異領域の変革パワー

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私、毎年末に高校バスケットボールの全国大会「ウィンターカップ」を観戦します。残念ながら昨年は行けませんでした。私自身バスケ経験はないのですが、娘が中高バスケ部だったので、観るのが好きなんです。さてあるときの表彰式。優勝トロフィーを授与するのは日本バスケットボール協会会長。あれ見たことある人、三屋裕子さんだ。そうです。元バレーボール日本代表で、ロス五輪(1984年)で銅メダルを獲得した人。

なぜ元バレー選手が会長に? 以前バスケットは組織運営がゴタゴタしていて、リーグが分裂していた時期もありました。国際バスケ連盟からの指導もあり、「バスケ関係者以外に改革をさせる」という方針になりました。会長となり変革の先頭に立ったのが、サッカーでおなじみの川渕三郎さんです。その後、川渕さんから三屋さんにバトンタッチ。「名誉職かな?」と思ったりしますが、スポーツ研究、企業経営、協会運営(バレー)等、とても経験豊富で、川渕さんの信頼が厚かったようです。現在、筑波スポーツ科学研究所副所長、かつ事業会社の代表取締役、複数企業の社外取締役も担っています。やり手なんです。異なる領域から女性トップが来て、象徴的だし、経営手腕も期待できますね。

企業経営では異業種からトップに就任するという話はよく聞きます。危機的状態を脱するために、大胆で抜本的な変革が必要な場合に多いです。有名なのはIBMが経営危機になった時のルイス・ガースナー氏。ナビスコのCEOからIBMのCEOに転じ、赤字にあえいでいたIBMの再建に成功しました。ビジネススクールのケーススタディでよく使われます。日本ではJALの稲森和夫氏(元京セラ)、アサヒビールの樋口廣太郎氏(元住友銀行)などもそうですね。現役経営者ではサントリーの新浪さんや資生堂の魚谷さんも異業界から。

経営者に限らず今後ますます多様性が重要になってきます。しかしここで大切なのは、「異領域」そのものではありません。大切なのは「外の視点」、「化学反応」です。同じ分野の人間が長く同じ組織で活動していると、硬直的、連続的になり、新しい発想や変革行動が弱体化します。環境変化に対応できなくなる。反対を考えましょう。「内向き視点」、「集団同調」、これを打破したいから異領域人材に期待する。でも異領域の人ばかりを集めてはダメ。絶対に専門性のレベルを低下させてはいけないのです。上の2つが達成できれば、必ずしも異領域である必要はありません。このあたりの本質をよく理解した上で、「異領域の変革パワー」を上手に活かしたいですね。

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