「眼鏡処方の手順で重要視するべきポイント、失敗しない着目点5選」ということで、まず大きくわけてこちらになります。
・問診でおおまかな主訴を読み取る
・裸眼視力とKB視力を確認する
・完全矯正値を出す
・仮枠装用の目安
・クロージング
1つ目
・問診でおおまかな主訴を読み取る
眼鏡処方の半分以上はこの「問診」で決まります。
例えば僕はよく測定を「迷路」で例えるんですけど、この迷路のゴールが「お客さんの望みの見え方」として、
僕らはそのナビゲーターなわけです。
この時に主訴を深掘りすることは、迷路の全体像を上空から見て、ゴールへ行くにはどのようにしたらいいか?を最短にする上でとても大切なんですよね。
これをせずに迷路に入った場合、リードが僕たちでもお客さんでもなくなるので、ただの初めましてさん2人がなんとなく迷路に入るようなものです。
そうなれば眼鏡処方の精度が落ちたり、スピードが遅くなるのは必然ですね。
ですので、問診では「しっかり聞く」ということが大切になってくるのです。
ここで言う「しっかり聞く」とは、例えば一般のお客さんは眼鏡の認識として「遠く」や「近く」なんていう認識はほとんどないんですよ。
僕たち眼鏡測定する人からすれば、「明視域」をベースに考えるのに対して、一般の人は「視力」という認識で「よく見える眼鏡」と考えます。
ここの壁はとても大きいものですが、なるべくわかりやすい質問をすることで、この壁は取り除かれていきます。
よくある、わかりにくい質問は次のとおりです。
「遠くと近くでどこが見えにくいですか?」
「運転やパソコンはしますか?」
などです。
一見普通の質問で、お客さんの生活環境を問診しているように見えますが、この質問でお客さんが考えていることは、
「遠く?どのくらい遠く?、近く?テレビくらいの近くは見えて、まぁパソコンもするけど、」
といった感じで質問の意図がわかっていません。
例えばこんな質問が有効です。
「今の眼鏡はどこが見えにくいですか?」
「新しい眼鏡は前の眼鏡と比べてどうしたいですか?」
この「比較」というものがとても重要で、全てのベースとなります。
この質問では、何に困って眼鏡を作りに来たのかをピンポイントで聞いているので、お客さん目線での「遠く」や「近く」を聞き出すことができます。
仮に違う返答をされた場合にも、同じ質問を繰り返すことで、遠くや近くがどこからどこまでなのか?の意味を考えてくれるようになり、
処方する時にもお客さん自身も「明視域」を意識して眼鏡を使ってくれるので、処方の失敗を防ぐことができます。
もちろん「KBがない場合」や「初めての眼鏡」であったとしても、
およそ普段どんな見え方をしているか?を思い出してもらうために「比較」は大切です。
2つ目
・裸眼視力とKB視力を確認する
測定に入ると必ず確認するのが、裸眼での片眼視力、両眼視力、コンタクトならコンタクトの片眼視力と両眼視力、眼鏡での片眼視力と両眼視力です。
先ほどの「問診」でもあった「比較」をするために絶対に必要な確認です。
これ、けっこうベテランになるほどめんどくさがってやらなくなるので注意ですね。
処方理由や処方したあとの視力をきちんと書くことで、お客さんにも説明できますし、
仮に「ちょっと合わなかった」と言った場合でも再測定の判断材料になるからです。
僕はこういう細かなところにその人の「責任感」が出ると思っているので、省いてはいけないところを省くことは「怠慢」だと思っています。
もしあなたの周りで省いている先輩がいたらおそらく処方交換が多かったり、お客さんに「眼鏡が合わない」とよく言われているのではないでしょうか?
3つ目
・完全矯正値を出す
いろんな測定方法があると思うので、完全矯正値に関しては多少のばらつきはあるでしょう。
特に価格の高いレンズは完全矯正値をベースにしても歪みが少なかったり、そこまで慣れにくくないみたいですしね。
しかし、低価格帯のレンズでは中々そうも言ってられないので完全矯正値はあくまで「今のデータ」として考えます。
大切なのは「過去のデータ」と「今のデータ」を比べた時に、今回の主訴にどれだけ近づけられるか?
また「どれだけ慣れやすいか?」が大切です。
僕の眼鏡処方は「ダイエット」だと考えています。
例えば、長年使っている眼鏡(長年何もしてこなかった体)から見えやすい眼鏡(シェイプアップすること)に何の違和感もないわけないじゃないですか?
年齢と共に人の脳は「変化」を嫌う体質になります。
これは人類が生存する為の本能なので仕方のないことですが、この変化と「希望の見え方」を簡単に出来ると思ってはいけないんですよね。
「望む見え方」にしたいけれども、つらくてかけることが出来ない眼鏡は何の意味も持たないからです。
4つ目
・仮枠装用の目安
仮枠に入れる度数の目安はKBがあるなら、そこからどこをどうしたいのか?
を問診で聞いているはずなので、KBと最高矯正値の数値を見比べて変化させます。
その時、仮枠装用の目安で絶対にすることは、左右バランスの決定です。
これは今までのバランスをキープして度数を変化させるのか?
それともバランスを整えるのか?
これをまずベースとして決めます。
なぜなら、度数が何となく決まっても「左右バランスが逆転」していたり、説明もなく今のバランスで変化させることで、「バランスを整えて欲しかった」などの説明不足が出るからですね。
左右バランスを見るときのポイントとして、指標での左右バランスと、数メートル先の景色での左右バランスは少し違って見えるので必ずやりましょう。
また遠近両用や中近両用、近々両用や近用眼鏡での近方左右バランスも必ず見ておきましょう。
KBがない場合や初めての眼鏡の場合は、KBの見え方を思い出してもらいながらどのように変化させるか?
初めての場合も、裸眼の時とどのように変化するのか?
変化をすることでのデメリットなどを説明すると理解が深まり満足度が上がります。
具体的な数値の目安などは他の動画でも詳しく解説しているので、苦手な処方別に選んで動画を見てくださいね。
5つ目
・クロージング
ここまでの4つをきちんとしておけば、特にクロージング はむずかしくありません。
「今回は前の眼鏡と比べて〇〇を見えやすいようにしました。変化させることで〇〇というデメリットもありますが大丈夫そうですか?」
これでOKです。
逆に言えば、これを説明できずにざっくりと「見やすいですか?」とか、「慣れられそうですか?」とか、言ってるうちは「坊や」みたいなもんです。
クロージング が「いつもフワフワしてて苦手だ」という方は、裸眼とKBの左右バランスをきちんとやってみてください。
そこから「今回はこのバランスを基準に、主訴である〇〇を見えやすくしています。デメリットは〇〇なので、
累進レンズにしますか?複数眼鏡を使い分けますか?」くらいまで言えるようになるはずです。
この傾聴式測定塾で最も大切にしているのは、お客さんの「今」と「変化」することのバランスです。
誰だってライザップできるなら世の中にぽっちゃりはいないですし、ダイエット商品なんで売れなくなるはずです。
でも、無くなりませんよね?
そこには「そこまで努力することを望んでいない」という思いが必ずあるからです。
ですので、
「最終的には主訴と最新データのバランスがカギとなります」
今回の5選は、僕が普段99%やっていることです。
時間にすると平均15分以内です。
主訴内容によってはもう少し省略することもあるので99%にしています。
この項目の中で「完全矯正値を出す」ことはそれほど重要ではないと考えています。
なぜなら「完全矯正値」は調節力によって「誤差が出る」からです。
誤差が出るものに時間とお客さんの調節力を使うよりも、仮枠で体験してもらう時間の方がよっぽど大切です。
若手のうちは完全矯正値を出すことに夢中になりがちですが、完全矯正値もあくまで目安。
大切なことは、
「この人は免許更新で必要だからしっかりめにしたいんだな」とか
「この人はそこまで困っていなさそうだから、ほんの少しの変化で満足してもらえそうだな」といった
「お客さんの気持ち」を汲み取ることです。
そのためには、よく観察しなければわかりませんし、相手の本心を引き出す「質問」ができなければいけません。
いきなりはむずかしいと思いますが、意識しておくことで少しずつ人の心の声は聞こえてきます。
意識しないまま仕事の年月だけ過ぎたり、ただ知識だけを増やしても、それこそ見えるものも見えてこないというものです。