人生の進路設計アドバイザー井上です。
納得できない選択で人生を進めたくない人のために、判断の軸を言葉にしています。
これからのブログでは、質問への回答やノウハウ整理ではなく、
実際の相談や、これまでに聞いてきた話をもとにした架空のケースを扱いながら、「判断がどのように壊れていくのか」を記録していきます。
今回は、育休明けの復職面談でよく起こる、
一見すると何も問題がなさそうな場面を取り上げます。
復職面談で提示された「選択肢」
ある方が、育休明けの復職面談で上司と話をしていました。
提示された選択肢は、いずれも現実的なものです。
・時短勤務のまま復職する
・業務量は少し調整する
・配置は大きく変えない
話し合いの中で、
この3点を軸にした働き方が、ぼんやりと共有されました。
面談の最後に、上司からこう言われます。
「今すぐ決めなくていいよ。家に帰って考えてね。」
その場では、肩の力が抜けたそうです。
悩んでいたというより、「安心した」という感覚に近かった。
「決めなくていい」と言われて、ホッとした。
面談は穏やかに終わりました。
数日後に出てきた、説明しづらい違和感
ところが、数日経ってから、
こんな感覚が出てきたそうです。
「決めてないはずなのに、
もう話が済んでいる気がする。」
実際、本人は何かを選んだ覚えはありませんでした。
ただ、業務はそのまま進み始めていました。
・時短勤務で復職する
・業務内容は大きく変えない
・当面はこの形で進める
これらが「確定扱い」として、
特に確認されることもなく運用に乗っていった。
判断した記憶はない。
でも、結果だけが少しずつ人生に組み込まれていく。
これは「判断を保留した」という話ではありません。
判断をしていないのに、判断の結果だけが確定扱いになった
その瞬間を切り取ったケースです。
内側で起きていた変化
このとき、まず起きるのは内側の変化です。
本人の中に、
「なぜそうしたのか」という判断理由が残っていません。
すると、後から選び直そうとしたとき、
こんな言葉が浮かびやすくなります。
「これって、わがままなんじゃないかな。」
「今さら言うのは違う気がする。」
決めていないはずなのに、
一度決めたことを覆そうとしているような感覚になる。
結果として、
違和感を抱えたまま進むしかない、という選択をしやすくなる。
判断を保留しただけなのに、
選び直す自由が、先に削られてしまう。
これが、内側で起こる小さな、しかし効いてくる変化です。
外側で静かに進む「確定」
同時に、外側では別のことが起きています。
その働き方は、
職歴として、履歴として、残っていきます。
本人には
「ちゃんと決めた記憶はない」
という感覚があっても、
外側から見ると、こう扱われます。
「この人は、こういう働き方を選ぶ人。」
それが良いか悪いかは別として、
過去の判断として記録される。
そして、異動・昇格・転職といった場面で、
その前提が参照されることになる。
内側の実感と、外側の評価。
このズレは、あとから効いてきます。
「どうしたいですか?」が聞けない理由
このような状況で、
では何ができるのかを考えたとき、
すぐに「じゃあ、どうしたいですか?」と聞くことは、
必ずしも適切とは限りません。
急がせることで、
感情で判断理由を埋めてしまう可能性があるからです。
そうして決めた判断は、
あとで振り返ると、空虚になりやすい。
ここでまず必要なのは、
「答えを出すこと」ではありません。
・何が決まっていないのか
・何がすでに前提として動いているのか
この整理を、静かに行うことです。
「今すぐ決めなくていい」という言葉の正体
上司の「今すぐ決めなくていいよ」
という言葉は、配慮であり、優しさでもあります。
同時に、判断を委ねられた合図でもあります。
安心できる言葉だからこそ、
雑に扱わないほうがいい。
決めていないつもりの選択があるなら、
それは放っておくものではなく、
一度立ち止まって扱うものかもしれません。
今日は、
その場面で何が静かに進んでいくのかを、
構造として記録しました。