ワンルームマンション投資についてインターネットで調べると、
否定的な情報が数多く出てきます。
「新築は割高」
「毎月の収支が赤字になる」
「売却すると損をする」
「節税効果は長く続かない」
「家賃保証があっても安心できない」
これだけ注意喚起されているにもかかわらず、
現在も投資用ワンルームマンションは販売され、購入する人がいます。
情報が少なかった時代なら、よく分からないまま契約してしまう人が
いたことも想像できます。
しかし、今はスマートフォンで検索すれば、
ワンルームマンション投資のリスクを簡単に確認できます。
それでも売れるのは、なぜなのでしょうか。
私は、不動産に関する情報が増えたことで、購入者が慎重になった一方、
販売する側も購入者の不安を予測しやすくなったことが、
一つの理由だと考えています。
情報が増えれば、売りにくくなるとは限らない
一般的には、商品のデメリットが広く知られれば、
その商品は売りにくくなると思われます。
ところが、情報が広く共有されると、
購入を検討する人が抱く疑問も似てきます。
例えば、ワンルームマンション投資を検討する人は、
営業担当者に次のような質問をします。
* 毎月の収支が赤字でも問題ないのか
* 将来、家賃が下がる可能性はないのか
* 空室になったらどうするのか
* 売りたいときに売れるのか
* 修繕積立金は上がらないのか
* 価格が下がっても損をしないのか
これらは、インターネットでよく見かける内容でもあります。
営業担当者からすれば、購入者がどのような不安を持っているかを
事前に想定できます。
そのため、質問を受けてから考えるのではなく、
あらかじめ説明を準備できるようになります。
情報が増えたことで商品を売りにくくなった面はありますが、
同時に、購入者がどこで迷うのかも分かりやすくなったのです。
リスクを否定するのではなく、意味を変える
現在の営業では、インターネットに書かれているデメリットを
完全に否定する必要はありません。
むしろ、リスクがあることを認めたうえで、
別の見方を提示した方が説得力を持ちます。
例えば、毎月1万円の赤字が出る物件について、
単に「赤字ではありません」と説明するのは無理があります。
そこで、次のように表現を変えます。
毎月1万円で、将来自分の資産になるマンションを持てます。同じ月1万円の支出でも、「赤字」と表現するか、
「資産形成」と表現するかで、受ける印象は変わります。
ほかにも、よくある説明には次のようなものがあります。
「空室になる可能性がある」
→ 都市部の単身者需要は今後も見込める
「価格が下がる可能性がある」
→ 株式より価格変動が小さく、実物資産として残る
「ローン返済が長期間続く」
→ 家賃収入によってローンを返済できる
「利益があまり出ない」
→ 生命保険や老後対策としての効果がある
「新築は中古より高い」
→ 設備が新しく、当面の修繕リスクを抑えられる
これらの説明がすべて間違っているわけではありません。
実際に、条件のよい物件であれば、
都市部の賃貸需要や団体信用生命保険などがメリットになることもあります。
問題は、一つのメリットによって、
別のリスクまで解消されたように感じてしまうことです。
「株式より不動産の方が安定している」という説明
ワンルームマンションの営業で、
比較対象として使われやすいのが株式投資です。
例えば、次のような説明です。
> 株式はリーマンショックのような事態が起きると、数十%下落する可能性が
あります。一方、不動産は一日で何十%も価格が下がるものではありません。
この説明には、一理あります。
実際、2008年のTOPIXは、年初の1,411.91ポイントから10月の安値746.46ポイントまで、約47%下落しました。株式市場では、短期間に資産価格が大きく変動することがあります。
これに対して、不動産は毎日同じ物件が売買されるわけではありません。
国土交通省の不動産価格指数も、年間約30万件の取引価格情報をもとに、月単位で価格の動きを指数化しています。株式のように、その日の時価が常に画面へ表示される商品ではありません。
そのため、不動産の方が値動きは穏やかに見えます。
しかし、ここには注意点があります。
株式と不動産では、価格の見え方が違う
株式は、取引時間中であれば価格が常に更新されます。
自分が保有している株の価格が10%下がれば、評価額にもすぐ反映されます。
一方、ワンルームマンションには、常に表示される市場価格がありません。
価格を確認するには、不動産会社へ査定を依頼するか、
実際に売り出して購入者を探す必要があります。
つまり、価格が下がっていないのではなく、価格の下落が見えにくいだけ
という場合があります。
また、比較している対象にも違いがあります。
株式の説明では、TOPIXや日経平均株価など、市場全体の指数が使われます。
一方、購入するのは特定の場所に建つ、特定のワンルームマンション一室です。
市場全体の不動産価格が数%しか下がっていなくても、
自分が購入した一室が同じ値動きをするとは限りません。
* 新築時の販売価格が相場より高かった
* 駅から遠い
* 管理状態が悪化した
* 修繕積立金が値上げされた
* 同じマンション内で売却物件が増えた
* 周辺で競合する賃貸物件が増えた
* 家賃が下がった
こうした事情によって、個別の物件価格は市場全体とは異なる動きをします。
数%の値下がりでも、収支には大きく影響する
「不動産は株式ほど大きく下がらない」と聞くと、
数%程度の値下がりなら問題ないように感じます。
しかし、ローンを利用して購入する場合、
数%の価格下落でも影響は小さくありません。
仮に3,000万円で購入したマンションの価格が10%下がれば、
売却価格は2,700万円です。
さらに、売却時には仲介手数料などの費用がかかります。
売却代金から費用を差し引いた金額よりもローン残高の方が多ければ、
不足分を自己資金で支払わなければ売却できません。
現金3,000万円で購入した人にとっての10%下落は、300万円の評価損です。
一方、ほとんどを借入金で購入した人にとっては、
売りたくても売れない状態につながる可能性があります。
不動産投資では、物件価格の変動率だけでなく、借入金との関係を見る必要があります。
「値下がりしにくい」と「収益が出る」は別の話
もう一つ注意したいのは、物件価格が大きく下がらなければ、
投資として成功するわけではないという点です。
ワンルームマンションの収支は、次のような要素で決まります。
* 実際に受け取れる家賃
* 空室期間
* 管理費
* 修繕積立金
* 賃貸管理会社への手数料
* 固定資産税
* 設備交換費
* ローン金利
* 売却時の価格と費用
購入価格が維持されても、家賃が下がり、
管理費や修繕積立金が上がれば、毎月の持ち出しは増えます。
反対に、多少物件価格が下がっても、購入時の価格が適正で、
家賃収入が安定していれば、投資全体として利益が残る可能性もあります。
価格が下がるかどうかだけで、ワンルームマンション投資の良し悪しを
判断することはできません。
国民生活センターも、投資用マンションを契約する前に、物件価格の妥当性、将来の家賃収入、所有者の負担、ローン返済額などを考慮するよう注意を促しています。家賃保証があると説明されて購入したものの、赤字になったという相談事例も紹介されています。
なぜ購入を決めてしまうのか
ワンルームマンションが売れる理由は、営業担当者が
強引だからというだけではありません。
購入者にとって魅力を感じやすい要素が、
一つの商品にまとめられていることも理由です。
* 老後の家賃収入
* 生命保険の代わり
* インフレ対策
* 所得税や住民税の軽減
* 実物資産の保有
* 家賃によるローン返済
* 管理を任せられる手軽さ
一つひとつを見ると、完全な間違いとはいえません。
そのため、複数のメリットをまとめて説明されると、多少の赤字や価格下落リスクがあっても、全体としては悪くない投資に感じます。
さらに、購入者がインターネットで調べたデメリットに対して、営業担当者から一つずつ回答されると、
「ネットには悪いことが書かれていたが、自分が検討している物件には当てはまらない」と思いやすくなります。
ここで重要なのは、質問に回答があったことと、
リスクがなくなったことは同じではないという点です。
営業担当者に反論できるかではなく、数字で確認する
営業担当者との面談では、相手の説明を論破する必要はありません。
購入するかどうかを判断するために必要なのは、言葉ではなく数字です。
少なくとも、次の内容は確認したいところです。
■中古として売った場合の価格
新築時の販売価格ではなく、同じマンションや周辺の類似物件が中古市場でいくらで成約しているかを確認します。
販売会社の将来予測だけでなく、現在売却した場合の査定価格も判断材料になります。
■ 家賃が下がった場合の収支
現在の家賃だけでなく、家賃が5%、10%下がった場合の収支も計算します。
入居者が退去した後、同じ家賃で募集できるとは限りません。
■管理費と修繕積立金の値上げ
新築時は修繕積立金が低く設定されていても、
将来値上げされることがあります。
長期修繕計画と、今後の改定予定を確認する必要があります。
■金利が上昇した場合の返済額変動金利を利用する場合は、
金利が1%上がった場合でも返済を続けられるか確認します。
現在の返済額だけで判断しないことが大切です。
■売却代金からローンを完済できるか査定価格から売却費用を差し引き、ローン残高と比較します。
売却時に自己資金が必要になる可能性も、購入前に把握しておくべきです。
情報が多い時代ほど、第三者の確認が必要になる
インターネットには、ワンルームマンション投資を強く否定する情報も
あれば、積極的に勧める情報もあります。
どちらか一方だけを信じても、適切な判断にはつながりません。
ワンルームマンション投資そのものが、すべて悪いわけではありません。
立地、購入価格、家賃、借入条件、保有期間によっては、
投資として成立する物件もあります。
一方で、営業担当者から提示されたメリットによって不安が軽くなったとしても、実際のリスクが消えたわけではありません。
「株式より価格が下がりにくい」
「家賃保証がある」
「毎月少額の負担で資産を持てる」
こうした説明を受けたときは、その言葉が正しいかどうかだけでなく、
自分が検討している物件の数字に当てはまるかを確認する必要があります。
こんなご相談も受けています
私はワンルームマンションを販売する立場ではなく、
第三者の不動産コンサルタントとして、購入前や購入後のご相談を受けています。
例えば、次のような内容です。
* 営業担当者から提示された収支計画を確認してほしい
* 物件価格が周辺相場より高くないか知りたい
* 毎月赤字でも購入するメリットがあるのか判断したい
* 家賃保証やサブリースの条件を確認したい
* 将来売却するときに、ローンを完済できるか計算したい
* すでに購入している物件を保有するか売却するか悩んでいる
営業担当者の説明がすべて間違っているとは限りません。
ただし、販売する側と購入する側では、
見ている数字や優先するものが異なります。
購入するか迷っている場合は、契約前に一度立ち止まり、
メリットとリスクを同じ条件で比較することが大切です。
自分だけでは判断が難しい場合には、