労働契約?業務委託契約?悩んだときの目安と注意点

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法律・税務・士業全般
こんにちは。社会保険労務士の とくほみわ です。

最近、複数の小規模事業所さまから「労務管理が煩雑なので、業務委託契約を検討したいが、問題ないか」というお問い合わせを受けました。

働く人が「労働法上の労働者」でなくなれば、時間外割増賃金や有給休暇の管理から開放されるため、会社としてはメリットだらけでは?と感じるかもしれません。

業務委託契約は「絶対ダメ」というわけではないのですが、業務の内容によっては取り入れるのが難しく、トラブルのもとになる場合もあります。

2024年10月25日、厚生労働省はフリーランスからの「労働者なのに業務委託契約にされているのでは?」という相談を受ける窓口を労働基準監督署に設置することを発表しました。

そのくらい「労働契約か、業務委託契約か」について、判断が難しいケースやトラブルが多かったことが伺えます。

今回は、労働契約と業務委託契約の違いについて解説してみます。

「業務委託契約」を検討する際のポイント


「スタッフの勤務時間を柔軟にしたい」
「掛け持ちや副業が増えて、労働時間管理が難しい」
「業務委託契約にするのもありかと思う」

経営者としては、上記のような思いから、業務委託契約もひとつの選択肢として浮かぶことがあるかもしれません。

まず、業務委託契約のメリット、デメリットをまとめてみましょう。

業務委託契約のメリット・デメリット


会社側のメリット
・労働基準法が適用されず、労働時間管理や社会保険料の負担が軽減される
・契約解除が比較的容易

会社側のデメリット
・契約は実態に基づくため、契約書のタイトルが「業務委託」となっていても実態が労働契約であれば、遡って労働法の指導を受ける可能性がある

働く側のメリット
・業務の進め方や時間管理の自由度が高い
・複数のクライアントと契約可能
・報酬は時間ではなく成果に基づく

働く側のデメリット
・雇用保険や有給休暇、時間外割増賃金、労災保険といった労働者保護が適用されない
・労災保険に入れないということは、業務上、通勤途上の事故やケガが重症になっても十分な保証を得られないかもしれない
・自分で個人事業主の開業届を提出し、確定申告を行う必要がある

会社も働く側も、以上を十分に理解したうえで、慎重に判断することが必要です。
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実態に基づいた契約形態の判断


「会社側のデメリット」の部分を少し深く掘り下げてみます。

業務委託契約の有効性は、以下のような「実態」により左右されます。
(昭和60年12月19日「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」より)
①仕事の依頼や業務指示への諾否の自由
業務依頼の拒否ができないと労働者性が高い。

②指揮命令
業務内容や遂行方法への指示が細かいと労働者性が高い。

③拘束性
勤務場所・時間が指定され、管理されていると労働者性が高い。

④代替性
代替が効かないと労働者性が高い。

⑤報酬の労務対償性
欠勤控除や残業手当があると労働者性が高い。

⑥機械器具の提供
委託元が高価な機械を提供する場合、労働者性が高い。

⑦専属性
他所の業務従事が制限されていると労働者性が高い。

⑧報酬の額
他の労働者と同等の報酬だと労働者性が高く、著しく高い報酬だと低い。

判断は一つの項目によってされるものではなく、事例ごとに総合的な判断がされます。

「契約の実態を見る」とはどういうこと?


たとえ契約書上では「業務委託」となっていても、働く時間や場所が指定され、実質的に指揮命令がある場合は「労働契約」とみなされます。

会社と働かせる人が納得の上で「業務委託」を結んでも、労働基準監督署の監査で労働者性が認定される可能性があるということです。

もし「業務委託」ではなく「労働契約」と認定された場合、遡って残業代の支払いが求められたり、労災隠しの疑いで指導対象になるリスクも否定できません。

注意点とまとめ


業務委託契約は、労働法の対象外となるため、事業主同士の対等な契約となります。
これにより契約内容の自由度が高まりますが、労働者保護がなくなる点を双方がよく理解したうえで契約することが重要です。

双方のリスクとメリットを十分に理解し、契約書ではなく実態に基づいた慎重な判断が求められます。

判断に困ったら、ぜひ社会保険労務士など、プロへの相談をご検討ください。



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