❤️永く愛すればこそという 、砂漠の民の叡智❤️

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〜永く愛すればこそという砂漠の民の叡智 〜

まるでキャラバンのトランクのような
革張りの楽器ケースの
サイドロックがパチンパチンと外される。

砂ぼこりを払って蓋を開けると
18才の純情が2010年の熱風と共に蘇った。

13年前の気配をそのまま閉じ込めたケースの中。

当時初めて出会った世界には、
音大進学を考えていたり
ソロコンテストで優勝する子もいて、
渡り歩く術を知らないわたしは
途方もない砂漠に来たかのようだった。

砂漠の片隅で一旗あげようと
必死にもがいていたあの頃。

たとえ熱帯夜になったとしても、
思春期特有の鋭く、熱を宿した瞳で
楽器に向き合っていた。

それほど夢中になっていたからこそ、
どんどん下手に不恰好になっていく
自分を知りたくなくて楽器から遠ざかった。

わたしの青春の日々を詰め込んだ楽器ケースは
徐々に徐々に、砂の中に埋もれていったのだ。

そんな13年もの空白を経て
目の前に再び現れたサクソフォーン。

わたしは失ったものを一つひとつ
確かめるように楽器に触れていく。

…不思議。

…なんとも摩訶不思議な感覚だった。

こんなに時が経ったのに、
楽器が身体に馴染んでいく。

触れた瞬間、あぁそうだよね。
そうだったね。間違いなくあなただった。
と、分かるのだ。

失くした身体の一部を取り戻し、
一つになっていく感覚。

そんな感覚をわたしはすっかり忘れていた。

「変わってしまったわたしを
 受け入れてくれるの?」

その優しさと大きな愛に有難い気持ちと
少し申し訳ない気持ちが入り混じった。

ー音楽は心の泉。

いつだってわたしの心を潤し、
想いを湧き上がらせる。

今わたしが持っている感性だって
音楽によって築かれたものだ。

この楽器も手放して、
他の誰かに愛してもらえた方が良いのかも
と思ったけれど、どうやらできそうにない。

他でもないこの楽器はわたしの一部で、
時間が経っても愛おしくてたまらなかった。

楽器はモノでしかないけれど
それ以上に想い、愛することができたら
モノを取り囲む世界が優しくなる気がする☘️

わたしたちを乗せた
資本主義のベルトコンベアーは
生産と消費を永遠と繰り広げていく。

そんな渇いた世界に
水のように愛を注げるモノに出逢ってこそ、
世界は潤いに満ちた場所になると思う( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )✨

これからわたしもこの楽器と一緒に
悠久の時を旅していくの🌸
今度はゆっくり、永く永く愛していくよ。

ケースの中にしまったあの砂漠の砂時計は
今、ようやく時を刻み始めた。




▼時にCA、時に吟遊詩人なmaimaiと話す⸜❤︎⸝

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