何かを決めるとき、人の中ではだいたい三つが同時に動きます。
身体の反射。
感情の温度。
頭の説明。
身体は、先に反応します。
胃が沈む。
胸が縮む。
肩が固くなる。
力が抜ける。
まだ言葉になっていないのに、反応だけが出ます。
感情は、遅れて色をつけます。
嬉しい。
嫌だ。
怖い。
寂しい。
ほっとする。
理由より先に、温度が広がります。
頭は、そこに筋を通します。
得か損か。
正しいかどうか。
予想はどうか。
頭の中で整合性がとれて見える説明をしてくれます。
学校や職場では、理由を説明できる判断が評価されやすいです。
早く答える人が、ちゃんとして見えます。
そのぶん、身体の反応や感情の温度は、置き去りになりやすいです。
ズレが出るのは、どれが正しいかの問題ではありません。
三つが混ざって、誰の声で決めたのか分からなくなるときです。
たとえばこういう混ざり方があります。
怖いのに、頭が大丈夫のふりをして背中を押す。
断りたいのに、悪い気がして頷く。
疲れているのに、誘いの通知で肩が落ちる。
怒りが強すぎて、頭が確認を飛ばして結論を出す。
こういう混ざり方は、もっと日常にも出ます。
決めた瞬間は平気なのに、身体だけが重い。
その後味が、あとからズレになります。
読んでいる途中で、身体のどこが反応するかだけ見てみてください。
1 予定が決まったのに、胃が重くなる
休日の予定がすんなり決まった。
家族も納得、空気も悪くない。
自分も笑っている。
なのに、胃の奥が重くなる。
その重さがしばらく消えない。
頭は言います。
私が我慢すれば、断ったら面倒。
ここで波風を立てるのは大人げない。
でも身体は、先に止まっています。
この重さは、嫌だという合図でしょうか。
それとも、ただ疲れているだけでしょうか。
2 誘われた瞬間は嬉しいのに、夜にだるさが来る
久しぶりのランチに誘われます。
誘われた瞬間は嬉しい。
すぐ返事もします。
でも夜、どっとだるい。
寝ても回復しない感じがする。
なぜか明日のことまで重く見える。
頭は言います。
行けば楽しいはず。
断ったら感じが悪い。
付き合いって大事。
身体は言います。
その人が悪いんじゃない。
嫌いじゃないのに、しんどい。
普段の生活でキャパオーバーしてませんか。
今のあなたの容量は、どれくらい空いてますか。
3 優しい言葉なのに、息が浅くなる
あなたのためを思って。
心配してるだけ。
そう言われた瞬間、胸がきゅっと縮みます。息が浅くなる。
頭は言います。
相手は悪くない。
私が敏感すぎる。
考えすぎだ。
でも身体は言います。
今、踏み込まれた。
悪意かどうかは、今は置いておきます。
ただ、息が浅くなる言い方があります。
あなたは、どんな言い方をされると息が浅くなりますか。
逆に、どんな言い方なら息が戻りますか。
4 断れない理由が増えるほど、肩が固くなる
親のこと、子どものこと、仕事のこと。
理由はちゃんと揃っています。
断れない材料が増えるほど、肩が固くなる。
頭は言います。
今は仕方ない。
落ち着いたら変える。
私が頑張るしかない。
身体は言います。
落ち着いたら、を待っている間に固くなる。
その言葉を言うたびに、身体は軽くなりますか。
それとも、さらに固くなりますか。
5 本当は欲しいのに、喉が詰まる
助けてほしい。
寂しい。
やめたい。
そう言いたいのに、喉が詰まります。
言葉が出る前に、笑顔が先に出る。
平気なふりが手慣れている。
頭は言います。
言ってもどうせ分からない。
重いと思われる。
迷惑をかける。
身体は言います。
もう限界に近い。
喉が詰まるとき、何を守っていますか。
関係でしょうか。役割でしょうか。
ここまで読んで、ひとつだけ置いておきます。
身体の反応は、結論ではありません。
合図です。
危険にも鳴るし、変化にも鳴ります。
だから、怖さは本音に見えます。
だから、説明は現実に見えます。
だから、勢いは真実に見えます。
答えは出しません。
確認だけします。
その決め方のあと、呼吸は深くなりますか。
それとも、浅くなりますか。
今いちばんうるさいのは、どれですか。
そして、いちばん無視されているのは、どれですか。