あなたの「なんとなくだるい」には、ちゃんと理由がある
「最近、なんとなくだるい」「朝起きても疲れが取れない」「やる気が出ないのは、自分が怠けているからだ」——こんなふうに感じていませんか。
世の中には「疲れたら休もう」「セルフケアが大事」といった言葉があふれています。それ自体は間違っていないのですが、問題は、多くの人がそもそも自分がどれくらい疲れているのかを正確に把握できていないことです。だから「まだ大丈夫」「もう少し頑張れる」と思ってしまう。
Aさん(30代・広告関連の営業職)は、まさにそんな状態でした。入社して数年が経ち、後輩の指導も任されるようになった頃から、慢性的な疲労感に悩まされるようになったといいます。
「帰りが遅くなっても、自分の仕事をこなしつつ後輩のフォローもする。それが当たり前だと思っていました。週末は寝て過ごすことが増えたけど、『社会人ってこんなものだろう』って。でも、ある朝、ベッドから起き上がれなくなったんです。体が動かないというより、"動く理由が見つからない"という感覚でした」
この体験を「甘え」で片づけてしまう人は、実はとても多い。しかし、実はここには「疲労」という現象についての根本的な誤解が隠れています。
第1章:疲労は「見えない借金」のように積み上がる
蓄積疲労:気づいたときには手遅れのメカニズム
多くの人が「疲労」と聞いてイメージするのは、激しい運動の後や、徹夜明けのような一時的な疲れです。こういった疲れは、一晩ぐっすり眠れば回復します。わかりやすいし、対処もしやすい。
ところが、現代人を蝕んでいるのは、そうした一時的な疲れではなく、蓄積型の疲労です。これは、日々の小さなストレスや負荷が少しずつ体に溜まり、本人が自覚しないうちに深刻なレベルに達してしまうタイプの疲労です。
わかりやすく言えば、一時的な疲れは「急な大雨」のようなもの。ザーッと降って、止めばすぐに道は乾きます。一方、蓄積疲労は「じわじわ続く霧雨」。傘をさすほどではないけれど、知らないうちに全身がびしょ濡れになっている。そして、本人は「雨なんか降ってないよ」と思い込んでいるのです。
心理の専門家によると、この蓄積疲労の進行を大きく3つの段階に分けています。
第1段階は、いわゆる「普通の疲れ」。仕事で疲れても、週末にしっかり休めば月曜日にはリセットできる状態です。スマートフォンの充電に例えれば、バッテリーが50%を切っても、一晩充電すれば100%に戻る状態。
第2段階は、要注意ゾーンです。一見すると普通に動けているのですが、実はバッテリーが劣化していて、充電しても50%までしか回復しない状態。普段の仕事はこなせるけれど、ちょっとしたイレギュラーが入ると一気に10%まで落ちてしまう。そして、いつもの刺激が2倍つらく感じられるようになります。同じ上司の同じ指摘が、以前より2倍グサッとくる。8時間寝ても4時間分くらいしか回復しない。
第3段階は、いわゆる「うつ状態」に近い段階。充電しても10%にしかならない。すべてが3倍つらく、3倍長く感じられます。普段は気にならない些細な一言に激しく反応したり、理由もなく涙が出たり、まるで「別人」のようになってしまう。
怖いのは、第2段階から第3段階への移行が突然やってくること。「昨日までは何とかなっていたのに、今日突然動けなくなった」という経験をした人は少なくありません。それは突然壊れたのではなく、ずっと前から少しずつバッテリーが劣化していたのです。
「大きなストレス」より「小さなストレスの連続」が怖い
面白いことに、大きなストレスイベント——例えば失恋や転職、引っ越しなど——には、人はわりと対処できます。「これは大変なことだ」と自覚できるから、周囲にも助けを求めやすいし、自分でも「休まなきゃ」と思えます。
一方、毎日のちょっとした残業、上司のちょっとした嫌味、後輩のちょっとしたミスのフォロー、通勤電車のちょっとした混雑——こうした「我慢の範囲内」のストレスは、一つひとつは大したことがないように思えます。だからこそ、「休まなければ」とは思いにくい。
これが蓄積疲労の最大の罠です。大した理由がないのに疲れている。だから「自分が弱いのでは」「甘えているのでは」と自分を責めてしまうのです。
第2章:「まだ大丈夫」と言い続けた人たちの話
Bさんの場合:後輩指導という「見えない荷物」
Bさん(20代後半・メーカーの技術職)は、仕事そのものは好きだと言います。ただ、数年前から後輩の育成担当になり、自分の業務に加えて新人のフォローが増えました。
「自分のペースで仕事をしているときは平気なんです。でも、後輩が困っていないか常に気にしていると、それだけで疲れるんですよね。帰宅後はぐったりで、趣味の時間もなくなりました」
Bさんの疲労の原因は、後輩指導そのものだけではありませんでした。誰かに気を配り続けること自体が、想像以上にエネルギーを消耗するのです。自分のリズムで黙々と作業するのと、常に誰かのペースに合わせて気を配るのとでは、同じ時間働いても疲労度がまったく違います。
心臓が「ドキッ」とする小さな緊張の繰り返し。「あの子、大丈夫かな」「ミスしてないかな」という無意識の監視モード。これらは一つひとつは微細なエネルギー消費ですが、丸一日続けば膨大な量になります。
Bさんはこの仕組みに気づかず、「自分の仕事量はそこまで増えていないのに、なぜこんなに疲れるんだろう」と不思議に思っていたそうです。
Cさんの場合:「楽しいこと」で疲れを癒そうとした結果
Cさん(30代前半・サービス業)は、平日の疲れを週末のアクティビティで解消しようとしていました。友人との食事、趣味のスポーツ、旅行。「楽しいことをすればストレス発散になる」と信じていたのです。
しかし、あるとき気づきました。週末に予定を詰め込んだ翌週の月曜日が、何の予定もなかった週末の翌月曜日より、ずっとつらいのです。
「楽しいはずなのに、なぜか回復しない。むしろ余計に疲れている気がする。でも、何もしない週末は罪悪感がすごくて……」
ここに、多くの人が陥る罠があります。ストレスへの対処法には、大きく分けて「離れる」「休む」「工夫する」の3つがあるのですが、多くの人は3番目の「工夫する」ばかりに頼ってしまいがちです。ヨガ、瞑想、趣味、旅行、友人との交流——これらはすべて「工夫する」に分類されます。
しかし、本当に疲れが溜まっているときに最初にやるべきは、ストレスの原因から「離れる」こと、そして「休む」ことです。この順番が非常に大切なのに、なぜか多くの人は逆をやってしまう。楽しいことで消耗した分のエネルギーは、睡眠や食事で補充できる量を上回ってしまうことがあるのです。
Aさんのその後:「充電が足りていなかっただけだった」
冒頭のAさんは、あるとき知人の紹介で心理の専門家と話す機会がありました。そこで言われたのが、「あなたは怠けているのではなく、充電が追いついていないだけです」という一言でした。
「その言葉で、なんだかすごく楽になったんです。自分を責めるのをやめて、まず"充電"に専念しようと思えた。具体的には、まず有給を使って数日間、本当に何もしない時間を作りました。最初は不安でしたが、3日目くらいから頭の霧が晴れるような感覚がありました」
Aさんはこの経験を通じて、自分が第2段階の終わりにいたことを自覚しました。あと少し無理を続けていたら、第3段階——つまり、回復に数ヶ月を要する状態に陥っていた可能性があったのです。
第3章:燃え尽きの手前で止まるための3つの実践
実践1:自分の「充電レベル」を定期的にチェックする
スマートフォンの電池残量は画面に表示されますが、私たちの心身のエネルギー残量は表示されません。だからこそ、意識的にチェックする習慣が必要です。
具体的には、週に一度でいいので「今週の自分は、スマホでいうと何%くらいだろう」と考えてみてください。50%以上あれば第1段階、30~50%なら第2段階の入り口、30%を切っていたら要注意です。
チェックのヒントとしては、「いつもの刺激(上司の指摘、満員電車、後輩のミスなど)に対する反応が大きくなっていないか」「睡眠の質が落ちていないか」「些細なことにイライラしていないか」といったサインに注目することです。
ただし注意してほしいのは、第2段階に入ると自分の状態を正確に把握する能力自体が低下するということ。だから、可能であれば信頼できる人に「最近、私どう見える?」と聞いてみるのも有効です。
実践2:「離れる→休む→工夫する」の順番を守る
疲れを感じたとき、いきなりヨガや瞑想に飛びつくのではなく、まず「離れる」ことを最優先にしてください。
「離れる」は、ストレスの原因から物理的・時間的・心理的に距離を取ること。必ずしも仕事を辞めたり、人間関係を断つという意味ではありません。数時間でも、数分でも、ストレス源から距離を取ることに意味があります。
次に「休む」。これは文字通り何もしないことです。楽しいことをするのではなく、ただ休む。充電と同時に放電してしまっては、充電効率が悪くなるからです。
そして最後に「工夫する」。十分に充電できてから、ヨガや趣味や人との交流を楽しむ。この順番を守るだけで、回復の効率は格段に上がります。
実践3:「疲れているのは人間として当然」と認める
私たちの祖先は、生存のために常にエネルギーを使い切る生活をしていました。食料を求めて歩き回り、危険から身を守り、仲間と協力して生き延びる。現代社会でも、その「全力で頑張る」という本能は健在です。
つまり、疲れるまで頑張ってしまうのは、あなたが弱いからではなく、人間としてごく自然な反応なのです。むしろ、頑張れる力があるからこそ、充電切れのサインに気づきにくい。
自分を責めるエネルギーがあるなら、そのエネルギーを「休む」ことに振り向けてください。それが、もっとも効率的な自己投資です。
結論:「もう少し頑張れる」と思ったときが、いちばん危ない
伝えたかったのは、シンプルなことです。疲労には段階があり、自覚しにくい「蓄積疲労」こそが本当に怖い。そして、疲れの対処には順番がある。
「もう少し頑張れる」「まだ大丈夫」——そう思えること自体が、第2段階のサインかもしれません。スマートフォンだって、バッテリーが劣化すると、表示は100%なのに実際は50%しか充電されていないことがあるのです。
あなたの「100%」は、本当に100%ですか?
一度立ち止まって、自分のバッテリー残量を確認してみてください。未来の自分が「あのとき休んでくれてありがとう」と感謝してくれるはずです。
🌿 一人で抱え込まないでください
「退職すべきか、休み続けていいのか」――そのモヤモヤ、キャリアとメンタル両面からいっしょに考えます。
産業カウンセラー・キャリアコンサルタントが、あなたのペースで丁寧にお聴きします。
🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
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