『読書講座で生徒さんといっしょに読んだ本のうち、とくに感銘を受けたものを紹介します。』
※読後感を書いたため多少ネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。※
稲垣栄洋さんの著作と言えば、中受の国語では非常によくお目にかかるものの1つ。
中でもこの『はずれ者が進化をつくる』(ちくまプリマー新書)は、高度な内容をわかりやすく説明していておすすめです。
たとえば「三時間目 『区別』とは何か?」には、こんな記述があります。
東京や大阪も富士山とつながった大地にあります。富士山の一部かもしれません。それどころか、富士山の地面は、海の底へとつながっています。地形だけ見れば、富士山は北海道や沖縄とつながっているとも言えるし、太平洋を越えてアメリカ大陸ともつながっているとも言えるのです。
引用:稲垣栄洋『はずれ者が進化をつくる』(ちくまプリマー新書)
ことばで「富士山」と言われると、そういうものが他から独立してはっきり存在しているかに思えます。
しかし実際には、あるエリアに見られる大地の盛り上がりをそう名付けたにすぎません。
以前、小論文の講演のため地方の高校に出かけた際、在来線の車窓から見える巨大な山の眺めに生理的な怖さを感じたことがあります。
山と言われれば山以外の何物でもないわけですが、一度名前を取っ払って考えれば、そこにあるのはとてつもない物量で迫る大地の隆起です。
地理に不案内で山の名がわからなかったのもあり、"名付け=区別"以前の、あるがままのヤマの姿が一瞬かいま見えたものかもしれません。
さて本に戻れば、「ナンバーワンかオンリーワンか」をめぐる論争に、自然界はとっくに明確な答えを出していることなども紹介されています。
9章から成る本書のどこに感激するかで、読み手の興味のあり方が浮き彫りになる──そんな名著ではないかと感じました。