航空会社の経営からの学び

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昨年、ANAとJALは無配でした。ちなみに配当キングは花王です。なんせ「30年連続増配中」(増配!)でぶっちぎり。創業以来無配がない会社も多いです。さてANAですが、ご承知のとおり感染症の影響で運行が激減しています。国内線は約50%減、国際線は約90%減。これに固定費(人件費や機体のリース料/減価償却費など)が重くのしかかっています。ANAは売上の約6割が固定費だそうで、新聞には「飛ばなくても毎日30億円が流出」と書かれていました。

世界の航空業界は、リーマンショック以降も中期的にはグローバル化を追い風に、需要を伸ばしてきました。しかし今回は物理的要素が経営を直撃しています。つまり典型的な3密。国内では都道府県をまたぐ移動自粛、「密」への警戒感が強い。機体の稼働率、座席の稼働率で勝負してきた航空会社としては、まさに存続の危機です。海外出張しなくても、打ち合わせならいつでもどこでもZoomでできますからね。また、従来就職人気企業ランキングは、保険、商社、航空が3強で、21年卒ランキング(20年調べ)でもANAとJALはベスト10入りしていました。しかし21年卒の採用はなし。22年卒も大幅減です。

ここで固定費について考えてみます。多くの方がよく混同するのが、損益分岐点と操業停止点です。「損益分岐点を下回ったら、売れば売るほど赤字だから、営業しないほうがいいでしょ?」→「違います。操業停止点まで営業し続けるんです」。ん?どういうこと? 利益創出のプロセスを考えましょう。売上-費用=利益。費用=変動費+固定費。従って、(売上-変動費)-固定費=利益です。つまり、粗利-固定費=利益。固定費は営業してもしなくてもかかります。もし粗利がゼロなら(営業を止めたら)、0-固定費=赤字(固定費分)。でも粗利が1円でも出ているなら、その分赤字は減ります。粗利がゼロ、さらにマイナスになったら、赤字は固定費以上に膨らむ。その場合は営業を停止した方がいい。

ざっくりですが、利益がゼロの売上高を損益分岐点、粗利がゼロの売上高を操業停止点と考えてよいと思います(厳密ではありませんが)。「損益分岐点を下回っても営業は継続し、操業停止点を維持できなくなったら(粗利ゼロ)、停止する」というのが教科書的解答です。ちょっとややこしい。こういう利益・費用管理を管理会計と言ったりします。このあたりのリテラシーも持っておきたいですね。そして頑張れ、ANA!JAL!

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