不動産会社を開業した方や、別事業から不動産仲介へ参入する会社から、
「地方で賃貸仲介を始めたいのですが、何からやればいいですか?」
と聞かれることがあります。
賃貸仲介というと、
物件を掲載する。
問い合わせを受ける。
内見する。
契約する。
という流れを想像する方が多いと思います。
ただ、地方で新しく賃貸仲介を始める場合、
特に立ち上げ直後は、
「どうやってお客様を作るか」
「どうやって紹介できる物件を増やすか」
この2つを先に考える必要があります。
私が地方で賃貸仲介の立ち上げを支援するときも、最初から広告費をかけたり、問い合わせ件数や成約率を細かく設定したりするのではなく、
まず、その会社ならどこから案件を作れるのか
を一緒に探していきます。
地方で賃貸仲介を始めるなら、まず「自分が持っているもの」を確認する
最初に確認したいのは、「どんな集客方法が流行っているか」
ではありません。
その会社がすでに何を持っているかです。
例えば、
内装会社であれば、過去に施工した店舗や会社があります。
リフォーム会社であれば、既存の顧客がいます。
住宅会社なら、過去に家を建てた方や取引先があります。
地域で長く事業をしている会社なら、
こうした既存顧客が多いのであれば、
いきなり新規顧客を広告で集めるより、まず既存顧客へ「不動産仲介を始めました」と伝えるところから始めた方がよい場合があります。
反対に、
既存顧客がほとんどいない。
地域に流通している店舗・事務所物件も少ない。
という場合は、
空いている物件を探して、貸主へ直接アプローチする
方法から始めることもあります。
私は大きく、「お客様を先に作る方法」
と、「募集物件を先に作る方法」
のどちらが向いているかを最初に見ています。
既存顧客がいるなら、まず会いに行く
すでに取引先がある会社なら、最初にやってほしいのは既存顧客への案内です。
もちろん、
「不動産仲介事業を始めました」
とメールを送ることも大切です。
ただ、私はメールだけでは終わらせない方がよいと考えています。
一度メールを送っても、
数週間後には忘れられていることもあります。
そこで、
「この近くで物件を探していて寄りました」
「近くまで来たので、不動産仲介を始めたご挨拶に伺いました」
という形で、実際に会いに行きます。
立ち上げ時の一つの目安として、週10〜15件程度の既存顧客訪問
を設定しています。
ここで重要なのは、「10件回ったら何件案件を取る」
と最初から決めすぎないことです。
まず、
本当に10件、15件と会いに行けているかを見ます。
実際に立ち上げ支援をしていると、
数件連絡しただけで、「既存顧客から相談がありません」
と判断してしまうことがあります。
しかし、そもそもの接触数が少なければ、
その営業方法が合っているかどうかも判断できません。
最初から業種を絞りすぎなくてもいい
既存顧客へ営業すると、
「どの業種から回った方がいいですか?」
と聞かれることがあります。
私は、最初の段階ではあまり絞りすぎません。
不動産の相談は、想像していなかったところから出てくるからです。
例えば、
普段は飲食店を経営しているお客様から、「2号店を考えている」
という相談が出るかもしれません。
法人のお客様から、「事務所を移転したい」
と言われることもあります。
住宅の住み替え相談が出ることもあります。
あるいは、「知り合いが店舗を探している」
と紹介されることもあります。
立ち上げ時は業種を限定せず、
過去に取引した顧客へ広く会いに行く考え方を取っています。
最初から正解を決めるというより、
実際に動きながら「どこから相談が出るか」を確認する
方が現実的です。
既存顧客が少ないなら、空き物件を探す
一方で、「紹介してもらえそうな顧客がいない」
という会社もあります。
その場合は、貸主側から物件を増やしていく方法があります。
例えば、
駅前。
商店街。
幹線道路沿い。
店舗が集まっている地域。
などを車や徒歩で回り、空いている店舗や事務所を探します。
そして必要に応じて所有者を確認し、貸主へ連絡します。
こちらも最初の行動量として、週10件程度の貸主への新規接触
を一つの目安にしています。
もちろん、「10件電話すれば必ず媒介が取れる」という意味ではありません。
地域によって違いますし、話し方や物件の状態によっても結果は変わります。
ただ、地方で長期間空いている店舗などを探していると、
「どう募集すればいいか分からない」
「昔頼んでいた不動産会社がもう動いていない」
といった貸主に出会うことがあります。
過去の経験からも、5件程度貸主へ接触して1件程度募集を任せてもらえるケースもありましたが、これはあくまで一例です。
大切なのは、この数字をそのまま真似することより、
一定量の営業を継続できているかです。
最初の3か月は、成約率より「行動量」を見る
賃貸仲介を始めると、
問い合わせ数
案内数
申込み数
成約数
売上
いろいろな数字が気になります。
もちろん、最初から売上が出ればそれが一番です。
ただ、立ち上げ直後は母数が少ないので、
「問い合わせから内見になる確率」
「内見から申込みになる確率」
などを細かく分析しても、まだ判断できないことがあります。
そこで私が最初の3か月で重視しているのは、
成果より、その成果につながる行動をどれだけ行ったかです。
例えば、
既存顧客型なら、
「今週何社訪問したか」を追う。
貸主開拓型なら、
「今週何人の貸主へ新しく接触したか」を追う。
そのうえで、
具体的な相談が出た。
募集を任せてもらえた。
という成果が出たら、
なぜその案件が取れたのかを振り返ります。
最初に決めた営業方法を3か月間ひたすら守ることが目的ではありません。
成果が出たなら、そちらへ寄せていけばいいと思います。
3か月後に見るのは、大きく3つ
ある程度動いたら、
「この会社はどういう営業方法が向いているのか」を見直します。
私が見るのは主に、
既存顧客から具体的な相談が出たか。
貸主開拓から募集物件を取得できたか。
そして、どちらなら継続して営業できそうか、です。
例えば、
新規営業が得意な人なら、貸主へ電話したり訪問したりすることをそれほど苦にしないかもしれません。
逆に、飛び込み営業は苦手でも、昔からのお客様なら会いに行けるという方もいます。
この場合、「貸主開拓の方が市場的には良い」
と言われても、継続できなければ意味がありません。
賃貸仲介は、一度営業して終わる事業ではありません。
だから私は、
理論的に一番良い方法より、自分たちが続けられて、そのうえで成果も出る方法を探した方がいいと思っています。
「20件回ったけど案件が取れない」で諦めるのは少し早い
立ち上げ支援をしていると、
「20件くらい営業したけど案件になりませんでした」
「この地域では賃貸仲介は難しいでしょうか?」
と言われることがあります。
ただ、10件、20件営業しただけで、その地域の可能性まで判断するのは難しいと思っています。
初めて貸主へ営業するのであれば、
最初から上手に話せるわけではありません。
既存顧客へ訪問するときも、
「仲介事業を始めました」
とどう伝えればいいのか、最初は迷うと思います。
何件か動いていると、
「この説明だと反応が良い」
「貸主からこの質問をよくされる」
「この業種のお客様から店舗相談が出やすい」
といったことが少しずつ分かります。
ここから営業方法を修正していきます。
つまり、
営業を始める前に完璧な仕組みを作るのではなく、営業しながら仕組みを作っていくという感覚です。
地方だからこそ「物件がない」で終わらせない
地方で賃貸仲介を始めると、
「紹介できる物件が少ない」
という問題も出てきます。
これは特に店舗・事務所仲介で起こりやすいです。
そこで、「ATBBやレインズに物件がないから営業できない」
で終わらせてしまうと、なかなか事業が広がりません。
流通している物件が少ないなら、
自分たちで貸主を探して物件を作る
という発想も必要になります。
逆に、
物件はそれなりに流通しているけれど問い合わせがないのであれば、
まず顧客側を作った方がいい。
同じ「地方で仲介を始める」でも、
地域や会社によって最初の動き方は変わります。
ここが、全国一律の開業マニュアルだけでは決めにくいところです。
地方で賃貸仲介を始めるなら、最初にやることは意外とシンプル
整理すると、地方で賃貸仲介を始めるときに、最初から大きな広告費をかけたり、複雑なKPI管理をしたりする必要はないと考えています。
まず、
自分たちに既存顧客がいるのか。
地域に紹介できる物件があるのか。
新規営業を続けられる人がいるのか。
を確認する。
既存顧客がいるなら会いに行く。
物件が少ないなら貸主を探す。
そして最初の3か月は、
一定量動きながら、どこから案件が出るかを見る。
成果が出た方法があれば、そこへ営業の比重を寄せる。
この流れです。
既存顧客訪問なら週10〜15件程度、
貸主への新規接触なら週10件程度を一つの目安として紹介していますが、
これも全国共通の正解ではありません。
地域や人員体制に合わせて調整する数字です。
「何から始めればいいか分からない」段階でも相談できます
私が行っている仲介コンサルでは、
すでに何十件も仲介している会社だけを対象にしているわけではありません。
例えば、
「宅建業を始めたけど、まだ案件がない」
「住宅仲介は経験があるけど店舗・事務所は初めて」
「別事業のお客様はいるけど、不動産案件につなげる方法が分からない」
「地方なので流通物件が少ない」
「貸主営業を始めたいけど、何を話せばいいか分からない」
という段階からでも相談いただけます。
会社によって、
既存顧客
人員
営業経験
地域の物件流通量
得意な業種は違います。
だから、
「とりあえずSNSをやりましょう」
「ポータルサイトへ物件をたくさん載せましょう」
と一律には考えていません。
現在の状況を確認して、
どこから案件を作るのが現実的かを一緒に整理します。
営業を始めた後に、
「貸主からこう言われたけど、次はどう返せばいい?」
「既存顧客から店舗相談が来たけど、どう進めればいい?」
という実案件の相談をしていただくことも可能です。
地方で賃貸仲介を始めたいけれど、最初の一歩が分からない。
そんな段階でも大丈夫です。
まずは、
「お客様を作るのか」
「物件を作るのか」
そこから整理してみると、やるべきことがかなり見えやすくなると思います。