権利というのはみんなに平等にあるべきものとされますが、全員の権利を守っていたら社会は成り立ちません。権利は人の数だけあって、それらが拡大していけば、いつかは他の誰かの権利を侵したり、衝突してしまいます。仕事で言えば、自分が休んだ時は、自分の仕事をカバーしてくれる人がいます。これは、その人が仕事を進めたり休んだりする権利を奪っていることになります。休む権利は誰にでもあるわけですが、その休む権利を行使したら、同じだけ他の人にお返しをして埋め合わせをしていなければバランスが取れません。それができなければ信用を失う結果になります。
権利という言葉は英語の“right”を訳したものですが、“right”を日本語にする際、福沢諭吉は“権利”ではなく“権理通義”という日本語を作りました。「権理」というのは私達が現代において使っている権利とほぼ同じ意味ですが、利益の「利」ではなく、“ことわり”を表す「理」の字を当てています。利益ではなく筋道が正しいかどうかを重視している点が興味深いところです。さらに福沢諭吉はこれに「通義」という言葉を付けています。この「通義」には世間一般に受け入れられている道理という意味があります。