「ありのままで愛される」って信じられなかった私の変化

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「愛されているのに、信じられない」


相談室のドアを開けた彼女は、小さく会釈をして席に座った。手には携帯電話を握りしめている。

ダイキ「こんにちは。今日はどんなことでお越しになりましたか?」

クライエント「あの...恋人のことなんですけど...付き合って半年なんです。すごく優しい人で、ちゃんと愛してくれてるって、頭ではわかってるんですけど...」

ダイキ「頭ではわかってる、けれど...?」

クライエント「どうしても不安になっちゃって。返信が遅いと『もう私のこと好きじゃないのかな』って思っちゃうし、会ってる時も『今、楽しいかな?』って、相手の顔色をずっと伺ってるんです」

彼女の声は少し震えていた。

クライエント「この前、『ちょっと重いよ』って言われて...それで、やっぱり私、おかしいんだって」

「確認」が止まらないループ


ダイキ「重いって言われたとき、どんな状況だったんですか?」

クライエント「...メッセージを、何度も送っちゃったんです」

彼女は携帯の画面を見せてくれた。短い時間に送られた複数のメッセージ。

「元気?」「忙しい?」「何してる?」「もしかして怒ってる...?」

クライエント「既読になってるのに返事がないと、どんどん不安になって...『嫌われたかな』『何か悪いこと言ったかな』って」

ダイキ「既読がついてるのに返事がないと、不安が大きくなっていくんですね」

クライエント「はい...頭では『忙しいだけだよね』ってわかってるんです。でも、心がざわざわして...」

彼女は目に涙を浮かべながら続けた。

クライエント「友達には『そんなに不安にならなくても』って言われるんですけど、コントロールできないんです。確認しないと、落ち着かなくて」

繰り返される恋愛のパターン


ダイキ「これまでの恋愛でも、同じようなことがありましたか?」

クライエント「...ありました。大学の時の彼氏にも、『束縛が強い』って言われて...結局、別れることになったんです。その時も、返信が遅いと不安で、『他に好きな人ができたんじゃないか』って疑っちゃって」

ダイキ「疑ってしまった、というのは...?」

クライエント「彼の行動を監視するみたいになっちゃったんです。誰と会ってるのか、何時に帰ってくるのか、SNSも毎日チェックして...。『そこまでするの?』って、彼に呆れられて」

彼女は自分を責めるように、小さく笑った。

クライエント「わかってるんです。異常だって。でも、不安が大きくなると、もう止められなくて」

ダイキ「不安が大きくなると、確認せずにはいられなくなる。そんな感じでしょうか」

クライエント「そうなんです...確認しないと、もっと不安になるから」

過去を辿る──「愛されていた記憶」の欠如


ダイキ「少し、時間を遡ってみてもいいですか。子どもの頃、家族との関係はどうでしたか?」

クライエント「...普通だったと思います。特に問題はなかったです」

彼女の声は歯切れが悪かった。

ダイキ「普通、というのは...?」

クライエント「...両親は共働きで、忙しかったです。いつも帰りが遅くて」

少し沈黙が流れた。

クライエント「小学校の時、学校で何かあっても、あんまり話を聞いてもらえなかった。『お母さん忙しいから後にして』とか、『それくらい自分で考えなさい』とか」

ダイキ「話を聞いてもらえなかった...」

クライエント「でも、別にネグレクトとかじゃないですよ! ご飯もちゃんと作ってくれたし、習い事にも通わせてくれたし...」

彼女は慌てて付け加えた。

ダイキ「物理的には満たされていたけれど、感情的な部分では...?」

その質問に、彼女は言葉に詰まった。

クライエント「...寂しかった、かもしれません」

彼女の目から、ゆっくりと涙が溢れた。

クライエント「いつも『いい子』にしてないと、見てもらえない気がして。テストでいい点取ったら褒めてもらえるけど、そうじゃないと...『もっと頑張りなさい』って」

ダイキ「頑張らないと、愛してもらえないと感じていたんですね」

クライエント「...はい」

愛着の傷──「条件付きの愛」が残したもの


ダイキ「お母さんに甘えたいと思ったことは?」

クライエント「...ありました。でも、『お母さん疲れてるから』って、我慢してました」

彼女は小さく笑った。

クライエント「中学の時、友達と喧嘩して落ち込んでた日があって...帰ったらお母さんに話を聞いてほしかったんですけど、『あなたも悪かったんじゃない?』って言われて。それから、何かあっても相談するのをやめました。どうせ理解してもらえないから、って」

その言葉には、深い諦めが滲んでいた。

クライエント「大人になった今も、人に頼るのが苦手で...。『迷惑かけちゃダメだ』『嫌われたくない』って、いつも思ってます」

ダイキ「嫌われたくないから、本当の自分を出せない」

クライエント「...はい」

気づきの瞬間──「愛される自信」の欠如


ダイキ「今の恋人との関係で、一番不安になるのはどんな時ですか?」

クライエント「...彼が、私以外の人と楽しそうにしてる時、かな。この前も、彼の友達と飲みに行くって聞いて...すごく不安になって。『私より楽しいんじゃないか』『もう私といても楽しくないんじゃないか』って」

ダイキ「彼が他の人と楽しそうにしていると、自分の価値が下がるように感じる?」

クライエント「...そうかもしれません」

彼女ははっとした表情になった。

クライエント「私、『選ばれ続けないといけない』って思ってるんです。彼にとって一番じゃないと、捨てられちゃうんじゃないかって」

ダイキ「選ばれ続けるために、頑張り続けないといけない」

クライエント「...そうなんです。でも、そんなの...疲れるんです。いつも不安で、いつも確認して、いつも『嫌われてないかな』って...」

涙が止まらなくなった。

クライエント「私、ずっと...ずっと頑張ってきたのに。なんで、こんなに不安なんだろう」

ダイキは静かに彼女の涙を見守った。

ダイキ「あなたは、『ありのままの自分』で愛された経験が、少なかったのかもしれませんね」

クライエント「...ありのまま...?」

ダイキ「何かを達成したから、いい子だったから愛されるのではなく、ただそこにいるだけで愛される。そんな経験です」

クライエント「...それって、あるんですか?」

彼女は驚いたように顔を上げた。

「不安型愛着」


ダイキ「心理学では、幼少期の親との関係が、大人になってからの恋愛に影響を与えることがわかっています。小さい頃、親に十分に安心感を与えてもらえなかった子どもは、『自分は愛される価値があるのか』という不安を、ずっと抱え続けることがあります」

クライエント「...」

ダイキ「特に、親が忙しかったり、感情的に応答してくれなかったりすると、子どもは『どうすれば愛してもらえるか』を常に考えるようになる。それが大人になっても続くんです」

クライエント「...私、まさにそれです」

彼女は深く頷いた。

クライエント「いつも『どうすれば好かれるか』『どうすれば嫌われないか』ばかり考えてる...」

ダイキ「こうした恋愛パターンを、心理学では『不安型の愛着スタイル』と呼びます。不安型の人は、相手に愛されたいという気持ちが強い反面、『本当に愛されているのか』という疑いも同時に抱えています」

クライエント「...それ、完全に私です」

彼女は自分の手を見つめた。

クライエント「でも、どうしてこんな風になっちゃったんでしょう」

ダイキ「それは、あなたが悪いわけではありません。子どもの頃、親から『無条件に愛される』という経験が少なかったことで、『自分は愛される価値がある』という感覚が育ちにくかったんです」

クライエント「...無条件に、愛される」

クライエント「そんなこと、考えたこともなかった...」

「確認」の意味


ダイキ「あなたがメッセージを何度も確認してしまうのは、『愛されている』という安心感を得るため、ですよね」

クライエント「...はい」

ダイキ「でも、その確認は、一時的な安心しか与えてくれない。また不安になって、また確認する...そのループに陥っていませんか?」

クライエント「...まさにそうです。返事が来ると、その瞬間は安心するんです。でも、すぐにまた不安になって...」

ダイキ「不安の根っこは、『愛されているかどうか』ではなく、『自分には愛される価値があるのか』という疑いにあるんです」

クライエント「...」

ダイキ「だから、いくら相手が『愛してる』と言っても、その疑いが解消されない限り、不安は消えないんですね」

クライエント「...そうか」

彼女はゆっくりと頷いた。

クライエント「私、ずっと相手を疑ってたんじゃなくて...自分を、疑ってたんですね」

その言葉を口にした瞬間、彼女の表情が変わった。

クライエント「自分が...愛される価値があるって、信じられなかったから」

ダイキ「そうです。あなたが確認していたのは、相手の愛ではなく、自分の価値だったんです」

クライエント「...」

彼女は静かに涙を流していた。

「安心感」は内側から


しばらくの沈黙の後、彼女は顔を上げた。

クライエント「...じゃあ、どうすればいいんでしょう」

ダイキ「まず、『自分には愛される価値がある』という感覚を、自分の中に育てていくことです。今は、その感覚を相手に求めています。相手が愛してくれれば安心できる、と。でも、それでは相手に依存することになってしまう」

クライエント「...依存」

ダイキ「本当の安心感は、自分の内側から生まれるものなんです。相手がどう思っているかに関わらず、『私は私のままでいい』と思えること」

クライエント「...でも、それって、どうやって...?」

ダイキ「少しずつです。まずは、自分の不安に気づくこと。『あ、また不安になってる』と。そして、その不安を否定せずに、ただ受け止めること。『不安になってもいいんだ』って」

クライエント「不安になってもいい...」

彼女は少し驚いた表情をした。

ダイキ「不安を感じること自体は、悪いことじゃありません。それを無理に消そうとすると、かえって大きくなってしまう。不安を感じたら、『今、私は不安なんだな』と認める。そして、その不安に対して、自分で自分に『大丈夫だよ』と声をかけてあげるんです」

クライエント「自分で...」

ダイキ「相手に『大丈夫だよ』って言ってもらうのを待つのではなく、まず自分が自分に言ってあげる。それが、自分の中に安心感を育てる第一歩です」

クライエント「...やってみます」

小さな一歩──「確認」から「信頼」へ


ダイキ「もう一つ大切なことがあります。相手を信頼する、ということです」

クライエント「...信頼」

ダイキ「今、あなたは相手の行動を確認することで安心しようとしています。でも、それは裏を返せば、『相手を信頼していない』ということにもなるんです」

クライエント「...」

ダイキ「返信が遅くても、『きっと忙しいんだろう』と思える。それが信頼です」

クライエント「でも、それって...怖いです。確認しないで待つなんて、もし本当に嫌われてたらって思うと...」

ダイキ「その怖さ、よくわかります。でも、その怖さを乗り越えた先に、本当の安心感があるんです。相手の反応に振り回されない、自分の中にある安心感」

クライエント「...」

ダイキ「最初は小さなことからでいいんです。返信を1時間待ってみる。その1時間、不安を感じながらも、『大丈夫』と自分に言い聞かせてみる。それができたら、次は2時間、3時間と伸ばしていく」

クライエント「...少しずつ、ですね」

ダイキ「そうです。焦らなくていいんですよ」

未来への一歩──「ありのままの自分」を信じる


カウンセリングの終わり近く、彼女は少し明るい表情になっていた。

クライエント「...なんか、少し楽になった気がします。今まで、『私がおかしいんだ』『私がダメなんだ』って、ずっと自分を責めてたんですけど...」

ダイキ「責める必要はありませんよ」

クライエント「...はい。これからは、少しずつ、自分を信じてみようと思います。『ありのままの私でいい』って、思えるようになりたいです」

彼女は笑顔を見せた。

クライエント「あと、彼にも...ちゃんと話してみようと思います。『私、こういう風に不安になっちゃうことがあるんだ』って」

ダイキ「素晴らしいですね。自分の気持ちを正直に伝えること、とても大切です」

クライエント「...うまく伝えられるかわからないけど、やってみます」

ダイキ「応援していますよ」

クライエント「ありがとうございます」

彼女は深く頭を下げて、相談室を後にした。

まとめ──「愛されているか不安」の正体


このクライエントが抱えていたのは、幼少期に育まれなかった「自己肯定感」と「安心感」の欠如でした。

親から「無条件に愛される」という経験が少なかったことで、彼女は「ありのままの自分では愛されない」という信念を持つようになりました。その結果、大人になってからも、常に相手の反応を確認し、「愛されているか」を問い続けるようになったのです。

心理学では、こうした恋愛パターンを「不安型愛着スタイル」と呼びます。幼少期に親との間で築けなかった「安全な愛着関係」が、大人になってからの恋愛に影響を与えるのです。

しかし、この不安は決して「治せない」ものではありません。自分の不安に気づき、それを受け止め、少しずつ「自分には愛される価値がある」という感覚を育てていくことで、不安から解放されることができます。

そして何より大切なのは、「相手に求める」のではなく、「自分の中に安心感を育てる」こと。それが、本当の意味で「愛される」ための第一歩なのです。

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🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
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