最初に断って置きますが、私はあんまり背景知識持っていないので、それなりの解釈しかできません。ごめんにゃ。
色々な方がこの詩の解釈をなさっており、キリスト教の背景知識やドイツの歴史、シラーについて詳しい方が解説したものなど、たくさんありますので、参考にしながらご自分なりの「歓喜の歌」を作りあげてくださいね!
詩を味わうのは、そういうところからでいいんじゃないでしょうか?!
まず、この「歓喜の歌」、シラーの詩、原題はAn die Freude、「喜びに寄せて」。
anは前置詞。手紙を書く時の宛名にもanが使われます。
分かりやすく、「喜びについて」と解釈してもいいかもですね。
「喜びさんへ」と解釈してもよいでしょう。
この詩ができたのは、フランス革命の前だということと、シラーがあの「シュトルムウントドランク」=Sturm und Drangの時代の詩人であるということを念頭に入れておきましょう。
もっと感情的に!感情爆発!それが自然だ、文句あるかこの野郎!みたいな、「自然へ帰れ」というルソーの思想もかなり影響していたのではないでしょうか。
人間が人間らしく生きるということについてみんな真剣に向き合い始めたこと、そしてお隣の国で人民による革命が起こったことで、シラーの内面も「おぉ!革命!革命!」と興奮していたことでしょう。ゲーテ、ベートーベンとかもこの時代の人です。
激しいロマン、理想を持っている感じしますよね。
フランス革命というのはヨーロッパにおける火山噴火みたいな・・・すごく象徴的大事件なんですよね。
そりゃ、革命なんて歴史的大事件、大変革。だけど、あれほどの強大な権力、そしてまさか王殺しにまで発展するとは、当時のヨーロッパ人も考えていなかったのではないでしょうか。
他の国の王族・貴族たちも怯えたでしょうね。
フランス革命は、当時のドイツの思想家や芸術家、作家、音楽家にもちろん影響を与えたに違いないのですが、一番影響を受けたのは、当時の学生たちだったのかもしれません。
大学に行って、閉鎖的な階級社会の中でこの先ずっと生きると絶望的な気持ちになっていたところに、ちらっと光が見えてきた。
もしかしたら、変わるかも!変えられるかも!
時代が自分たちの味方になるかもしれない!!
そんな夢みたいな希望で、興奮していたことでしょう。
ウィキペディア情報によると、このシラーの詩が革命の後に発表され、それを学生さんたちが、フランスの今の国歌、もともとは革命の歌だったラ・マルセイエーズのメロディーで歌ってたのだそうです。
私は、その世代の人間ではないので、雰囲気を想像するしかありませんが、日本での学生運動、東大安田講堂事件とかああいう雰囲気だったのではないでしょうかね。
多くの学生が連帯をし、社会を変えようと動き出していた・・・
若い情熱が革命の熱で純粋化されていたでしょう。
長いものに巻かれて、寄らば大樹の陰で、自分の責任で生きることを放棄している大人のやつら。
そして若者に「俺らのように生きろ」と押し付ける。
目に見えない柵、檻の中で管理されることを拒否し、自分らしく生きることを求めて戦おうとする情熱・・・。嗚呼、ロマンですね!
1789年からフランス革命のごたごたが始まる。
実際ドイツで革命の風が起こったのは1848年。だが、ぐだぐだな感じになってしまい、反革命がおこったりで、ドイツ・オーストリアではフランスのようには革命は成功しなかった。
この間、革命前のうずうずした雰囲気の中、もともとのドイツ人のロマン的気質もあって、熱狂的で感じやすい学生さんが青春時代を過ごしたことでしょう。
そこに恋愛でもしていれば、精神的消耗度は相当高かったと想像します。
ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を読んで、触発され自殺をした学生がいたという逸話が、この小説の訳者解説に紹介されていますが、これもドイツ人のロマンティックで感じやすい性格を表していると思います。
影響力・破壊力対決で、ゲーテに対抗できる日本の作家は、三島由紀夫さんくらいじゃないでしょうか。
先日起こったドイツのクーデター未遂事件、私もドイツ語の記事をいくつか見ていますが、まだよくわからないです。
演出だったのでは?という疑惑もあるようですね。速報が出るのが早すぎた・・・まるで待ち構えていたようだったみたい。
ちょうど、今の政権になって一周年というタイミングもあり、ちょっとできすぎていたかな?しばらくしたら、詳しい記事など出てくるのではないかと興味深く待っています。
その首謀者とされる団体ライヒスビュルガー(帝国民)というのも、名前からして極右の活動家のように見えますが、中には「自然に帰れ」的な思想を持った人たち、今の政治の在り方に疑問を持っている人たちもいたようです。
国家による過剰な制約や制限などを拒否する!人間は自由であるべだ・・・というような考え方の人たち。自己決定権を大事にするジャーナリストもいたみたい。
そういう人たちの間では、コロナの規制、ワクチンなどが憤懣の種でずっとくすぶっていたのは確かなようです。
特にコロナが始まってから、このライヒスビュルガー会員?はぐっと増えていたらしい。
・・・詳しい情報が出てくるのを待ちましょう。
歓喜の歌の話に戻りましょう。
Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!
Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,
Wo dein sanfter Flügel weilt.
私が大学の頃に「第九の歓喜の歌は、酔っ払いの飲み会の歌だ」というような話を聞いたことがあって、それからなんとなく「ふーん・・・」と納得してしまっていました。
確かに、誰かれ構わず「おい、兄弟」「兄貴~」「姉御~」とか「杯を酌み交わした仲」とか「一生ついていきます!」とか、酔っ払いって人との距離感近いですよね。
それに、この部分。
Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
直訳すると、「お前の魔法が、再び結びつけるのだ。時代が分断したものを」
この、「お前」を酒と解釈すると、おぉ!と納得できちゃうんです。
酒の力で、世代が違う人、考え方や立場、身分が違う人とでも、仲良くなれるよ!って、すっきり解釈できる。
例えば、音楽の趣味が違う人でも、学歴に違いがあっても、年齢が違っても・・・その場でわいわいお酒を飲んでいると、なんとなく打ち解けあってしまうことってありますよね(私は下戸なので酔っぱらったことはありません)
ちょっと演歌っぽい雰囲気になりますけど、この「お前」を指すものが酒だと仮定すると、イメージ作りやすい。
しかも、この部分、結構曲の中でも盛り上がるところじゃないですか。
酒よー、お前の力がー、我ら―を結び付けー
男のー友情ー固いー絆―
みたいな感じで、吉幾三さんにでも歌ってほしいですねぇ。
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!
さらに、このfeuertrunkenもお酒をイメージさせます。
feuerが「火」なので、火酒、ウイスキーのことを連想する人もいるようです。
んだが、この「お前」は酒のことじゃねぇ。
タイトルを思い出してください。
喜びさんへ
お前というのは、喜びさんのことなんですよね。
An die Freude
喜びさんへ
Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium
喜びさん、(あなたは)美しき神々のきらめき、
楽園から来た娘さん。
きらめきは、閃きやインスピレーションと解釈してもよいですね。
※エリジウムはギリシア神話に出てくる楽園。よき行いをしたものがたどり着ける場所、桃源郷のようなところと解釈しておきます。
この冒頭部分は、「神々」と複数形になっていること、エリジウムという言葉が入っており、ギリシア神話の世界観が感じられます。
ausは、英語で言うfrom。
私のイメージとしては、桃源郷から桃がどんぶらこと流れてくるように、喜びはエリジウムから流れてくる。
喜びは、エリジウム出身、エリジウム産である、という感じですかね。
インスピレーションの意味にも繋がるので、こんな感じの解釈でおおむねいいのではないでしょうか。
Tochterは、娘。母と娘という意味での娘です。
Freude、喜びという単語が女性名詞のため、この代名詞はsie「彼女」があてられます。
例えば、ドイツ語で「子会社」という意味の単語が、
Tochtergesellschaft
です。会社という意味の単語が女性名詞なので、娘会社と表現されます。
喜びを擬人化しているものとして「娘」という単語を使ったのかもです。
また、エリューシオン、エリジウムには、レウケーというギリシア神話の妖精さんが住んでいるということから、彼女を指すものとしても解釈できるかもしれません。
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!
私たちは、天上の、あなたの聖殿に立ち入ります。
feuertrunkenの解釈が定まりませんが、trunkenが酔っぱらうという意味なので、「ふらふら千鳥足で」「ほろ酔い気分で」と解釈してもよいかもですね。
革命という背景から、火=情熱と解釈すれば、恍惚として、情熱に浮かされて、といったイメージも湧きます。
エリジウムから流れてくる喜びを感じると、神々のインスピレーションを受けたように、私たちは地上にいながら、神々の神殿に入ったような気持ちになる・・・みたいなイメージが出来上がります。
Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,
Wo dein sanfter Flügel weilt
喜びさんの魔法で、分断されていたものが再び結びつく。
喜びさんの柔らかな羽がとまるところ、すべて人たちは、兄弟となる。
喜びさんがいる場所では、みんな兄弟になるよ!
世代も階級も年収も学歴も関係ないよ!
いやぁ、やっぱり酔っぱらいっぽい雰囲気になりますよねぇ。
酔っておりません!酔っておりませんよぉ、、、おととっ!
いやぁ、今日はいい日だ、いい気分で酒が飲めた!ありがとう!みんなのおかげだよ、ありがとう、ありがとう・・・
と、あたりかまわず、知らない人も巻き込んで握手を求めてくるおっさん、いますよね・・・。
一人で勝手に感激して泣き出してしまったり。「生きててよかった」などと大げさな言い回しをしたり。
私はこういうシュトルムウントドランクな人、好きですけどね!
多分、ああいった時の心境が、桃源郷のエリューシオン、エリジウム、喜びさんの楽園なんじゃないでしょうか。
私はお酒が飲めないのでわかりませんけど。
革命という一つの夢に浮かされた人も、ある意味酔っ払いと同じような境地にいるのかもしれません。
みんなが同じ夢を持ち、理想を持ち、同じ方向に進むとき、そこに仲間にしか見えない楽園が出現します。そういう一体感、団結がますます高揚感を高めるのです。
という、冒頭部分から、だんだんと宗教的、キリスト教的イメージになっていくんです。
次回に続く☆
次回こそは原文をじっくり観察して翻訳比較の巻きです。
飲み会シーズンです。
みなさんも立場も身分も学歴も関係なく、無礼講で忘年会、シュトルムウントドランクしちゃってください♡