「できない子」ではなく、力の出し方が違う子どもたち
非認知能力という言葉を耳にする機会が増えました。
非認知能力とは、テストの点数や偏差値のように数字で測りにくい力のことです。
たとえば、粘り強さ。
協調性。
自分の気持ちを整える力。
人と関わる力。
失敗しても立ち直る力。
自分で考えて行動する力。
困ったときに助けを求める力。
こうした力は、子どもが社会の中で生きていくうえで、とても大切な土台になります。
では、ギフテッド、不登校、発達障害のある子どもたちは、非認知能力が低いのでしょうか。
私は、そう単純には言えないと思います。
むしろ、その子たちの非認知能力は、学校の中では見えにくい形で表れていることがあります。
たとえば、不登校の子どもは「我慢する力がない」と見られてしまうことがあります。
しかし、実際には、限界まで我慢してきた子も少なくありません。
教室の空気に疲れた。
友達の視線が怖かった。
先生の一言に深く傷ついた。
毎朝、学校に行かなければと思いながら、体が動かなかった。
それでも何度も頑張ろうとしてきた。
そういう子に対して、「非認知能力が低い」と言ってしまうのは、あまりにも乱暴です。
その子は、耐える力がなかったのではなく、耐えすぎて心が限界を迎えたのかもしれません。
ギフテッドの子どもも同じです。
頭の回転が速い。
深く考える。
正義感が強い。
理不尽に敏感。
好きなことには驚くほど集中する。
一方で、単調な課題に強い苦痛を感じたり、同年代と話が合わなかったり、完璧を求めすぎて動けなくなったりすることがあります。
周囲からは「わがまま」「協調性がない」「扱いにくい」と見られるかもしれません。
でも、その奥には、深い思考力、強い感受性、高い理想、鋭い観察力があります。
それもまた、非認知能力につながる大切な力です。
発達障害のある子どもも、誤解されやすいです。
ADHD傾向のある子は、落ち着きがない、忘れ物が多い、続かないと見られがちです。
ASD傾向のある子は、空気が読めない、こだわりが強い、集団が苦手と見られがちです。
LDのある子は、努力が足りない、勉強が苦手と思われがちです。
けれど、それは能力がないという意味ではありません。
集中の向き方が違う。
安心できる環境が必要。
言葉の受け取り方が違う。
読み書きや計算に特別な負荷がある。
そうした特性があるだけなのです。
非認知能力を考えるときに大切なのは、「大人の言うことを聞けるか」「集団に合わせられるか」だけで判断しないことです。
もし非認知能力を、ただ「我慢する力」「空気を読む力」「みんなと同じように行動する力」と考えてしまうと、多様な子どもたちはすぐに低く評価されてしまいます。
しかし、本当に必要な非認知能力は、それだけではありません。
自分の限界に気づく力。
苦しいときに助けを求める力。
自分に合った環境を選ぶ力。
失敗しても自分を全否定しない力。
人と違う自分を受け入れる力。
好きなことを深める力。
自分の特性を理解し、工夫しながら生きる力。
これらも、これからの時代に必要な大切な非認知能力です。
不登校、ギフテッド、発達障害のある子どもたちは、この力を持っていないのではありません。
まだ安心して発揮できる場所に出会っていないだけかもしれません。
責められ続ける環境では、子どもは力を出せません。
「なぜできないの」と言われ続けると、自信を失います。
「普通にしなさい」と言われ続けると、自分らしさを隠すようになります。
でも、理解される環境では、子どもは少しずつ変わります。
話を聞いてもらえる。
失敗しても見捨てられない。
好きなことを認めてもらえる。
苦手なことを工夫で支えてもらえる。
自分の感情を否定されない。
そうした安心の中で、子どもは少しずつ、自分を信じる力を取り戻していきます。
非認知能力は、叱って無理やり育てるものではありません。
安心できる関係の中で育つものです。
保護者の方に、どうか知っておいてほしいことがあります。
お子さんが学校に行けないからといって、心が弱いわけではありません。
お子さんが集団に合わないからといって、社会性がないわけではありません。
お子さんが発達特性を持っているからといって、将来が閉ざされているわけではありません。
その子には、その子の力の出し方があります。
その子には、その子に合った育ち方があります。
今はまだ、その力が学校の中で見えにくいだけかもしれません。
大切なのは、子どもを「できない子」と決めつけることではありません。
その子が何に苦しみ、何に安心し、どんな場所なら力を出せるのかを見つけることです。
非認知能力とは、子どもを大人の都合に合わせる力ではありません。
その子が、自分らしく、人とつながり、自分の人生を生きていくための力です。
不登校、ギフテッド、発達障害のある子どもたちにも、その力は育ちます。
むしろ、その子たちは、深く感じ、深く考え、自分に合う場所を探そうとしている途中なのかもしれません。
だから、どうか焦らないでください。
責めすぎないでください。
お子さんの中にある小さな力を、一緒に見つけていきましょう。
子どもは、理解される場所で、もう一度伸び始めます。