夢はまだ終わらない

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コラム
もう信じられないの一言
マッチポイントも全然覚えていない
最後の瞬間は全然思い出せない
それぐらい自分自身興奮した瞬間だったし
一生分泣いた

もう涙は枯れ果てた

国枝慎吾

東京2020パラリンピックの男子シングルス決勝
2大会ぶり3度目となる金メダルを獲得した

決勝戦
対戦相手はトム・エフべリンク(オランダ)
170kmの超高速サーブとパワーで
この舞台に勝ち上がってきた

国枝慎吾は
正確な読みと多彩なリターンが持ち味

合計15ゲームは
男子シングルス決勝の最少ゲーム数タイ記録の快勝
終始エフべリンクを翻弄し完璧な内容だった

最後の一球
エフべリンクのリターンがネットにかかり
ゆっくりと落下した

この瞬間
金メダルが確定

応援団にその拳を強く掲げ
そのまま目頭を強く押さえた

涙は止まらなかった

国枝慎吾にとって
初めての金メダルではない

しかし今までの金メダルとは
その価値がまったく異なる

シングルス3連覇確実と言われた
リオパラリンピック大会では
慢性化していた右ひじ痛が悪化し
準々決勝で敗退を喫している

それ以降、何度も何度も引退を考えていた

しかし
リオでの屈辱を晴らすまで辞めるわけにはいかなかった

ひじの手術を受けていたが
回復は思わしくはなかった

ラケットを握るたびに走る激しい痛み
何度も絶望感に襲われる
音もなく崩れ落ちるメンタル

かつての自分とは程遠い
つらく切なく悲しい感情

唯一奥さんに「もう引退かもしれない・・」
とこぼしたことがあったらしい
しかし、しばらくして
「とにかく何でもやりつくす」
と言いなおした

再び立ち上がるための新たな決意だった

自分のプレースタイルを改良
何度もフォームに修正を加えた
もう一度パラリンピックで金メダルを取って最強を証明する

その思いを胸に今シーズンを迎えていた

しかし
一度ランキングを落とした選手に
世界はそれほど甘いものではなかった

全豪、全英、全仏いずれも優勝を逃す

もう限界なのか?
どうしようもないのか?

そのたびに自分自身のテクニックも変えた

自分自身を疑う気持ちがすごく出てきた

バックハンドはこの1週間ぐらい前に
ようやくフォームが定まってきた

それぐらい自分のテニスに迷いもあった

眠れない日もあったし、重圧がかかっていた

新しいフォームは体に既に染み付いていて
取り戻すのは大変だった

でもそうした日々を過ごしたからこそ
今がある

最後の最後まであがきまくったからこそ
今日のこの瞬間がある

今思えば
この5年間は常にトライして自分を変えよう
失うものはないと言う気持ちでやってきた

「俺はできるんだ。俺は最強だ。」

何度も言い聞かせるけど
心の奥底ではそれを冷静に疑う自分がいた

そこに打ち勝ったのだと思う
最後はテクニックではなくメンタル勝負

と言うのは
経験上わかっていたので
強いメンタルで勝ち切った感じだった・・

誰に対しても紳士的で
ただひたすらに自分に向き合ってきた

謙虚な人柄と紳士たるその優しい人間性
国枝慎吾に尊敬の念を抱く人は多い

支えてくれたコーチとトレーナー
ここの舞台に立たせてくれた
スタッフ関係者みなさんへの感謝の気持ちでいっぱいです

パラリンピックが終わった後も
興味を持っていただけるようなプレーを続けたい

史上最強のテニスプレーヤー
フェデラーが大絶賛した
史上最強のレジェンド SHINGO

夢はまだ終わらない

eritten by Kaz Okayasu
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