東京大学の英語の入試問題は、問題の量が非常に多く制限時間内に終わらせるのは至難の業であること、読解・文法・リスニング・英作文とあらゆる英語の能力が試されること、付け焼き刃の対策ではどうしようもならないこと、などが挙げられます。
しかしながら、長年変わらない設問もあります。大問1の(A)はやや長めの英文を100字前後の日本語に要約させる問題で、ここだけはどういうわけか、少なくとも20年から30年くらい同じパターンが続いています。
比較的英語ができる生徒を教えるときは、東大1番(A)の英文要約に完全特化した伊藤和夫『英語要旨大意問題演習』をよく使っていました。最近はこの問題集についてこれる英語力を持っている生徒に出会っていませんが。
数ある東大英語の過去問の中でも、特に私が印象深いと感じたのが、2010年の東大前期1(A)です。SFと科学は相互に影響を及ぼし合いながら発展してきたという内容なのですが、読んだことがある方はいらっしゃいますでしょうか。
ではどのような相互関係かというと、ブラックホールのような科学用語がSFのテーマとして用いられ人口に膾炙していく一方、タイムトラベルのようないかにもSFっぽいテーマが実は最先端の科学の研究対象になるといった具合です。英文の下につけた日本語訳は私の意訳です。
科学の進歩にSF的な想像力は大事だし、SFもまた科学から思いも寄らないような新発見、新事実を題材として提供されながら発達してきた、というのが大まかな要約でしょう。
なお余談ですが、この英文でも触れられている通り、誰かが難しい専門用語を何度も口にするときは、何らかの思惑や意図を隠そうとしていると見てまず間違いないです。難しいこと、抽象的なものを、分かりやすく平易に語れるのは、それを自分なりに消化し理解しているからこそです。
東大英語1(A)は単なる入試問題で終わらせるには惜しい英文が満載です。また折に触れて古い問題を紹介していこうと思います。