出前文化に学ぶデリバリー戦略
 【コロナ時代の提案】

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ビジネス・マーケティング


 今でこそあまり見かけなくなりましたが、日本には出前という文化があり「てんやもん」として多くの人に利用されてきた歴史があります。

 
店屋物/てんやもの
店屋物の意味 店屋物とは、飲食店で作った料理。特に、飲食店から取り寄せる食べ物。仕出し。てんやもん。 店屋物の由来・語源
 昨今は、Uber eat や出前館といったデリバリー代行業者が台頭し、多くの人が利用している中、問題点もかなり多く出てきています。

 
 そこで、この時代において「出前」という文化を再び思い起こして、そのいいところを現在のデリバリーニーズに落とし込んでみてはどうだろうか。





1 デリバリー代行業の問題点
 

 まず一つ目にあげられるのは、消費者からとかなり割高の商品を買うことになりお店側としても利幅がほとんどないという点です。
 
 外食の需要が落ち込んでいる中、テイクアウト、デリバリーに使うお金は増えていますが、飲食店が代行業に払う手数料は30%以上のことが多く、普段お店で出している料理の価格では、この手数料を払うと手元に全く残らないことから、どうしてもで価格を上げざるを得なくなり、デリバリー専用のメニューを作り、割高に価格を設定することになっているのが現状。
 
 結果として、販売価格が高いこと、注文サイトへの掲載件数が非常に増えていることから、思うように受注できなかったり、利益を確保できないのです。
 
 2つ目の問題は、配達員のモラルやスキルです。

 お店のスタッフではない人に業務の一環を担ってもらうことになり、管理の目が行き届かないことから、道端で傾いた弁当を直していたり、落とした商品をそのまま届けるといったことが話題にあがったりもしています。
 
 また、店員の代わりにお客様と接しているという意識をにわかの配達員に求めるのはとても難しいのです。
 
 そして、届けた商品の知識が全くない配達員では、商品の説明をしたりすることは期待できないでしょう。


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2. 出前の特色は今求められている


 いまでこそ古いものとして扱われている蕎麦屋、ラーメン屋の出前ですが、このコロナ時代となっても、このノウハウは、本当に過去のものなのでしょうか?
 今、まさに見直されるべき点がたくさんある文化だと考えられます。

その特色は以下のようです。

・近隣だけの戦略
・知ってるお店という強み
・陶磁器のありがたみ
・断れる、待たせられる

・お店と変わらない値段

これらを少し解説していきます。

3 近隣だけに向けた戦略


  1番の特色として、出前は近所だけの配達で、遠くまではいかずにやれる範囲でやっていることです。
 
 宅配専門のピザ、寿司店などは、都内では半径1.5kmで世帯数が5万はないと成り立たないなどの基準を設けることがありますが、出前では、イートインの飲食店で、そのついでに近所だけ配達するのが通常です。
 
 配達専門のスタッフを雇い、多数のバイクを所有し、大規模に配達をするのとはかなり違います。
 
 出前で大きく利益を出すというのは難しいかもしれませんが、ダブついてしまった人員、食材を循環させる意味ならば、デリバリー代行業でなくとも、十分に検討のつく戦略です。
 「近所しか行かない」
 これは、配達専門業態では出来ないことですね。



4 知ってるお店という強み

 コロナ禍により、リモート就業も増え、自宅の近くの生活圏で過ごす時間が増えているのは明らか。
  
 会社帰りに飲みに行かなくなった分、地元、近所のお店への興味と利用機会はかなり高まっています。
 

 デリバリーのアプリで検索しても、料理・お店の写真などは見ることはできますが、お店の店主の顔、雰囲気、空気感などをしっかり感じ取れることはなく、近所の店ではそれが少し読み取れることが利点。
 
 「あそこの角曲がったとこのお店だよ。」 
 この安心感が大きいのです。

 そして、出前ではその店の店主、息子さん、奥さんまでも知っているという身近な感覚があり、今日は、息子さんが出前に来た、などという親近感もこの文化にはあり、デリバリー代行ではあり得ない話です。
  

5 食器のありがたみ
 

  今、世間の人々は、持ち帰りのプラスチック容器にうんざりしており、本当に飽きています。

 これは、そのそっけなさから来るものだと思いますが、出前では、麺が伸びてしまおうが、カレーのご飯がベトついてしまおうが、お店で出している食器にラップして配達されるのです。

 
 現在のように、持ち帰り用の容器が今ほど数多くなかったからかもしれませんが、やはり、ラーメンの本物のどんぶりで食べると満足感は違います。
 たとえ麺が伸びていたとしてもです。

 
 紙袋やプラスチック容器に入った惣菜をお皿に移すだけでも、気持ちが変わることから、このことは意外と大事なポイントなのかもしれません。
 そして、食べ終わった食器を洗って、玄関先に置いておく。
 この文化も、日本ならではのとても平和で愛のあるやり方だと感じます。

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6 「断る・待つ」に寛容


  今でこそなくなってきた30分以内の配達など早いイメージのデリバリーですが、安全面から必要な配達時間をきちんと取るようになってきことから
 出前文化の待たせてしまうことへの抵抗感がだいぶなくなってきています。
 
 「まだ来ないんだけど?」と電話すると、まだ出てないのに「もう出てます!」
なんていうのが出前のイメージかもしれませんが、ある程度は待たされてもいい、しょうがないといった気持ちになってしまうのが、出前であったりもします。

 また、近所のお店であることから、お店の状況がイメージがつきやすく、今日は混んでて配達できない、1時間以上かかるなどの時に納得しやすいところも大きいのです。

7 お店と変わらない値段
 

 ほとんどの出前をしている店は、イートインの価格と変わらずに出前で料理を提供しています。
この点は、配達専門・代行業者のように、広い配達範囲をカバーずるためにある程度のシステム・設備の投資をし、人員をかかえて待受体制を整えていると間接費用が大きく変わり、その分のコストがメニュー価格に乗ってしまうのです。

 近所のみの出前の場合、いくら以上の注文で、などという制限を設けることの少なく、お客さんの「1品じゃ申し訳ない」というモラルによって成立していることろが大きいのですが、配達料がないということが、出前を取ることへのハードルを下げているのです。

8 この時代ならではのメリット


 20年前では考えられませんでしたが、現在では、Googleマップで迷わずお客さんの自宅に配達することができます。

 筆者は、20数年ほど前に、宅配寿司屋でアルバイトした時代がありましたが、地図をみて道順を覚え、サンタの格好してバイクに乗り、デリバリーに出て道に迷って公衆電話でお客さんに電話して、小学生に指をさされたことが何度かあります。
 それに比べたら、本当に進化した時代で、携帯のGPSで迷うことはないのです。

 また、アプリなどの利用で電話が入った時点でお客様の住所、電話番号が確認できるのは、一部の大企業だけの成せる技ではなく、ごく小さな個人店でも可能になっています。

 
 さらに、お弁当、ご飯・麺物のニーズ以外に、宅飲み、家飲みの需要が拡大している傾向があることから、家でちょっとだけ贅沢で、スーパーのお惣菜コーナーには売っていないおつまみ、お酒が進むものを求められており、このニーズの拡大はとても大きいことです。
 お弁当チェーン店であまり需要がなかったオードブルの需要が増えてることからも分かりますね。
 
 個人店・小規模店舗が、やれる範囲で出前を近所にする

このニーズは、当分続いていくでしょう。

 もちろん、出前で大儲けということではないです。


 まだ、当面の間は外食が敬遠される中、すこしお店の雰囲気を感じとれる、お店の食器での出前は、ありがたみを感じるはずです。
 もっと成熟していき、食器、テーブルウェアのレンタル、お店でかかってる音楽の無料配信なんかも見えてくると楽しい出前ライフになりますね。



 きっちりデリバリービジネス!というのではなく、
 「自然にできる範囲の出前」を気軽に取り組むのもいい時代なのかもしれません。

とよしき

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