東京のオフィスに空きがない――申込み重複が増える市場で仲介営業に求められること

東京のオフィスに空きがない――申込み重複が増える市場で仲介営業に求められること

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コラム
東京のオフィス仲介市場が、明らかに変わってきました。

少し前までは、条件に合う物件を複数紹介し、
その中から比較してもらう進め方ができました。

しかし、最近は希望条件を聞いて物件を探しても、

「紹介できる物件がほとんどない」
「昨日まで募集していた物件に申込みが入った」
「内見を調整している間に募集が終了した」

というケースが増えています。

条件のよいオフィスでは申込みが重複し、借りたい会社同士が競合する場面も珍しくなくなってきました。

現場で仲介をしている感覚としては、東京のオフィス市場は、コロナ前の貸主優位な状況にかなり近づいています。

数字を見ても、東京の空室は減っています

2026年7月時点における東京ビジネス地区の平均空室率は1.95%、平均募集賃料は坪2万3,287円です。空室率は前月から低下し、募集賃料は上昇しています。

調査対象やビルの規模によって数字は異なりますが、
CBREの2026年第1四半期調査でも、東京都心主要5区のオールグレード空室率は1.0%、グレードAオフィスは0.7%でした。
主要5区の想定成約賃料は、前年同期比で10.2%上昇しています。

JLLの調査では、東京都心5区のAグレードオフィスの空室率が2025年第3四半期に0.9%まで低下しました。空室率が0%台となったのは、コロナ前の2019年以来とされています。

もちろん、東京のすべてのオフィスに空きがないわけではありません。

築年数が古い、駅から遠い、使いにくい形状、
賃料が相場より高いといった物件には空室が残ることもあります。

しかし、企業が希望しやすい、

* 駅から近い
* 適度な広さ
* 建物の印象がよい
* 室内がきれい
* 賃料が相場から大きく外れていない
* 入居時期が合わせやすい

といった条件を満たすオフィスは、以前より明らかに決まりやすくなっています。

「物件を紹介するだけ」では仲介できなくなってきた

空室が多い時期であれば、仲介会社は複数の候補を提示し、
その中から顧客に選んでもらえました。

一方、現在のように空室が少ない市場では、そもそも紹介できる物件が見つからないことがあります。

このとき、経験の浅い営業担当者ほど対応に困ります。

「条件に合う物件がありません」

それだけを伝えてしまうと、顧客からは、
探していないのではないかと思われるかもしれません。

かといって、条件から大きく外れた物件を大量に送っても、
信頼にはつながりません。

空室が少ない市場で必要なのは、物件情報の数ではなく、
条件を整理する力です。

例えば、顧客の希望条件を次のように分けます。

* 絶対に変更できない条件
* 多少であれば調整できる条件
* 代替案があれば変更できる条件

駅徒歩5分以内が本当に必須なのか。

賃料を少し上げれば、移転工事費を抑えられる物件が選べるのか。
希望エリアを一駅広げられるのか。
セットアップオフィスや居抜きオフィスも候補になるのか。
入居時期をずらせるのか。

単に条件を緩めてもらうのではなく、条件を変えたときに何が改善するのかを説明する必要があります。


良い物件ほど、内見前から競争が始まっています

現在の市場では、物件を見てからゆっくり検討する進め方が難しくなっています。

問い合わせをした段階では募集中でも、内見日までに申込みが入ることがあります。
内見後に社内で数日検討している間に、別の会社が先に申込書を提出することもあります。

ここで営業担当者が、必要以上に契約を急がせるのは適切ではありません。
一方で、実際に競争が起きやすい状況を説明せず、
「一度社内でゆっくり考えてください」
とだけ伝えるのも、現在の市場には合っていません。

仲介担当者には、顧客を焦らせるのではなく、判断に必要な情報を早くそろえる役割が求められます。

* 賃料や初期費用
* 契約期間
* 解約予告期間
* 原状回復条件
* 工事区分
* 入居可能時期
* 電気容量や空調時間
* 看板や来客対応の条件
* 保証会社や連帯保証人の条件

これらを早い段階で確認し、顧客が社内判断できる状態をつくらなければなりません。


申込みが重複したとき、先着順とは限りません

オフィスの申込みが重複した場合、最初に申込書を提出した会社が必ず選ばれるとは限りません。

貸主は、賃料だけでなく、さまざまな条件を見て判断します。

* 会社の信用力
* 事業内容
* 入居人数
* オフィスの利用方法
* 契約開始時期
* 希望する契約条件
* 保証会社の審査
* 長期間借りる可能性
* ほかの入居テナントとの相性
* 内装工事の内容

申込者の一方が、募集賃料より高い賃料を提示し、貸主に選んでもらおうとする動きも、今後は出てくる可能性があります。

実際、空室が極端に少なくなれば、賃料条件を上げてでも確保したい企業が現れても不思議ではありません。

ただし、賃料を上げれば必ず選ばれるわけではありません。

例えば、賃料を高く提示した設立直後の会社と、募集条件のまま申し込んだ信用力の高い会社であれば、後者を選ぶ貸主もいます。

貸主にとって重要なのは、数か月の賃料差ではなく、長期間安心して貸せるかどうかだからです。


重複申込みで仲介担当者がやるべきこと

申込みが重複したとき、仲介担当者は「ほかにも申込みがあります」と顧客へ伝えるだけでは不十分です。

まず、貸主側の仲介会社や管理会社へ、次の内容を確認します。

* 貸主は何を重視して選ぶのか
* 申込みの提出順は考慮されるのか
* 審査に必要な書類は何か
* 条件面を調整できる余地はあるのか
* いつまでに結論を出す予定か

そのうえで、申込者側には、審査に必要な資料を速やかに準備してもらいます。

法人登記簿、会社案内、決算書、事業内容が分かる資料など、申込書だけでは伝わらない情報も重要です。

設立直後の会社であれば、代表者の経歴、資金調達の状況、事業計画、既存の取引先などを補足することで、貸主の不安を減らせる場合があります。

仲介担当者の仕事は、単に申込書を転送することではありません。

借主がどのような会社で、なぜこのオフィスを必要としているのかを整理し、貸主が判断できる形で伝えることも仕事の一部です。


賃料を上げる提案は慎重に行う

競合する申込者に勝つために、賃料を上げるという選択肢はあります。
ただし、仲介担当者が安易に勧めるべきではありません。

月額賃料を坪1,000円上げれば、50坪のオフィスでは毎月5万円、年間では60万円の負担増です。
5年間入居すれば、単純計算で300万円の差になります。

それだけの追加負担をしてでも借りる価値があるのか、冷静に判断しなければなりません。

また、貸主が重視しているのが信用力や入居時期であれば、賃料を上げても選ばれない可能性があります。

先に貸主側の判断基準を確認し、賃料以外で改善できる条件がないかを検討するべきです。

* 契約開始日を早める
* フリーレント期間を短くする
* 保証会社を利用する
* 必要書類を早く提出する
* 工事内容を明確にする
* 入居後の利用方法を詳しく説明する

賃料を上げるのは、こうした条件を整理したうえでの選択肢です。

存在しない競合申込みを持ち出して、顧客に条件変更を迫るような対応は、当然ながら行うべきではありません。


契約に持っていく営業は、申込み前から準備しています

空室が少ない市場では、良い物件を見つけてから準備を始めると間に合わないことがあります。

経験のある仲介担当者は、物件を紹介する前から、顧客の意思決定方法を確認しています。

* 最終決裁者は誰か
* 社内承認に何日かかるか
* 必要な資料は何か
* 予算の上限はいくらか
* どの条件なら即決できるか
* 申込み前に確認すべき専門事項は何か

内見後に初めて社内手続きの確認をすると、
その間に別の会社へ決まる可能性があります。

だからといって、確認不足のまま申込みを急がせれば、
契約条件を巡って後から問題になることもあります。

現在のオフィス仲介では、スピードと慎重さの両方が必要です。
このバランスを取るところに、経験の差が出ます。


第一希望が決まらなかった後の対応も重要です

申込みが重複すれば、どれだけ丁寧に対応しても選ばれないことがあります。
そのときに、
「今回は貸主に選ばれませんでした」
と伝えて終わってしまうと、顧客の移転計画は振り出しに戻ります。

第一希望へ申し込む段階でも、第二候補、第三候補を完全には切らず、募集状況を確認しておくことが重要です。

また、選ばれなかった理由を可能な範囲で確認し、次の申込みへ反映します。

* 会社規模が貸主の希望に合わなかった
* 入居時期が遅かった
* 必要書類の提出が間に合わなかった
* 別の申込者の信用力が高かった
* 契約条件の調整幅が小さかった

理由が分かれば、次の物件では準備を変えられます。

顧客にとって、物件が決まらなかったこと自体は残念ですが、その後すぐに次の提案ができれば、仲介担当者への信頼は失われにくいものです。


空室が少ない時期ほど、仲介担当者の経験が問われます

空室が多い市場では、物件情報を多く持っていることが営業上の強みになります。
しかし、空室が少ない市場では、物件情報だけでは契約につながりません。

必要になるのは、

* 顧客の条件を整理する力
* 市場状況を正確に伝える力
* 内見から申込みまでの段取り
* 貸主が重視する条件を確認する力
* 申込者の信用力を補足する力
* 複数申込みになった際の交渉力
* 第一希望が決まらなかった後の提案力です。

特に、オフィス仲介を始めたばかりの方にとっては、案内できる物件がない状況や、申込みが重複した場面で、何をすればよいのか判断しにくいと思います。

通常の住居仲介と異なり、法人の社内決裁、内装工事、契約条件、入居審査など、オフィス仲介には複数の要素が関係します。

物件を見つけること以上に、契約までの進め方が重要になってきています。


オフィス仲介に関するご相談を受けています

私はこれまで、事務所仲介を200件以上経験し、オフィスビルの募集や専任媒介にも携わってきました。

ココナラでは、オフィス仲介を始めたい方や、実際の案件の進め方に悩んでいる不動産会社の方から、次のようなご相談を受けています。

* 顧客へ紹介できる物件が見つからない
* 希望条件をどこまで調整してもらうべきか分からない
* 申込みが重複した際の対応を相談したい
* 貸主側の仲介会社への交渉方法を知りたい
* 申込者の信用力をどのように伝えればよいか
* 案内後から契約までの進め方を整理したい
* オフィス仲介の営業方法を一から学びたい

現在のように空室が少ない市場では、一般的な営業方法だけでは対応しにくい場面が増えてきます。

私の仲介コンサルティングでは、単に営業方法を説明するだけでなく、実際に抱えている案件をもとに、顧客への提案、申込み、貸主側との調整、契約までの進め方を一緒に整理しています。

オフィス仲介を始めたものの、具体的な案件でどう動けばよいか分からない場合には、経験者の視点を取り入れる方法もあります。



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