それでも、まだ生きてる。~第4話~

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小説


「!?」

私は目を見開き、横にいる『龍』を見た。

「・・・しゃべれる・・んですか?」


「・・・・・」

『龍』は無言で、私の隣に鎮座している。


「・・・しゃっべったよ・・・ねえ?」

私はもう一度、聞き返すと、
『龍』は何も言わず、
グルンと翻り、天に昇っていった。


「えっ?えっ? ちょ、ちょっと!」

私は、消えゆくその姿に、
大声で話しかけた。

が、瞬時に辺りの異様な視線に
気が付いた。

私の周りを過ぎゆく人たちに、
目を向けると、誰もが私と
目を合わせないように行き交う。

2歳くらいの子供連れの母親は、
子供を庇うように、私から遠ざけ
離れていった。

私も、その場にいるのが、
いたたまれず、小走りで家路を急いだ。





2017年。 11月。


あれから、『龍』が出てこない。

「・・・話しかけたらいけなかった・・・とか?」
「敬語じゃないと、いけなかった・・・?」

私は、何か自分に落ち度があったのかと、
あれやこれや、考えていた。

「ああああーーー!もう!!!
なんか、言いたいことがあるのかと
思ったら、勝手にいなくなって・・・
余計、気になるわ!!!」

私は、頭を振って気を取り直した。

「あっ!そうだ!倫也に聞いてみよう。」

私は、SNSで倫也に連絡をした。


萌音「近々、時間ある?」
萌音「例の件で聞きたいことがあるんだけど」

一時すると、倫也から返信がきた。

倫也「明日、いつものとこ、12時で。いい?」
萌音「OK」


私は安定のサクサクした
やり取りに「うん!」と頷き、
夕飯の準備に取りかかった。







私と倫也の出会いは、
渋谷のスクランブル交差点の
近くにあるコーヒーショップだった。

友達とハチ公前で待ち合わせを
していたが、友達から遅れると
連絡があり、
近くのコーヒーショップで時間を
潰していた。

そのコーヒーショップは、
ビルの2Fにあり、ガラス越しに、
渋谷のスクランブル交差点、
全体が見渡せる。

私は外を見渡せるカウンター席に
座り、コーヒーを注文した。

時間を持て余していた私は、
隣に座る、30代半ば位の
男性に、ふと目が止まった。

メガネをかけ、パソコンを操作している。

(なんか、この人・・・なんだろう?
この感じは・・・?)

私は、隣の男性から醸し
出されている『何か』を探り出そうと、
インテリ風の横顔を、マジマジと見ていた。


すると、突然、パソコンを操作する男性の
手が止まり、ガラス越しの外の風景に
目をやった・・・と思ったら、
急にこっちを見て、話しかけてきた。

「・・・なにか?」

私はハッとし、男性から目を反らし、
外の風景を見つつ、頭を下げた。

「あっ、すみません・・・
つい、見とれてしまって、、、」

自分の発した言葉に、
再び、ハッとし、恥ずかしくなった。

「見とれてたん・・ですか?」

「あっ、・・いや、あーその・・・」

私がシドロモドロになると、
フッと吹き出すように男性が笑った。


私は、その笑顔に見覚えがある気がして、
またもや、見とれてしまった・・・

「あー・・、仕事がやりずらく
ならない程度に、、程々に見てください。」

男性は笑いながら、
少し手をかざし、またパソコンに
向き合った。

私は恥ずかしくなって、
2度と、隣を見ることはなかった。


そのあと、
待ち合わせ場所に到着した
友達と合流するのだが、
その時の私は、色々あって、、、

友達が気晴らしにと、
セッティングしてくれた合コンに、
促されるまま、ついて行くのだが、、、

なんと、そこに居たのは、
例の男性で、、、それが、倫也だ。




そんな回想をしているうちに、
夕飯の準備が整った。

「きーくん、けいちゃん、ご飯だよー」

私は、子供たちに声をかけ、
いつもある、食卓の風景を眺めた。




第5話へ   つづく。

















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