微分的見方と積分的見方

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世の中には様々なモノの見方が存在しますが、それらは大きく微分的な見方と積分的な見方とに分けることができます。
これらは自然科学的には同じくらい重要な概念なのですが、人文科学的にも重要な概念であると考えます。

微分的なモノの見方とは、観察対象の時間的変化を追いかける方法です。株式投資で言えば、PERやオシレータ系テクニカル指標等が該当します。 
これは、直近の状況を確認し短期的な予測を立てる際には有用ですが、長期的な状況の把握には向きません。

通常、PERは半年もしくは1年先の業績予想に基づいて計算されるかと思いますが、それを大きく超える将来の予想はできませんし、予想したとしてもそれは極めて不確実なものとなってしまいます。 

一方、積分的なモノの見方とは、観察対象の時間的な平均や蓄積を追いかける方法です。株式投資で言えば、PBRやトレンドフォロー系テクニカル指標等が該当します。 
これは、長期的な状況の把握や現在置かれている状態の確認には有用ですが、目先の変化を追いかける役には立ちません。

純資産は業績が赤字になると減少しますが、黒字である内は大きく減少することはありません。企業業績が安定して推移していくならば、純資産は年々積み上がっていくことになります。 
PBRは株価を1株当り純資産で割った指標ですから、PERと比べれば年毎の変化は小さいものと考えられます。

例えば、今年の純利益が200億円で来年の純利益が100億円になるとすると、配当や役員報酬を無視してかつ株価が変わらないとすれば、PERは2倍になってしまいます。 
一方、同じ純利益を上げて今年の純資産が1,000億円となった場合、同様に来年の純資産は1,100億円となりますが、PBRは0.91倍になるだけです。

昨今の経済状況においては、目先の利益予想を立てることは至難の業です。すなわち、PERを基準とした株価予想は、全く当てにならないことになります。 
一方、PBRは少なくともPERよりは安定した推移を示すでしょう。これが、積分的な見方の強みです。

以上の考え方は、トレーディングシステムにも当て嵌めることができます。システムを最適化する際、通常はある指標が最大(あるいは最小)となるパラメータを求めます。 
しかし、その指標が微分的か積分的かで、最適化の結果(最適パラメータ)は大きく異なってきます。

システムは、できるだけ長期に渡って安定して運用できることが理想です。途中で最適パラメータがコロコロと変わってしまうようなシステムは、実用に耐えるものではありません。 
そのように考えると、最適化の指針が明確になってきます。すなわち、積分的な指標を最適化対象に選べばいいわけです。

損益累計やPFなどの指標は、トレード数が十分に多ければ、積分的な振る舞いとなります。ただし、ごく少数のトレードの結果が、それらの指標に大きな影響を与えてしまうような場合には、最適化対象には向きません。 

トレンドフォロー系のシステムの場合は、1回のトレードで大きな利益を得る可能性がありますが、それだけ損益のブレが大きくなってしまいます。 
直近の損益が大きくブレてしまうと、最適パラメータにも影響しやすくなってきます。

KFシステムクリエイターの要の一つであるKFインデックスは、積分的な考えに基づいて設計されています。そのため、極めて安定した最適パラメータを決定することが可能となっています。 
もちろん、それだけでは期待値の大きいシステムになるとは限りません。安定性を高めつつ、期待値を最大化する指標設計が重要となります。

微分的な見方も確かに重要ではあるのですが、システムトレードのように長期的な運用を前提とする場合は、積分的な見方の方が重要であるように思います。 
また、昨今の経済環境のように先が見えない状況の場合もまた、積分的な見方に則って行動するべきではないかと考えます。

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