成年後見人が解説:空き家と成年後見制度編【第1回】「親の家」が空き家になる前に知っておきたい成年後見制度の基本

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マネー・副業
皆さん、こんばんは!
アステラ法務コンサルティングの「たくえい」です。

私は、成年後見人でもあり、二級建築士、遺言執行士、終活アドバイザーという4つの異なる専門性を活かしながら仕事をさせていただいてます。

これらのことから、これまで多くのご家族が直面する「親の家」の問題、特に空き家問題について、多角的な視点から解決策を提示できることに気づきました。

そこで今回から、私たちが直面する「空き家問題」と、その解決に不可欠な「成年後見制度」に焦点を当てた新シリーズを開始します。このシリーズでは、全15回にわたり、私が持つ4つの専門知識を組み合わせながら、具体的な事例や対策をわかりやすく解説していきます。

まず、第1回目のテーマは、「親が元気なうちにこそ考えるべき成年後見制度の基本」です。終活アドバイザーとしての視点から、成年後見制度の重要性と、最近の制度改正動向についても詳しくお話しします。
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              登記事項証明書(編集しています)

終活アドバイザーがなぜ「成年後見制度」を勧めるのか

終活と聞くと、多くの方は遺言書の作成、お墓の準備、身辺整理などを思い浮かべるでしょう。もちろん、それらは非常に重要です。しかし、終活アドバイザーとして多くのご家族と接する中で、もう一つ、絶対に避けては通れないテーマがあることに気づきました。それが、「親の判断能力が低下した後の財産管理」です。 

特に「親の家」に関しては、この問題が空き家問題に直結します。

想像してみてください。もし、親御さんが認知症になり、自分で判断を下すことが難しくなった場合、その家はどうなるでしょうか?

多くの場合、親の財産は「凍結」された状態になります。親自身が所有者であるため、たとえ子どもであっても、勝手に家の売買や大規模なリフォームを行うことはできません。親の意思確認ができないため、不動産の契約は法的に成立しないのです。

このような状況は、様々な問題を引き起こします。

家の老朽化が進む:必要な修繕ができず、家の劣化が進みます。雨漏りや設備の故障が発生しても、適切な対応ができなくなります。
固定資産税の支払い滞納リスク:親が自分で税金の支払いを忘れてしまい、滞納につながるリスクが高まります。
資産価値の低下:放置された家は、どんどん資産価値が下がっていきます。将来的に売却しようとしても、買い手がつかない「負動産」になってしまう可能性があります。

これらの問題は、最終的に家を「負動産」化させ、ご家族を苦しめる原因となります。そして、親が亡くなった後には、誰も住む人のいない「空き家」として放置されることになりかねません。

「親の家」を守り、ご家族の負担を減らすために、親が元気なうちにこそ、成年後見制度の利用を検討するべきなのです。これは、単なる法律の話ではなく、家族の未来を守るための「終活」の一環なのです。

成年後見制度とは何か?〜空き家対策としての基本〜

成年後見制度とは、認知症や精神障害などにより、判断能力が不十分になった方を法的に支援するための制度です。この制度を利用することで、「成年後見人」が選任され、本人の代わりに財産管理や契約行為などを行います。
では、具体的に空き家問題とどのように関わるのでしょうか?

成年後見人ができることとして、以下のような点が挙げられます。

財産管理:親の預貯金や不動産(家)などの財産を管理します。固定資産税の支払いなども代行できるため、滞納リスクがなくなります。
契約行為:家をリフォームしたり、売却したりする際に、親の代わりに法的な契約を結ぶことができます。これにより、必要な時に適切な処置が可能になります。
本人の生活・療養看護に関する手続き:介護サービスの契約や医療費の支払いなど、親の生活を守るための様々な手続きを代行します。

この制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」の大きく二つに分かれます。

1. 法定後見制度

すでに判断能力が不十分になった方が利用する制度です。家庭裁判所への申立てを通じて、本人の状況に応じて後見人、保佐人、補助人が選任されます。

後見人:判断能力がほとんどない場合に選任されます。原則として、本人の財産に関するすべての法律行為を後見人が行います。
保佐人:判断能力が著しく不十分な場合に選任されます。重要な財産行為(不動産の売買など)については、保佐人の同意が必要です。
補助人:判断能力が不十分な場合に選任されます。特定の法律行為のみ、補助人の同意や代理権が必要となります。

法定後見制度の最大のポイントは、「家庭裁判所が後見人を選任する」ことです。つまり、家族が必ずしも後見人になれるわけではありません。弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選任されるケースも多く、その場合は専門家への報酬も発生します。

2. 任意後見制度

こちらは、親が元気なうちに、将来に備えて利用する制度です。親が自分で「誰に」「どのような支援をしてもらうか」を決め、公証役場で公正証書を作成します。これを「任意後見契約」と言います。

親の判断能力が低下した後、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任することで、任意後見契約の効力が発生し、契約した人が「任意後見人」として活動を開始します。

この制度の最大のメリットは、「誰に後見人を任せるか」を自分で決められることです。信頼できる家族や専門家をあらかじめ指定できるため、より安心感があります。

後見制度の改正と成年後見人の「辞任」〜空き家管理の新たな選択肢〜

近年、成年後見制度は時代の変化に合わせて見直しが行われています。その中で、特に注目すべき改正が「成年後見人の辞任」に関する規定です。

これまでの後見制度では、一度後見人に就任すると、特別な事情がない限り、途中で辞任することは非常に困難でした。このことが、後見人となることに躊躇する一因となっていました。

しかし、最近の制度改正により、特定の条件を満たせば、家庭裁判所の許可を得て辞任できる道が広がりました。

これは、空き家問題において非常に重要な意味を持ちます。

改正前の課題:
・親の空き家を管理する後見人になったものの、遠方に住んでいるため物理的な管理が難しい。
・空き家の売却やリフォームが終わり、後見人としての主要な役割が完了した後も、ずっと後見人を続けなければならない。
・高齢になった後見人自身が、健康上の理由で継続が難しくなる。

こうした状況でも、以前は簡単に辞任できませんでした。しかし、改正によって「正当な事由」として、これらの状況が認められるケースが増えることが予想されます。

例えば、空き家を無事に売却し、売却代金も管理できるようになった場合、後見人としての役割が一段落したと判断され、辞任の許可が下りやすくなる可能性があります。

この改正は、私たち終活アドバイザーにとって、より現実的なアドバイスを提供できるようになったことを意味します。つまり、「空き家問題解決のための一時的な役割として後見人を引き受け、問題が解決したら辞任する」という選択肢が現実的になったのです。

これは、後見人となることに躊躇していたご家族にとって、大きな後押しとなるでしょう。
ただ、最終的に決定するのはあくまで「家庭裁判所」なので、その点を忘れてはいけません。

終活アドバイザーとしての提言:なぜ「任意後見制度」なのか、そして「辞任」も視野に

私は終活アドバイザーとして、特に「任意後見制度」の活用を強くお勧めしています。

えっ、法定後見制度じゃないの?

なぜなら、親が元気なうちにこそ、将来のリスクに備えることが、ご家族の負担を減らし、親の意思を尊重する最善の方法だからです。
任意後見制度を利用することで、以下のようなメリットがあります。

親の意思が尊重される:親が自分で後見人を選び、どのような支援を求めるかを具体的に契約できるため、親の意思が最も尊重されます。
空き家問題の計画的な解決:将来、もし家が空き家になりそうになった時、どのような対応をするか(売却、リフォーム、賃貸など)をあらかじめ契約に盛り込むことができます。
ご家族の安心感:親が元気なうちに準備をすることで、将来「どうしよう…」と困ることがなくなります。ご家族全員が安心できる基盤が築けます。

さらに、先述の成年後見人の辞任に関する改正を踏まえると、任意後見契約を締結する際に、「空き家の売却が完了した場合、後見人としての役割を終了する」といった条項を盛り込むことも検討できます。これにより、後見人となるご家族は、「いつまでも責任を負い続ける」という重圧から解放される可能性が高まります。

「親の家」は、単なる建物ではありません。そこには、ご家族の思い出や歴史が詰まっています。

その家が、親の判断能力低下によって、やがては誰も住まない「空き家」になってしまう…そんな悲しい結末を避けるために、今からできることがあります。それが、親が元気なうちに「任意後見制度」について話し合い、準備を進めることです。

まとめ:空き家問題は「親の判断能力」問題と一体である

今回のテーマでは、空き家問題が、実は親の判断能力と密接に関わっていることをお伝えしました。そして、その問題に備えるための強力なツールが「成年後見制度」、特に「任意後見制度」であることを強調しました。

空き家問題の原因の一つ:親の判断能力低下により、家の管理や売却ができなくなる。
解決策の第一歩:親が元気なうちに、成年後見制度について知ること。
終活としての最善策:任意後見制度を利用し、親の意思を尊重しつつ、将来に備えること。

次回のテーマは、「成年後見人が見た、空き家『負動産』のリアル:建物の危険度と維持コスト」です。私の建築士としての視点も交え、より具体的に空き家の問題点に迫っていきます。どうぞお楽しみに。
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