解雇や雇い止めの要点を社労士が解説します 

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ビジネス・マーケティング
こんにちは。
社労士の とくほみわです。

小さな会社の人事労務、就業規則、給与計算などの相談対応を得意としています。

さて、自民党の総裁選に際して、一部の候補者が「解雇規制の緩和」を訴えていることが報じられています。

ニュースを見やすくするために
「解雇をはじめとした、会社側からの契約の終了」
についてまとめてみました。

「解雇って結局なに?」
と何となくモヤモヤしていたかた向けて、ニュースや新聞報道の整理に、お役に立てれば幸いです。


解雇とは?

従業員の同意なく、会社(使用者)側からの一方的な通知により雇用契約を終了させることをいいます。

会社は、解雇させたい日の30日前の通知か、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。

ただし、犯罪行為など従業員がとても悪いことをした場合は、労働基準監督署長の認定を得て、30日を得ずに即時解雇することも可能です。

解雇にはいくつか種類があります。

代表的には懲戒解雇、普通解雇、整理解雇です。
(諭旨解雇は会社によって微妙な解釈が違うなど、特殊なので今回は外します)

ややこしいのですが、他の「会社からの雇用契約の終了」に「雇い止め」があります。

こちらは1年契約など、期間が決まっている雇用契約が終わるときに「期間が来たのだから辞めてください」という終了のさせ方です。

従業員側が何年も契約を更新し、これからも雇用関係の継続を期待していた場合などはトラブルのもとになる場合が多いため、色々と注意する点があります。

「会社からの雇用契約解除の無効を争っている裁判」がニュースになる場合、上記のどのケースを争っているのかによって論点や見方が変わります。

ネットのニュースサイトでも、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇、雇い止め、どれなのか?混乱している記述が見られることもあります。

今日は簡単に、解雇や雇い止めの概要を説明します。

懲戒解雇


従業員がとても悪いことをしたときに、会社から懲罰的に退職させることです。

懲戒解雇になると、普通解雇より再就職が困難になることや、退職金が支給されないあるいは減額されるなど、労働者にとって負担の大きい処分になるので、その有効性の判断は厳しくみられます。

懲戒解雇について裁判などで争点になるのは

・就業規則等に懲戒の種類・程度の定めがあること
・懲戒事由への該当性
・社会通念上相当であること
・弁明の機会
・平等主義
・不当な目的ではないこと
・即時排除もやむを得ない理由があること

原則、就業規則がないと懲戒解雇はできません。

というか、解雇に至らない「懲戒(減給や降格、始末書の提出)」も就業規則がないとできません。
(労働契約書に『懲戒の要件と程度』を全て書いていたら別ですが、恐らく難しいと思います)

普通解雇


普通解雇は、能力不足や勤務態度不良などにより、企業運営に支障をきたすような事情がある場合に適用されます。

懲戒解雇と違い、従業員が「意図的にすごく悪いことをした」わけではないので、会社の責任も重めにチェックされます。

具体的には、
「能力不足や勤怠不良に対して会社が必要な教育や指導を行ったのか?」
を見られます。

普通解雇で争点になるのは

・就業規則等に解雇事由の定めがある
・解雇事由への該当性
・解雇回避努力
・社会通念上相当であること

普通解雇も、原則として就業規則がないとできません。

整理解雇


整理解雇とは、会社の経営不振などで従業員の一部を解雇するということです。

一般的に、会社の経営不振を従業員の責任にするのは酷なので、
従業員の落ち度は 懲戒解雇>普通解雇>整理解雇 となり、一番小さいと考えられます。

整理解雇で争点になるのは

・人員整理しなければならないほどの経営上の苦しさ
・労働者に対して真摯に説明をしたのか
・解雇しか方法はないのか
・経営不振を口実に気に入らない人を排除していないか

こういった点が問われます

次に、6ヶ月や1年など、期間の定めのある労働契約の雇い止めです。

雇い止め

有期労働契約は、その期間が満了した場合に契約終了することが原則です。

しかし、
契約が何年も反復されており、契約書の取り交わしも形式的に判子を押すだけものだった。

加えて、いつも上司や同僚から「定年まで勤めてね」と言われていた。

なのに、とある契約更新の1ヶ月前に「次の更新はありません」と言われた・・・こういった場合、納得できるでしょうか?

上記のようなときに、争いになります。
雇い止めで争点になるのは

・更新基準の明確性
・雇い止め事由への該当性
・業務の客観的内容
・契約上の地位の性格
・更新を期待させる言動
・更新手続・実態
・勤続年数・実態

一見、項目の数は多いですが、反復して更新を繰り返しておらず、契約更新への期待も与えていなければ争いにはなりません。

会社側としては、契約書作成をサボらない、契約更新のときには面談で更新の有無を確認する、不用意に更新への期待をもたせない、こういった対応で争いを避けられるということになります。

手放したくない人材であれば、無期雇用や正規雇用に切り替えればよいのです。

有期労働契約の契約期間途中の終了


雇い止めは「2024年9月30日まで」の契約満了に辞めてほしいということ、
契約期間途中の終了は「契約満了日よりも前に辞めてほしい」ということです。

お互いに契約書を取り交わしているため、従業員には
「少なくとも契約期間満了までは働ける」
という期待があり、生活を設計しています。

そんな中、会社から契約途中で終了されるのは、
労働者に心理的、経済的に大きな負担を与えます。

なので、よ~~~~っぽどの事情がない限りできません。

「有期労働契約の契約期間途中の終了」で争点になるのは

・解雇事由への該当性
・直ちに雇用を終了されるような特別重大な事由

「懲戒解雇」並みの相当な理由がないと、契約途中での終了は難しいと考えられます。
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内定取り消し


労働契約はお互いの「働いてください」「働きたい」という意志が合致したら成立します。

それは、内定であっても同じです。
「内定承諾書の取り交わし」により、労働契約が成立します。

企業側が内定を取り消すには相応の理由がなくてはいけないということです。

内定取り消しで争点になるのは

・解約事由が明示されている
・労働契約開始までに解約の事由に該当したこと

勝手な都合で一度出した内定を取り消すことはできません。

試用期間


会社が本採用の前に定める「試用期間」は、3~6箇月の期間が一般的です。
お試しとはいえ労働契約が成立しています。

試用期間満了時の解雇で争点になるのは

・解雇事由が明示されている
・(試用期間の)解雇事由に該当した
・「当初知り得ることができなかったこと」等により、引き続き雇用することが困難である

普通解雇や懲戒解雇よりは緩やかに見られますが、社会通念上相当の事情がないと、試用期間満了での契約解除はできません。

まとめ

以上が、解雇など会社からの雇用契約解除の要件です。

これらを満たしていないと、労働者が会社の不当性を訴えた場合、労基署から指導を受けたり、紛争解決手続や労働審判、裁判で負けたりする可能性があります。

負けると、解雇の取り消し、雇用の継続を求められるだけでなく「その労働者が得ていたであろう収入の補償」などで、会社は金銭的にダメージを負います。

在籍している従業員にも「会社が訴えられた」という事実は、いろいろと心理的な影響を与えます。(こんな会社にいたくないと退職したり、自分も訴えてやる!と好戦的になったり)

これを避けるためには、簡単にクビにしない。労働者を大事にすることが大前提です。
とはいえ、正直なところ「困った従業員への対応に悩んでいる」「次の契約更新を結ぶべきか悩んでいる」という経営者の方も多いと思います。

そんなかたは、社労士に相談してください。
そうすれば、

・就業規則を整え
・労働条件通知書・労働契約書を適法なものにし
・契約更新(解除)の手続きについてアドバイスを行い
・指導が必要な労働者に、法律に則って公正に対応すること

が可能になります。

私もココナラで、

・小さな会社や店舗の就業規則作成
・会社のルール作りのご相談対応
・給与や社会保険の不安な点を解消する

サービスを公開しています
「社労士と本格的に顧問契約を結ぶほどではない」「困ったときだけ相談したい」という方にオススメです。






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