それでも、まだ生きてる。~第3話~

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小説

2017年。  10月。



病院の外来で、私を呼ぶ声がする。

「石嶺さーん、石嶺萌音さーん」


私は遠くで自分の名前が呼ばれるのを、
微かに感じながら、この間の倫也の話しを、
思い出していた。





私は、2ヶ月前に死の淵にいた。

思い返せば、その2週間ほど前から、
軽い頭痛が起こっていた。

元々、頭痛持ちでもなかったので、
そのうち、治るだろうと思っていたが、
日に日に痛みは酷くなり、
これはヤバいんじゃないか?と
思ったときには、呂律が回らなくなっていた。

さすがに病院に行かなきゃ!と、
思ったところから、記憶はない。


倒れていた私を母が見つけ、
そのまま救急搬送された。

病名は「くも膜下出血」

手術を試みたが、意識が戻らず、
現実と空虚の境目にいた。

私は、小学2年と4年の息子がいて、
シングルマザーで暮らしている。

記憶があるのは、
暗闇とこの子たちの泣き叫ぶ声・・・

と、目が覚めたときに聞こえた

『約束は護るのだぞ。』の言葉。




「・・・・・約束って?なに?」


それに、誰だったんだろう?



何もわからないまま、
入院生活も1ヶ月を過ぎた頃。

突如と現れた、謎の『物体』に、
私の思考回路は、
とうとう、ショートしたのだな・・・
と、思っていた。

が、お見舞いに来た、倫也の口から、
驚きの事実が・・・


目の前を縦横無尽に泳ぎ回る
『龍』の存在が、倫也にも見えていたのだ。

それから、ひとつ一つ、
倫也が見えている世界の話しを
聞くのだけれど、
これまでの私を!生き方を!
全否定することからしか、
飲み込めない、この状況を!

はじめは、心底、恨んだ・・・








「石嶺さん!」

外来のベンチに座っている私の肩を
ポン!と叩き、看護士の堤さんが声をかけた。

「さっきから呼んでるのに、どうしたんですか?」
私は、ハッと我に返った。

「ご、ごめんなさい!ボーッとしてて・・・」

と、慌てたそぶりで頭を下げ、
看護士さんに促されながら、
診察室へ向かった。


まぁ、あの時の倫也の、 
言葉には驚かされたが、、、


最近では、私の周りを泳いでいる
『龍』にも、、、慣れてきた。


どうやら、この『龍』は、
動物や赤ちゃんには、見えているようだ。

倫也いわく、
純粋な波動には、共鳴するらしい。

確かに、すれ違う赤ちゃんは、
ジーッと『龍』を目で追っている。

その様子を確認するたびに、
これは、現実なのだと思い知る。


診察が終わり、
夕飯の買い物を済ませ、
家路を急ぐ途中に、
ある光景が目にとまった。

オープンカフェのテーブルに、
座る一組のカップル。

男性は柔和な感じで、優しそう。

対面にいる女性は、
スゴく興味深げに、その男性の話を、
聞き入っている様子だった。

それだけなら、気には止めないが、
私の目にとまったのは、その男性の後ろにいる
天使の格好をしたキレイな・・・悪魔???

なぜ、その時、悪魔と思ったのか、
自分でもわからないが、、、

その天使の格好をした悪魔は、
こっちに気が付くとニヤッと
口を緩ませ、煙のように消えた。


「えっ?・・・今のは何?!」

私は急な出来事に、
瞬きが止まらないでいると、
泳ぎ回っていた『龍』が、
耳元で呟いた。


「最近、『魔』が増えてるな。」

「えっ?『魔』???やっぱり、あれは悪魔なの?!」



・・・・・・って!

『龍』が、しゃべったーーーーーー!!!(汗汗汗)





第4話へ   つづく。

















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