最近、InstagramやTikTok、Xなどを見ていると、
「初期費用最安でご紹介します」
「他社より1円でも高ければ相談してください」
「初期費用が一番安い不動産屋です」
といった広告を見かけることが増えました。
引っ越しには何十万円というお金がかかることもありますので、
「同じ物件なら、少しでも安い不動産会社にお願いしたい」
と思うのは当然です。
実際、不動産会社によって初期費用に差が出ることはあります。
ただ、不動産仲介を10年以上経験してきた立場から見ると、
「うちは初期費用が一番安いです」という言葉は、そのまま信じない方がよい
と思っています。
なぜなら、賃貸の初期費用の大部分は、
そもそも「初期費用」は誰が決めているのか?
賃貸物件を借りるときの初期費用には、一般的に次のようなものがあります。
* 敷金
* 礼金
* 前家賃
* 共益費・管理費
* 保証会社の保証料
* 火災保険料
* 鍵交換費用
* クリーニング費用
* 24時間サポートなどの付帯サービス
* 仲介手数料
ここで重要なのは、
このすべてを、あなたが問い合わせた仲介会社が決めているわけではない
ということです。
例えば、敷金や礼金などの募集条件は、基本的に貸主側が設定します。
保証会社の料金も、利用する保証会社やプランによって決まります。
鍵交換費用やクリーニング費用についても、貸主や管理会社側の契約条件として設定されているケースがあります。
一方で、仲介会社自身が調整できる代表的な項目が仲介手数料です。
宅地建物取引業者が受け取ることのできる仲介手数料には、
国土交通省の告示によって上限が定められています。
あくまで「上限」なので、不動産会社がそれより安くしたり、
無料にしたりすること自体は可能です。
つまり、仲介手数料を安くする会社は実際に存在します。
ここは否定する必要はありません。
問題は、「仲介手数料が安い」という話と、
「初期費用全体が必ず一番安い」という話は別だということです。
仲介会社が同じなら、物件の条件まで自由に変えられるわけではない
例えば、あるマンションの募集条件が、
家賃 8万円
敷金 1ヶ月
礼金 1ヶ月
保証会社加入必須
鍵交換費用 2万2,000円
だったとします。
A社へ問い合わせても、B社へ問い合わせても、同じ部屋を紹介しているのであれば、貸主側が定めている基本条件は原則として同じです。
B社が、「うちなら礼金を勝手にゼロにします」
とはできません。
礼金を下げるのであれば、貸主や管理会社との交渉が必要になります。
同じように、
「鍵交換費用は不要です」
「保証会社を外せます」
「クリーニング費用はいりません」
という話も、その仲介会社が自由に判断できるとは限りません。
物件ごとの契約条件を確認する必要があります。
ですから、物件も決まっていない段階から「どこよりも初期費用が安い」と
断言することには、少し違和感があります。
何と比較して一番安いのか。
どの費用を安くできるのか。
まずはそこを確認した方がよいでしょう。
では、なぜ「初期費用最安」を大きくアピールするのか?
理由はシンプルです。
まず問い合わせをしてもらいたいからです。
賃貸仲介会社にとって、物件を探している人から問い合わせをもらうことは
非常に重要です。
昔であれば、
SUUMO
HOME'S
at home
などのポータルサイトへ物件を掲載し、
そこから問い合わせを獲得する方法が中心でした。
現在は、それに加えてSNSを使って直接お客様を集める会社も増えています。
その際、「物件を一緒に探します」
だけでは、なかなか他社との差別化ができません。
そこで、
「仲介手数料無料」
「初期費用最安」
「他社より安くできます」
という分かりやすい言葉が使われます。
マーケティングとして考えれば、理解できる方法です。
また、不動産会社そのものではなく、引っ越しを検討している人を集めて提携先の不動産会社へ紹介する、いわゆる送客・営業支援型の事業者がSNS広告などを行っているケースもあります。
ただし、集客方法がSNSだから悪い会社という話ではありません。
ここは分けて考える必要があります。
問題なのは、広告の言葉と、実際に提示された見積りが一致しているかです。
「仲介手数料無料」なら本当に得なの?
これもよく聞かれる質問です。
結論からいうと、仲介手数料無料そのものは、
おかしな仕組みではありません。
貸主側から広告料などを受け取れる物件であれば、
借主から仲介手数料を取らなくても収益が出るケースがあります。
また、会社の営業方針として仲介手数料を割り引くこともあります。
そのため、「仲介手数料無料だから怪しい」
という判断も間違っています。
ただし、確認したいのは総額です。
例えば、
A社
仲介手数料 8万円
その他オプション なし
B社
仲介手数料 0円
24時間サポート 2万円
消毒施工 2万円
書類作成費 1万円
その他サービス 2万円
だったらどうでしょうか。
B社の方が仲介手数料は安いですが、
初期費用全体ではそれほど変わらないかもしれません。
もちろん、これらのサービスが必要であれば問題ありません。
重要なのは、「仲介手数料」だけを見るのではなく、
本当に初期費用を安くしてくれる営業マンは「交渉」をしています
私が不動産仲介をしていて思うのは、
本当に借主の初期費用を抑えようとするのであれば、
単純に、「うちは仲介手数料が安いです」
だけでは終わらないということです。
例えば、
「礼金を1ヶ月から0ヶ月にできませんか?」
「入居日まで少し期間があるので、フリーレントを付けてもらえませんか?」
「保証金を少し下げられませんか?」
「この付帯サービスは必須でしょうか?」
「鍵交換は必須条件でしょうか?」
と、貸主側や管理会社へ確認します。
もちろん、すべて交渉できるわけではありません。
人気物件であれば、貸主側が条件変更に応じる必要もありません。
むしろ、
「条件交渉をしたことで、別の申込者を優先される」
可能性まで考えなければならない場合もあります。
だからこそ、仲介営業には経験が必要です。
何でも値下げ交渉すればよいわけではありません。
その物件の人気度や募集期間、貸主の事情、
ほかの申込み状況などを見ながら、
「ここなら交渉できそう」
「この物件では無理に交渉しない方がいい」
と判断します。
私はこちらの方が、本当の意味で「初期費用を安くする仲介」だと
「どこが一番安いですか?」ではなく「何が違うのですか?」と聞いてみる
もし同じ物件を複数の不動産会社から紹介されたら、
見積書を比較してみてください。
その際、総額だけを比較するのではなく、項目ごとに確認する
ことをおすすめします。
例えば、
A社 初期費用30万円
B社 初期費用25万円
だった場合、
「B社の方が5万円安い!」
で終わらせるのではなく、
なぜ5万円違うのかを確認します。
仲介手数料なのか。
火災保険なのか。
オプションサービスなのか。
保証会社が違うのか。
そもそも入居日が違い、前家賃の日割り計算が違うだけなのか。
ここまで見ると、本当に安いのかが分かります。
私なら、この5つを確認します
「初期費用最安」と言われたら、私は次の点を確認します。
1.同じ物件・同じ入居日で比較しているか
入居日が違えば、前家賃や日割り賃料が変わります。
条件をそろえなければ正確に比較できません。
2.仲介手数料はいくらか
これは仲介会社によって差が出やすい項目です。
無料なのか、半額なのか、1ヶ月分なのかを確認します。
3.その会社独自の費用が入っていないか
消毒施工、書類作成費、独自のサポートサービスなどが付いていないかを
確認します。
必要なサービスなら問題ありません。
不要であれば、外せるか聞いてみましょう。
(基本は外せないことが多いです)
4.貸主側で必須の費用はどれか
「この費用は不動産会社が付けているのか、それとも貸主・管理会社の必須条件なのか」を確認します。
ここが分かると、その仲介会社が本当に安くしている部分も見えてきます。
5.条件交渉をしてくれるか
初期費用を抑えたいのであれば、
「礼金交渉はできますか?」
「フリーレントの相談は可能ですか?」
などを聞いてみてもよいでしょう。
ただし、物件によっては交渉しない方がよい場合もあるため、
その理由まで説明してくれる営業担当者であれば安心しやすいと思います。
私が「最安」を少し警戒する理由
私は、「初期費用が安い会社を選ぶな」
と言いたいわけではありません。
同じ物件、同じ契約条件、同じサービス内容なら、
安い会社を選ぶことには合理性があります。
ただ、「どこよりも一番安いです」
という言葉だけで不動産会社を決めるのはおすすめしません。
なぜなら、不動産仲介会社の仕事は、
初期費用を安くすることだけではないからです。
* 希望条件に合う物件を探す
* 悪い条件がないか確認する
* 貸主側と調整する
* 申込みを通す
* 契約条件を確認する
* 入居までトラブルなく進める
ここまで含めて仲介です。
5万円安くなったとしても、契約条件を十分確認せず、
入居後に大きな問題が発生したら意味がありません。
反対に、同じ条件なら初期費用を抑えながら、きちんと交渉や契約確認までしてくれる会社であれば、非常に良い仲介会社だと思います。
SNSで集客している会社=悪い会社ではありません
ここも今回、誤解してほしくないところです。
SNSを使っているから経験が浅い。
「初期費用最安」と広告しているから営業力がない。
とまでは判断できません。
実際、仲介手数料を抑えながら、非常に丁寧に対応している会社もあります。
一方で、「とにかく問い合わせを取る」
ことを優先して、契約へ急がせる営業が存在するのも事実です。
だから私は、広告ではなく、実際の対応を見ることが
大切だと思っています。
質問に対して理由を説明してくれるか。
費用の内訳をきちんと説明してくれるか。
デメリットも伝えてくれるか。
交渉できることと、できないことを分けて説明してくれるか。
こうした部分を見た方が、その会社が信頼できるか判断しやすくなります。
「この見積り、本当に安い?」という第三者チェックもしています
私がココナラで行っている賃貸物件選びのサポートでは、
不動産会社として物件を契約してもらうことを目的にしていません。
第三者の立場から、
* この物件で本当に問題ないか
* 初期費用の内容は妥当か
* 外せそうな費用はあるか
* 交渉できる可能性がある項目はどこか
* 契約書に不利な内容がないか
などを確認しています。現在のサービスでも、物件の客観的な判断、
初期費用や条件の交渉ポイント整理、契約書確認までをサポート内容
としています。
例えば、
「初期費用最安と言われたけれど、本当に安いですか?」
「仲介手数料無料なのに、別の費用がいろいろ入っています」
「鍵交換費用は外せると言われたけど、本当に大丈夫ですか?」
「A社とB社から見積りをもらったけれど、どちらで契約した方がよいですか?」
といった相談でも問題ありません。
私は物件を紹介して仲介手数料をいただく立場ではありませんので、
その会社で契約しても、別の会社で契約しても、私には関係ありません。
だからこそ、
「この費用は普通だと思います」
「ここは一度確認した方がよいです」
「この会社の説明は特におかしくありません」
「この項目については、交渉できる可能性があります」
と、第三者の立場からお伝えできます。
まとめ|「一番安い」という言葉より、見積りの中身を見てください
賃貸物件の初期費用は、仲介会社がすべて自由に決めているわけではありません。
敷金・礼金などの募集条件、保証会社、鍵交換など、貸主や管理会社側で設定されている費用も多くあります。
一方で、仲介会社によって、
* 仲介手数料
* 独自サービス
* 条件交渉
* 不要なオプションの扱い
などに違いが出ることはあります。
そのため、「初期費用が安い会社なんて全部嘘」でもなければ、
「最安と書いてあるから本当に一番安い」でもありません。
大切なのは、なぜ安いのかを確認することです。
不動産会社の広告だけでは判断できない場合は、
同じ物件の見積りを比較して、第三者に確認してもらう方法もあります。
引っ越しは初期費用だけでも大きなお金が動きます。
「安そうだから」という理由だけで決めるのではなく、費用の中身と契約条件まで確認して、納得したうえで不動産会社を選んでいただければと思います。