言葉にできない違和感
「なんか......自分がよくわからないんです」
クライエントはそう言って、俯いた。27歳。デザイン関連の仕事をしているという彼女は、落ち着いた服装に丁寧に整えられた髪。一見すると、何の悩みもなさそうに見える。
でも、その視線は不安定に揺れていた。
ダイキ「よくわからない、というのは?」
クライエント「......自分に自信が持てないんです。っていうのも変なんですけど。周りの人の反応が、日によって全然違うんですよ」
彼女は少し困ったように笑った。
クライエント「ある日は『今日可愛いね』って言われたり、誘われたりするんです。でも、次の日は全然。同じ服装でも、同じメイクでも。何が違うのか、自分でもわからなくて......」
ダイキ「それで、不安になってしまう」
クライエント「はい。『昨日は良かったのに、今日はダメなんだ』って。自分の価値が、日替わりメニューみたいに変わってる気がして」
その言葉には、深い諦めが滲んでいた。
完璧を目指す日々
ダイキ「周りの反応を、すごく気にしてしまうんですね」
クライエント「......はい。子どもの頃から、そうかもしれません」
彼女は少し間を置いてから、ゆっくりと話し始めた。
クライエント「小学生の時、クラスで一番可愛い子がいて。その子はいつも明るくて、みんなから好かれてて。私は......地味で目立たない子でした」
ダイキ「そうだったんですね」
クライエント「中学、高校と進むにつれて、『可愛くなりたい』って必死でした。雑誌を読んで、メイクを研究して、ダイエットもして。でも......なんか、いつも『これで合ってるのかな』って不安で」
彼女の声は、少し震えていた。
クライエント「大学に入って、初めて『可愛いね』って言われた時は、すごく嬉しかったんです。『やっと認められた』って。でも......それって、ずっと続くわけじゃなくて」
ダイキ「続かない?」
クライエント「はい。ある日突然、誰も声をかけてこなくなったり。『昨日と何が違うんだろう』って、鏡を見ても分からなくて。それで、どんどん不安になっていって......」
自分を測る基準
ダイキ「周りの反応で、自分の価値を測ってしまうんですね」
クライエント「......そうです。情けないですよね」
ダイキ「情けないとは思いませんよ。でも、それって、とても不安定じゃないですか?」
クライエント「......」
彼女は黙って頷いた。
ダイキ「誰かが『可愛い』と言ってくれたら嬉しい。でも、言われなかったら不安になる。その繰り返しですか?」
クライエント「......はい。毎日、そんな感じです」
ダイキ「それは、しんどいですね」
クライエント「しんどいです......。でも、他にどうしたらいいのか、わからないんです」
「調子の良い日」のパターン
ダイキ「少し具体的に聞いてもいいですか?『今日可愛いね』って言われる日と、そうじゃない日。何か違いに気づいたことはありますか?」
クライエント「うーん......」
彼女は考え込んだ。
クライエント「言われてみれば......『調子良い日』って、なんか自分でも違いを感じるんです」
ダイキ「どんな違いですか?」
クライエント「肌の調子が良かったり、体が軽かったり。あと、なんとなく気分が前向きになってる日とか」
ダイキ「なるほど。自分の中でも、何かしらの変化を感じているんですね」
クライエント「はい。でも......それって、気のせいだと思ってたんです」
ダイキ「気のせい?」
クライエント「だって、メイクも服も同じなのに。『気分の問題』って言われたら、それまでじゃないですか」
気分じゃない、体の変化
ダイキ「それが『気分の問題』じゃないとしたら?」
クライエント「......え?」
彼女は驚いたように顔を上げた。
ダイキ「実は、女性の体には周期的な変化があるんです。それが、見た目にも影響することがあるって知っていますか?」
クライエント「周期的な......生理のことですか?」
ダイキ「そうです。生理周期に伴って、ホルモンのバランスが変わる。そのホルモンが、実は顔の印象にも影響を与えているという研究があるんです」
クライエント「ホルモンが......顔に?」
彼女は信じられないという表情で、こちらを見つめた。
ダイキ「例えば、排卵期と呼ばれる時期。その時期は、エストロゲンというホルモンのレベルが高まります。そして、研究によると、エストロゲンのレベルが高い時期の女性の顔は、実際に魅力的に見えるという結果が出ているんです」
クライエント「......本当ですか?」
ダイキ「本当です。写真を使った実験で、排卵期の女性の顔と、そうでない時期の顔を比較すると、明らかに排卵期の方が魅力的だと評価されるんです」
クライエントは、しばらく黙っていた。そして、小さな声で言った。
クライエント「じゃあ......私が感じていた違いって......」
ダイキ「気のせいじゃなかった。あなたの体が、自然に変化していたんです」
受け入れられなかった自分
クライエント「......そんな」
彼女の目に、涙が浮かんだ。
クライエント「私、ずっと......自分がダメなんだと思ってました。『昨日は良かったのに、今日はダメ』って。私の努力が足りないから、魅力がないから、だから反応が変わるんだって......」
ダイキ「そうじゃなかったんですね」
クライエント「そうじゃなかった......」
彼女は顔を覆って、静かに泣いた。
しばらくして、彼女は顔を上げた。
クライエント「でも......それって、結局『ホルモン次第』ってことですよね。コントロールできないじゃないですか」
ダイキ「そうですね。コントロールはできない」
クライエント「じゃあ、どうすれば......」
変わることを受け入れる
ダイキ「コントロールできないことを、コントロールしようとするのは、とても苦しいことですよね」
クライエント「......はい」
ダイキ「でも、逆に考えてみると。『変わること』自体は、悪いことじゃないんじゃないですか?」
クライエント「変わることが......悪くない?」
ダイキ「そうです。むしろ、自然なことです。女性の体は、毎月リズムを刻んでいる。それは、あなたが生きている証でもあります」
クライエント「......」
ダイキ「『今日可愛い』と言われる日も、そうじゃない日も、どちらもあなたです。ホルモンによって魅力が変わるのは、あなたの体が健康に機能している証拠なんです」
クライエント「そう......考えたことなかったです」
ダイキ「周りの反応が変わるのは、あなたの価値が変わっているんじゃなくて、あなたの体が自然なリズムを刻んでいるから。それって、責める必要のあることですか?」
クライエント「......ないです」
彼女は、少し笑った。涙の跡が残った顔で。
クライエント「なんか......楽になりました。『私がダメなんじゃない』って、初めて思えた気がします」
自分の体と向き合う
ダイキ「これから、どうしていきたいですか?」
クライエント「うーん......まずは、自分の体のリズムを、ちゃんと知りたいです」
ダイキ「良いですね。どんなふうに知っていきますか?」
クライエント「生理周期を記録してみようと思います。『調子良い日』がいつなのか、確認してみたくて」
ダイキ「なるほど。それで何か見えてきそうですか?」
クライエント「はい。もしかしたら、自分の体のパターンが分かるかもしれない。そしたら、『今はこういう時期なんだ』って、自分を責めなくて済むかもしれません」
ダイキ「素晴らしいですね」
クライエント「あと......周りの反応に一喜一憂するのを、少しずつ減らしていきたいです」
ダイキ「どうやって?」
クライエント「今までは『誰かに認められること』が全てだったんです。でも、そうじゃなくて。自分の体のリズムを理解して、『今はこういう時期だから、こうなんだ』って、自分で自分を理解してあげたいです」
新しい視点
ダイキ「良い変化ですね」
クライエント「はい。なんか......今日来て良かったです」
彼女は、今度ははっきりと笑った。
クライエント「『私がダメなんじゃない』って思えるだけで、こんなに楽になるんですね」
ダイキ「そうですね。自分を責めるのは、とてもエネルギーを使いますから」
クライエント「本当に......。これまで、どれだけエネルギーを使ってたんだろう」
ダイキ「これからは、そのエネルギーを別のことに使えそうですね」
クライエント「はい。自分の体と仲良くすることに、使っていきたいです」
最後に
カウンセリングの終わりに、クライエントはこう言った。
クライエント「ダイキさん、一つ聞いていいですか?」
ダイキ「どうぞ」
クライエント「ホルモンで魅力が変わるって......それって、みんなそうなんですか?」
ダイキ「そうです。女性の体は、みんな同じように変化しています」
クライエント「じゃあ......私だけじゃないんですね」
ダイキ「全くその通りです。あなただけじゃない」
彼女は、深く息を吐いた。
クライエント「なんか......それを知れただけで、すごく救われました。ありがとうございました」
エピローグ
その後、クライエントは生理周期アプリを使って自分の体のリズムを記録し始めた。そして、確かに「調子の良い日」には一定のパターンがあることに気づいたという。
「自分の体って、こんなに規則的に動いてたんだ」
彼女は驚きと共に、自分の体への信頼を取り戻していった。
周りの反応に振り回されることは、完全にはなくならない。でも、「今はこういう時期だから」と自分を理解できるようになったことで、以前のように自分を責めることは減っていった。
「私、変わるんです。でも、それは悪いことじゃない」
彼女は今、そう言える。
自分の体のリズムを知ること。それは、自分を受け入れる第一歩だった。
📝 自分の恋愛パターンを「見える化」してみませんか?
心理学の2つの理論をベースに、あなたのパーソナリティタイプと恋愛スタイルを分析するサービスをココナラで提供しています。約20分の診断に答えるだけで、20ページ以上の詳細レポートをお届けします。
🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
「記事を読んで、もう少し深く話してみたい」と感じたら、ぜひココナラのサービスをのぞいてみてください。