怪談話?「黒いソックス」

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お盆が終わっても我慢できないくらいな暑い日が続いていますね、皆さん熱中症にはくれぐれも気を付けてくださいね、

今日は夏らしい話をしていきますね。
私が以前勤めていた工場での話なんですが、工場ってお盆休み前ってお客さんからの駆け込み発注とか休み明けから使う部品を作ったりと結構忙しい時期なんですよね、毎年このころは残業したり休日出勤したりしてそれからお盆休みを迎えるってのが毎年恒例になっていたんですが

そうやってみんな忙しく働いてるときにいつも元気で明るい仮に佐藤君ってしますね、その佐藤君がどうも元気がないんですね、お昼休みにそれとなく聞いてみたんですよ

「どうしたのいつもの元気がないじゃんか」って
そうしたら佐藤君さみしそうにこう言うんですよね「実は田舎で世話になっていた知り合いのおじさんが亡くなって明日がお葬式なんですよ、片親の私にいつも優しくしてくれたおじさんだったんで最後に顔だけでも見ておきたかったんです、でも工場が忙しい時に知り合いのおじさんのお葬式に行くなんて言えないので…」そんなことが原因で佐藤君元気なかったみたいです。


こんなこと言うとあれなんですが、この佐藤君それほど重要なポジションで働いてるわけではないんですよね、どちらかというとドジなタイプでね簡単な機械の設定を間違えてそのまま製造しちゃって結局作り直したりしてかえって時間がかかっちゃうなんてこともあるようなタイプの子なんですよ、けどねこの子のいいところは無遅刻無欠勤いつも元気で明るいのが取りえでみんなの弟的なムードメーカータイプの子なんですよね、ドジしても憎めなくてね´いいよいいよ´なんてみんなで手伝って助けるみたいなね、

そんな佐藤君ですから言い方悪いですが一日二日いなくったって製造スケジュールには影響しないんですよね、話を聞くとその亡くなったおじさんの影響でこんないい子に育ったんだなと思うとなんだか一目おじさんの顔を見せてあげたくなったんですよね、そこでみんなにこのことを話して工場長にみんなでこの子に明日一日休みを上げてくださいってお願いしに行ったんですよ

そこは工場長も佐藤君がどんな子かどういったポジションかって分かっていますからね、みんながそういうなら忙しい時期で夏休み前だけど有給扱いにするからお葬式に参加して最後のお別れをしてきなさいって言ってくれたんですね。

そんなわけで佐藤君その日の夜から通勤に使ってる車で3時間かけて生家があった町まで帰って行きました。

だけど佐藤君あくる日の朝定時に出勤してきたからみんな驚きました「あれっ昨日行かなかったのか?」みんなでお願いまでしたのにそう思って聞くと佐藤君おじさんとはきちんとお別れしてきたのでお葬式には参加せずに今朝こっちに戻ってきました、皆さんありがとうございましたっていうもんでみんなそうか、ゆっくりしてくればよかったのにと、でも忙しいと思ってこうやって来てくれたんだなと佐藤君らしいなと思いました、しかしその佐藤君がお昼休みの食堂ででこんな話を聞かせてくれたんですよ!



「あの日社宅に返って身支度して帰ろうとしたんですが黒いソックスがないことに気が付いたんですよ、帰りの道すがら買っていけばいいかと思って車を走らせてたんですが、腹が減ってたもんで途中でファミレスによって飯を食ってるうちにソックスのことをすっかり忘れちゃってて、ビジネスホテルで着替えようとしたときに思い出したんですね」

佐藤君の家はさっきも言ったように片親でしてお母さんだけなんですがそのお母さんは佐藤君のお姉えさんと一緒に暮らしているんで佐藤君の田舎といってもこの村には佐藤君の家はもうないんですね、

だから佐藤君今日はビジネスホテルで一人で宿泊することになってるんですね、そこで着替えようとしてソックスがないいってなったんですね、ここに来るまでに車で3時間途中で晩飯食ってたこともあってけっこう遅い時間になっちゃてるんですね、田舎なもんで近くにコンビニもないここもビジネスホテルなんて看板には書いてますが外観は古-い民宿です、おばちゃんが一人でやってるようなね主に渓流釣りする釣り人相手の古い宿なんですよ。


もうとっくにお通夜は終わってるんですが今日は一晩夜伽するだろうから行けば誰かいるだろうから遅くなったけどとにかく行くだけ行ってみよう、そこでおじさんの顔をゆっくり見て最後のお別れをしておこうと佐藤君思ったわけです。

でも恰好だけはきちんとしていきたかったんで、少し面倒だけどちょっと遠い国道まで出てコンビニでソックスだけは買ってちゃんと履き替えてから行こうとね、佐藤君真面目ですからねそうやって暗い中車を走らせてコンビニに行ったんですって、国道のコンビニって言っても田舎のことですからねこんな夜中に店員以外誰もいやしないし節電の為か蛍光灯も飛び飛びに点いていて何となく薄暗い、駐車場にも佐藤君の車があるだけで町のコンビニに比べて何となく寂しい

佐藤君サッサっとソックスかって戻ろうとレジにお会計に持ってたら店員さんが「あのもしかして○○さんのお葬式に行かれるんですか?」そんなことを聞いてきたそうです。
佐藤君びっくりしちゃってね、だって村からコンビニまでそこそこ距離があるんです、いくら佐藤君が夜中に黒いソックス買ったからってお葬式に行くのかなんて普通聞きませんよね!佐藤君適当に返事してまた暗い道を戻ったそうです

車を走らせていたら夜道に人がいる「なんでこんな夜中にこんなところに人が歩いてるんだ!」って佐藤君思ったんですが急いでますんでね狭い道をゆっくりその人を追い抜いていこうとしたその瞬間、車をババンってたたく音が!
追い抜くときにどこかひっかけたかと驚いて車を停めて慌てて降りたら


「佐藤君じゃないか?」その人がそういうもんでよく見ると佐藤君の小学校の時の佐々木先生によく似てる人だったんで、「佐々木先生ですか?」佐藤君も久しぶりですからおそるおそる聞いててみたら「やっぱり佐藤君か、久しぶりだな!」って、
横顔に面影があったもんで思わず車を叩いちゃったって言うんですよ、田舎の人はこんな感じでのどかっていうかおおちゃくというかまあ何事もなくて佐藤君ホットして「お久しぶりです」ってどうしてここにいるかとか佐々木先生に説明して少し思い出話もして、佐々木先生がいつも夜中散歩してるっていう話もどうして夜中散歩してるのかも一通り聞いてるうちに宿に戻ったころにはすっかり遅くなっちゃいました、

おじさん家に早くいってゆっくりお別れしたいのにと思って早く着替えておじさんの家へ急ごうと身支度しようとふっとホテルの部屋の机の前の鏡に自分の姿を映そうと前に立った瞬間「ウェォッ!」って佐藤君思わず息をのんだ!

佐藤君の服のあちこちに虫がついてたんです!佐藤君の車最近エアコンが壊れてましてね暑い夏なんですが窓を開けて走ってるんですよ、田舎道を走ってるときにへんな虫があっちこち張りついたみたいです。

よく見ると顔にもなんか汁がついてるし夏にエアコンなしで車走らせて佐々木先生と立ち話だったんで汗もかいてるし、もうどうせ遅くなっちゃたし最後のお別れなんだからお風呂に入ってさっぱりしてから行こうと考えたそうです。

というのもこの宿小さな宿のくせに大浴場があるんですよ、宿帳書くときに女将さんの座ってる後ろに
´かけ流し温泉大浴場あります´って
ポスターが貼ってたのをこんな小さな宿でも大浴場があるんだと思って佐藤君何とはなしに見てたんですよ、

かけ流しってことは夜中でも入れるんだろうと佐藤君着替えもって大浴場に向かったんですね、佐藤君の部屋はニ階建ての二階の階段上って奥の部屋なんですがみたところ二階には四部屋しかないし夏休み前の田舎の民宿に毛の生えたホテルですから佐藤君以外にお客さん中居る様子もない、だったらどうして俺は奥の部屋なんだって?

どうせなら階段のすぐそばのほうが何かと便利なのにと思ったわけなんですがとにかく今はお風呂へ行こうと階段のほうに向かって歩いていたら

コツ コツ  コツ って階段を誰かが上がってくるんですよ

おかしいなこんな夜中に誰だろう泊まってるのって俺だけのはずだし女将さんがこんな時間になんか用でもあるのか?第一随分年寄りだったからこんな時間はもう寝てるだろうし、誰だろうな?

そんなことを思っていましたが階段を上ってくる足音はどんどん迫ってきます、少し怖い気もしましたが佐藤君も急いで汗を流しておじさんの家へ行かなくちゃいけませんので思い切って階段に向かって行ったそうです、そして階段まで来ていざ降りようと下を向いたその時です!


そこには佐々木先生が階段を昇ってくる姿が!

「佐藤君これ落としたよ」とコンビニの袋を持っていました、どうやら車を降りた時にソックスの入った袋を落としたみたいでした
「ビジネスホテルに泊まってるって言ってたからここしかないと思って届けに来たよ」そう言ってコンビニ袋を差し出してくれました。


佐々木先生にお礼お礼を言って再びお別れの挨拶をしてからやっとお風呂に向かうためにとりあえず玄関に行き案内板を探しました、案の定矢印の書いた案内板を見つけて矢印に沿って暗い廊下を歩きだしました、

二階は四部屋しかなかったので一階もそれほど広くないと勝手に考えていましたが意外に廊下は奥へと続いていました、間口は狭く奥へ深いというウナギの寝床といった作りでしょうか、矢印に沿って行くと突き当りに引き戸があり戸の上に大浴場と書かれた札がありました、その戸をガラガラと開けるとなんとまた廊下が続いていました、廊下といっても渡り廊下のような作りで外へと続く廊下でした「まだ向こうなのかよ案外この宿って広いんだな」と独り言を言いながら歩いて行ったそうです

やっとそれらしい建物が見えたそうですが建物といっても板がで四方を囲んだだけの脱衣場だったそうです。やっとたどり着いて着ているものを脱いで脱衣かごに放り込んで浴場の戸をガラガラと開けた目の前に広がった信じられない光景に佐藤君思わず声も出なかったそうです!


そこにはなんと見慣れた佐藤君の車があったそうです、そうですそこには大浴場なんてなかったんです佐藤君の車がポツンと止まってるだけだったんです。
真っ裸でしばらく自分の車を見つめていたそうです!


後で聞いた話ではお客さんも減ってお金もかかるので大浴場はつぶして駐車場にしたそうです。
廊下と案内板は面倒なので外してないとのことなんですがこういうこともあるのですぐに外さないとねと女将さんも笑っていたそうです。

部屋に小さな浴室があったのを思い出してとにかく汗を流さないとと焦った佐藤君は部屋に帰って早速シャワーに向かったそうです、何しろ慌ててましたんで服を脱いで一目散に浴室へ飛び込んだ佐藤君、汗もかいていたし何しろ暑い日だったので水を頭からかぶってすっきりしようと蛇口をおもいっきりひねった瞬間「ギャーッ!」


シャワーから出てきたのはなんとお湯でした

後から聞いたそうですが元々は温泉がメインの宿だったのが泣く泣く大浴場を占めた時に先代のご主人がせめてもと各室のシャワーから源泉から引いたお湯が出るようにしたらしいです。
水だと思ったのがお湯だったのでびっくりしただけでシャワーからの温泉はちょうどいい湯加減だったらしいです。


そんなこんなでやっとのことでお通夜へ行く身支度が整ったのはもう真夜中になっていました、それでも佐藤君おじさんに一目だけでもと元大浴場の駐車場に止めてあった車に乗って途中でまた佐々木先生とすれ違いながら(先生一晩中歩いてるのかな?)なんとかおじさんの家にたどり着くことができました、

おじさんの家は元々このあたりのお百姓さんをまとめていた家柄でお侍さんの時代にはこの地方のお殿様も狩の休憩に使っていたという由緒がある大きなお屋敷ですから家の前に車を停めるなんてことは出来ません、なのでおじさんの家の周りの長い塀の外に車を停めて入り口の門まで歩いていくんですがこれも結構歩かないと門までたどり着けないくらいのお屋敷です。

しかし代々面倒見のいい家系なのかおじさんもこの家のことも悪く言う人はいませんでしたし、おじさんはみんなに大変親しまれて村長の声もありましたがこれはいつも断っておられました。

それくらい人望があったおじさんのお通夜ですがさすがにこんな夜中では家の人が数人夜伽されてるだけだろうと、おじさんの顔を見たら挨拶をして宿に戻って少し眠って明日の葬儀に参列しようと思って門に向かって行ったそうです。
そうして門の入り口についた時に佐藤君びっくりした!

なんと門の方から玄関に向かって大勢の人が歩いてるんですよ、こんな夜中までまだこんなに沢山の人が集まってるのか?いくらおじさんが人望が厚かったからっていくら何でももう明け方近い時間なのに?そう思って見て見るとなんだかこの人たちの動きがおかしい、なんだかフラフラユラユラしている歩いてるって感じじゃない、それにこの人たち同じ方向に向いてるみたいだし話してる感じでもないなによりこんなに大勢いるのに話声一つ足音1つ聞こえやしない、そう思ってあらためて足元の方に目を移して佐藤君腰が抜けそうになった!


ここにいる人達みんな足がない!それどころかよく見ると手も頭もない!

暗いところで大勢の頭も手も足もない人達が玄関の向かってユラユラフラフラしてるんですよ!

佐藤君ギャーって叫んで逃げ出したかったんですがね、でもおじさんに逢いたい気持ちも強い、冷静に考えればこの人達だってきっと面倒見の良かったおじさんやこの家の先代の主達に世話になったことのお礼に来てるのかもしれないし悪いものじゃないかもしれない、ここはひとつ勇気を奮っておじさんの枕元まで行こうと決心してその頭も手も足もない人達の行列に向かって行ったんですって、そこで佐藤君が見たのはやっぱりそれは人じゃなかったんですって!


その行列はなんと無数のTシャツやブラウスが吊ってあったんですって。

後で聞いたところによるとおじさんの葬式にたくさんの親せきが集まったもんで洗濯物を干すところがなくて玄関のわきの松の木から松の木にひもを通してそこに洗濯物を干していたそうです。

佐藤君おじさんの顔見たらホッとしてひとしきりお別れして葬儀には出ずに帰ってきたそうです。

佐藤君からこんな話を聞かせてもらいました。
いかがでしたか残暑厳しい暑さが少しは怖さで涼しくなりましたでしょうか?
それではまた面白いお話が聞けたらご紹介しますね。
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