職するなら、どの業界? どの職種? 大手か、ベンチャーか、それとも起業か...」
選択肢が多すぎて、どれを選べばいいか分からなくなっている状態です。スーパーで何十種類もの醤油を前に立ち尽くしてしまうのと同じです。
パターン2:考えるべきことが複雑に絡み合っている
「転職したいけど、収入が下がったら住宅ローンが払えない。でも子どもの教育費もかかる。親の介護も始まりそう。妻は反対するかもしれない...」
糸が絡まったように、複数の要素が複雑に絡み合い、どこから解けばいいか分からない状態です。
パターン3:他人の期待と自分の本音が対立している
「親は安定を望んでいる。でも自分は挑戦したい。いや、本当は自分も不安なのかもしれない...」
誰かの期待、世間の常識、そして自分の本音。それらが頭の中でせめぎ合い、何が本当の自分の気持ちなのか分からなくなっている状態です。
パターン4:失敗が怖くて考えることを避けている
「考えても答えが出ない気がする。考えるのが怖い。だから、考えないようにしている...」
実は、これが一番多いパターンかもしれません。無意識のうちに、思考を停止させてしまっているのです。
あなたは、どのパターンに当てはまりますか?
もしかしたら、複数のパターンが同時に起きているかもしれません。それも、よくあることです。
でも、安心してください。どのパターンであっても、抜け出す方法はあります。
間違った問いかけをしていませんか?
「どうしたいか分からない」状態にある人の多くが、実は間違った問いを自分に投げかけています。
たとえば、こんな問いです。
「正解は何だろう?」
「失敗しない選択は?」
「みんなはどうしているんだろう?」
「後悔しない道は?」
これらの問いには、共通する罠があります。
「唯一の正解」があると思い込んでいること。
でも、人生に「正解」なんてありません。どの選択にもメリットとデメリットがあり、どの道を選んでも何かを得て、何かを失います。
コンサルティングの現場でも同じです。どんな経営判断にも、100%の正解はありません。あるのは「今、この状況で、最も合理的だと思われる選択」だけです。
だから、私たちがまず変えるべきは、問いかけ方そのものなのです。
最初の問いかけ:「何に困っているのか?」
では、どんな問いから始めればいいのか。
私が20年間、どんな相談を受けた時も、必ず最初に投げかける問いがあります。それは、
「具体的に、何に困っていますか?」
この問いです。
え、それだけ? と思うかもしれません。でも、この問いこそが、すべての出発点なのです。
なぜこの問いが効果的なのか
理由は3つあります。
1. 抽象的な不安を、具体的な言葉に変える
「どうしたいか分からない」は、抽象的すぎます。抽象的なままでは、考えることができません。
でも「何に困っているのか」と問いかけると、自然と具体的な言葉が出てきます。
「収入が減るのが不安」
「上司との関係がうまくいっていない」
「やりがいを感じられない」
「将来が見えない」
抽象的だった霧が、少しずつ晴れていくのです。
2. 感情と事実を分ける
「困っている」ことを言葉にする過程で、感情と事実が分離されます。
たとえば、「転職すべきか分からない」という人に「何に困っているのか」と聞くと、
「今の仕事が面白くない」(感情)
「昇進の見込みがない」(事実)
「給料が低い」(事実)
「将来が不安」(感情)
このように整理されていきます。すると、何が本当の問題なのかが見えてきます。
3. 問題を複数に分解できる
「何に困っているのか」と問うと、たいてい1つではなく、複数の困りごとが出てきます。
お金のこと
時間のこと
人間関係のこと
自分の気持ちのこと
絡まった糸をほどくように、1本1本を分けて見ることができるのです。
実践:紙に書き出してみる
では、実際にやってみましょう。
今、あなたが「どうしたいか分からない」と感じているテーマを1つ、思い浮かべてください。
そして、紙とペンを用意してください。スマホのメモでもいいですが、できれば手書きをおすすめします。手を動かすことで、脳が活性化するからです。
紙の真ん中に、大きくこう書いてください。
「私は何に困っているのか?」
そして、その下に、思いつくままに書き出してください。
きれいに書く必要はありません
順序立てる必要もありません
誰かに見せるものでもありません
ただ、頭の中にあるモヤモヤを、そのまま言葉にして、紙に吐き出してください。
5分間、書き続けてください。手を止めないでください。
書き出した後に起こること
5分後、あなたは少し驚くかもしれません。
紙の上には、たくさんの言葉が並んでいるはずです。そして、その言葉を眺めていると、不思議なことに気づきます。
「あれ、意外と整理されてきた」
頭の中でグルグル回っていた思考が、紙の上に並ぶと、客観的に見えるようになります。
そして、こんなことに気づくかもしれません。
「困っていることの半分は、実はお金のことだった」
「本当に嫌なのは仕事そのものじゃなくて、上司との関係だった」
「不安の正体は、将来が見えないことだった」
見える化する。
これが、最初の一歩です。
「何に困っているのか」を言葉にできたら、あなたはもう「どうしたいか分からない」状態から、一歩前に進んでいます。
なぜなら、具体的な困りごとが見えれば、その解決策を考えることができるからです。
「どうしたいか分からない」という漠然とした霧の中では、何も見えません。でも、「お金が不安」「人間関係が辛い」「やりがいがない」という具体的な問題が見えれば、それぞれに対して考えることができます。
次回の記事では、この「困っていること」を、さらに深掘りしていきます。
本当に解決すべき問題はどれか?
何から手をつけるべきか?
自分でコントロールできることと、できないことは何か?
そして、「どうしたいか」が、少しずつ見えてくるはずです。
今日から始められること
この記事を読んだ後、ぜひやってほしいことがあります。
1. 今、悩んでいることを1つ選ぶ
仕事でも、家庭でも、人間関係でも、何でも構いません。
2. 「何に困っているのか?」と自分に問いかける
そして、紙に書き出してください。5分間、手を止めずに。
3. 書いた紙を、眺める
すぐに答えを出そうとしなくていいです。ただ、眺めてください。
それだけで、何かが変わり始めます。
おわりに:分からないことは、悪いことじゃない
最後に、お伝えしたいことがあります。
「どうしたいか分からない」という状態は、決して悪いことではありません。
それは、あなたが真剣に考えているからこそ、起きていることです。適当に生きている人は、悩みません。
そして、「分からない」と認めることは、勇気がいることです。
でも、その勇気を出せたあなたなら、きっと前に進めます。
一緒に、一歩ずつ進んでいきましょう。
※この記事について、ご質問や感想があれば、ぜひお聞かせください。あなたの「困っている」に、一緒に向き合いたいと思っています。