ASDの子どもは「わがままな子」ではなく、「感じ方と理解の仕方に特徴がある子」。
ASDとは、自閉スペクトラム症とも呼ばれる発達特性です。
主な特徴は、人との関わり方、コミュニケーション、こだわり、感覚の受け取り方に表れます。
たとえば、相手の表情や空気を読むのが苦手。
急な予定変更に強い不安を感じる。
好きなものには深く集中する。
音、光、におい、服の感触などに敏感。
集団の中で疲れやすい。
冗談やあいまいな表現を、そのまま受け取ってしまう。
こうした姿が見られることがあります。
これは、本人がわざと困らせているのではありません。
脳の情報の受け取り方、整理の仕方、人との距離感のつかみ方に特徴があるのです。
ASDの子どもは、世界をとても細かく、強く、正確に受け取っていることがあります。
だからこそ、普通の教室がとても騒がしく感じたり、友達の何気ない一言に深く傷ついたり、予定変更で頭の中が混乱したりします。
大人から見ると「融通がきかない」「空気が読めない」「こだわりが強い」と見えるかもしれません。
けれど本人の中では、必死に世界を理解しようとしているのです。
ASDには短所だけでなく、大きな長所もあります。
好きなことを深く追究できる。
細かい違いに気づける。
ルールや約束を大切にできる。
記憶力が高いことがある。
独自の視点で物事を考えられる。
一度納得すると、まじめに取り組める。
こうした力は、環境が合えば大きな才能になります。
向いている仕事としては、専門性を深める仕事、正確さが求められる仕事、一人で集中できる仕事、ルールが明確な仕事、興味を生かせる仕事が合いやすい傾向があります。
たとえば、研究、プログラミング、データ分析、図書館・資料整理、品質管理、設計、デザイン、イラスト、動画編集、翻訳、専門職、職人系の仕事などです。
反対に、あいまいな指示が多い仕事、急な予定変更が多い仕事、強い雑談力や空気を読む力を常に求められる仕事、騒がしい環境、マルチタスクが多すぎる仕事は苦手になりやすいことがあります。
ただし、これは「ASDだからこの仕事しかできない」という意味ではありません。
大切なのは、本人の特性に合った環境を選ぶことです。
親ができる一番大切な関わりは、「普通にしなさい」と責めることではありません。
その子にとって、何がつらいのかを理解することです。
予定変更が苦手なら、前もって見通しを伝える。
音が苦手なら、静かな場所を用意する。
あいまいな指示が苦手なら、短く具体的に伝える。
集団で疲れやすいなら、一人で休める時間を認める。
好きなことに集中しているなら、それを学びの入口にする。
「なんでできないの」ではなく、「どうすればできるかな」と考えることが大切です。
ASDの子どもは、叱られ続けると「自分は変な子なんだ」「人と違う自分はダメなんだ」と感じやすくなります。
だからこそ、親のまなざしがとても大切です。
「あなたの感じ方には理由がある」
「あなたには、あなたの力の出し方がある」
「苦手なことは工夫すればいい」
「好きなことは大切な才能になる」
そう伝え続けることが、子どもの自己肯定感を守ります。
ASDの子どもは、環境が合わないと疲れやすく、誤解されやすいです。
しかし、環境が合えば、集中力、正確さ、誠実さ、専門性を大きな強みにできます。
大人がすべきことは、その子を無理に多数派に合わせることではありません。
その子の感じ方を理解し、安心できる場所と力を発揮できる方法を一緒に探すことです。
ASDは、欠点だけを示す名前ではありません。
その子が世界をどのように感じ、どのように力を出せるのかを知るための、大切な手がかりなのです。