質の高い科学的根拠ってなに?

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「科学的根拠はあるのか?」
「エビデンスに基づいた判断なのか?」
なんてコロナ騒動のニュースで聞かれた方もいるかもしれません。情報がたくさんある現代では、どの情報を信じるべきなのか判断が難しいですよね。
「何を信じるのか」信仰は人それぞれですが、その信仰に対して懐疑的に「本当にそうなの?」と多角的な視点で実証しようとするのが科学者達です。
今回は「科学的根拠」って何なの?ってところを原田隆之さん著「心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス」を参考に見ていきましょう。
▼こんなことを知りたい人向け
・科学的根拠(エビデンス)とは何か
・どんな根拠が信用できるのか

①科学的根拠(エビデンス)とは
科学的な根拠(エビデンス)って何なの?というところ。大まかなところでは次のようになります。
あるできごとの事実を確かめる場合に、特定のアプローチとそうでないアプローチを比べたときに、特定のアプローチの方がよい結果を得られたら、特定のアプローチに効果があったと判断できる。
これがエビデンスです。
根拠の信頼度は実験のやり方によって変わってきます。調べる個体の数が多い方がよいし、個体の多様性も重要な判断材料になってきます。
たとえば、
10人に対して効果があるより1,000人に対して効果があることがわかれば「たまたま起こった」と考えにくくなります。
効果が現れるのは、男性だけなのか、女性だけなのか。何歳くらいの人に効果的なのか。個体差によるものなのか、環境や生活習慣は影響がないか。
「なぜ効果があったのか。」
を本当の意味で解明するのは難しいけれど、特定の条件で、特定のアプローチをすると効果が現れやすい。というのを比較して見つけるのが科学的な発想なんですねぇ。
②エビデンスの質とは
先ほど少し触れましたが、効果があるかを検証するための実験は、実験ごとに規模や検証の仕方が異なります。
では、どんな実験デザインが信憑性が高い(エビデンスの質が高い)のかというと
・ RCTの系統的レビュー
・個々のランダム化比較試験(RCT)
・準実験
・観察研究(コホート研究、ケース・コントロール研究)
・事例集積研究
・専門家の個人的な意見
という感じ。順番にみていきましょう。
■専門家の個人的な意見
個人的な意見というのは、その人の主観的な経験に基づく意見のことです。
「私の長年の経験からすると、この場合はこうした方がいい」みたいな。
経験も大事ですが、私たち人間には事実を歪んで認知することがあるので注意が必要です。認知バイアスってやつですね。
なので、客観的な事実を判断するために数字を使ったり、データを比較したりするのが大事なんですなぁ。
■事例研究
参考図書の中で強調されていたのが、「事例をいくら集めたところで、それはデータではない」という点。
何が違うかと言えば『厳密性』です。
データは実験の状況設定をしっかりやって効果を検証した結果に得られるものだが、事例はそういうのない!ってのがポイント。
しっかりと環境設定しないと、何が原因で結果が現れているのかわからなくなっちゃいますからね。こちらの事例研究も根拠としては信憑性が低めです。
■観察研究(コホート研究、ケース・コントロール研究)
この研究では観察対象者を2つのグループに分けて、
すでに行われたアプローチや何らかの要因の影響を観察します。
たとえば
タバコを数人と肺ガンの関係を調べるときに、
・今、健康な人と肺ガンの人の過去の喫煙歴から影響を調べるのがケース・コントロール研究
・今、喫煙している人と喫煙していない人を追跡調査して将来どれくらい肺ガンになる率があるのかを調べるのがコホート研究
過去の行動の影響や現在の行動の影響がどのように現れるかを観察するのが観察研究ってことですね。
■準実験
ここからは対象者にアプローチして効果を検証するものになります。
どんなものかというと
・アプローチの前後で研究参加者の状態を比較するもの
・研究参加者の希望によって2グループに分けて従来のアプローチと新しいアプローチを比較するもの
など。
準実験では、バイアスの影響を受けやすいという点で純粋にアプローチの効果を測定しづらいという問題点があります。
■ランダム化比較試験(RCT)
単一の研究で最も信憑性が高い結果を提供するのが、このランダム化比較試験です。
どのような実験デザインかというと、
1 )研究参加者をランダムに2グループに分ける。
2 )1つのグループに評価したいアプローチを行い、もう1つのグループに比較したいアプローチを行うか何もしない。
3 )2つのグループの変化を測定する
というもの。
ここで有意な差があると、それは評価したいアプローチの効果だと高い確信を持って結論できるとのこと。
■RCTの系統的レビュー
RCTから信憑性の高い結果を得ることができますが、もしかしたらランダム性が薄くて研究参加者に偏りがあるかもしれませんし、研究者のバイアスがあるかもしれません。
1つの結果から結論を出すのではなく、複数の研究者たちのRCTを持ち寄って統合する。これがRCTの系統的レビューです。
この研究が1番信憑性が高いと言われています。
まとめ
何かの判断をする時、とりわけ重要な判断をする時には「なぜそうするのか?」という判断の根拠が求められることがあります。
そしてその根拠を科学の視点から得ようとする場合、科学的根拠にも実験のやり方によって信用度が変わってきますよーというお話でした。
なので「これは科学的な根拠ある!」という場合でも、その根拠にどれくらい信憑性があるのかは蓋を開けてみるまでわかりません。
科学が「絶対」ではありませんし、結論が覆ることもあります。なので科学的根拠だからといっても過信は禁物ってことですね。
また、科学的根拠を上手に使うための注意点だったり、研究する時にはこういう所気をつけた方がいいよーという内容も紹介されているので興味ある方はどぞ。
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