AI小説;それでも地球は動いている…第5話

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松明を手にした兵士たちが村に押し寄せてきた。

黒いローブに身を包んだ司祭らしき男を中心に

十字の紋章を掲げた兵士が数人

鋭い目つきで村人たちを睨みつけている。

村人たちは怯えながら道を開け

一様に頭を垂れた。

圧倒的な権威と武力の前に

逆らえない空気が辺りを支配しているのがわかる。

 司祭らしき男が一歩前に出て

高らかに宣言を始めた。

「神の御名において、この村は異端の嫌疑を受けている!」

彼はそう叫ぶと

巻物を取り出し何やら難しい言葉で布告を読み上げた。

内容は全て理解できないが

要するに村に異教的な行いがあるとの疑いで調査に来た

ということらしい。

(異端?そんな馬鹿な、この村の誰が?)

俺は隣で震えるルチアを抱き寄せながら周囲を見渡した。

村人たちは皆困惑と恐怖で顔を引きつらせている。

すると司祭の視線が俺の方に向けられた。

その冷たい眼差しには明確な敵意が宿っている。

「その東洋の異邦人こそが、悪魔の使いである!」

彼は指をまっすぐ俺に突きつけた。

どよめきが村人たちに走る。

俺はギクリとした。

(俺が…悪魔の使いだと?)

思いもよらない非難に頭が真っ白になる。

司祭は続けて声を張り上げた。

「奇妙な衣をまとい、異教の武術で人を傷つける異端者!神聖なるこの地に混
乱をもたらす存在だ!」

 はっとした。

確かに俺は先日

村に来る前に野盗を叩き伏せた。

その際、俺の戦い方を目撃した者がいたのだろうか?

竹刀のような木の棒で武装した男たちを倒したことが

「異教の武術」

と噂になってしまったのかもしれない。

(くそ、まさかそんなことで疑われるなんて)

悔しさと不安が入り混じる。

見れば兵士たちがじりじりとこちらに近づいてきていた。

腰には剣、手には鎖のついた武器まで持っている者もいる。

 ルチアが

「違う、違うの!」

と泣きそうな声で訴え

俺の前に立ちはだかった。

カテリーナお婆さんや村長も必死に司祭へ弁明を試みているようだ。

しかし司祭は聞く耳を持たない様子で腕を振り払い

「黙れ!」と怒鳴った。

そして冷酷な笑みを浮かべ

「この者を拘束せよ。抵抗するなら村ごと火を放て」

と兵士たちに命じた。

瞬間、悲鳴があがり村人たちが一斉に後ずさる。

俺はルチアを背後にかばいながら後退した。

(まずい、武器がない…)

竹刀代わりの木切れすら手元にない状況に冷や汗が伝う。

兵士の一人が手にした長剣を抜き放ち

静かにこちらへ歩を進めてくる。

鎖を持った兵士はルチアたち村人を睨みつけ威嚇し

近寄らせないようにしている。

逃げ場が徐々になくなっていく。

(戦うしかないのか?)頭が沸騰しそうだった。

相手は真剣を持った訓練された兵士。

対して俺は素手同然。

このままでは捕まるか斬られるかだ。

それだけは絶対に避けなければならない。

(ルチアを守るためには…!)心臓の鼓動が激しく早まる。

しかし不思議と恐怖よりも闘志が湧き上がってきた。

剣道の試合前にも似た

あの極度の集中状態に心が入っていくのを感じる。

 兵士が踏み込んできた。

閃く刃。

(来る!)

俺はとっさに身を低く屈め

間一髪で横へ転がって斬撃をかわした。

剣先が地面に当たり

火花が散る。

すかさず兵士に体当たりを食らわせ

その腕を掴んだ。

次の瞬間

稽古で鍛えた足さばきで相手の懐に入り込み

渾身の力で胴への突きを放つ。

竹刀ではなく拳での一撃だったが

鍛錬の賜物か兵士は「ぐはっ」と呻いて後退した。

腕の中から剣が滑り落ちる。

 「それっ!」

俺はその剣をすかさず拾おうとした。

しかし

別の兵士が鎖鎌を振り回し鎖を俺の足元に投げつけてきた。

鎖が絡みつき転倒しそうになるも

何とか体勢を立て直す。

(まずい、二人がかりか…!)

今度は二人の兵士が連携して攻撃を仕掛けてきた。

一人は剣で斬りかかり

もう一人は鎖鎌で牽制してくる。

息の合った動きに防戦一方だった。

かろうじて剣先と鎖を避け続けるが

このままではじり貧だ。

 ふと視界の端にルチアの姿が入った。

彼女は祈るように胸の前で手を組み

泣きそうな目でこちらを見ている。

(俺が倒れたら彼女は…!)

想像が胸を過ぎり

全身に熱いものが迸った。

ここで倒れるわけにはいかない

命に代えても守るんだ…!

気合いと共に大きく息を吸い込む。

「おおおおっ!」

渾身の気合い声と共に

目の前の剣士に突っ込んだ。

兵士は一瞬たじろぎ

斬撃のタイミングがずれる。

その刹那

俺は地面に落ちていた砂を蹴り上げ、

兵士の顔面めがけて叩きつけた。

砂埃に視界を奪われ怯んだ兵士の隙を逃さず

落ちていた剣を拾い上げる。

そして習ったことはないものの

剣道の型を思い出しながら相手に斜めから斬りつけた。

金属音と共に兵士の剣は弾き飛ばされる。

俺の剣先が兵士の喉元にピタリと突きつけられていた。

「やめろ!それ以上は…!」

もう一人の鎖鎌の兵士が慌てて叫ぶ。

俺は荒い息をつきながらも

目の前の兵士を人質に取る形で剣を突きつけたまま静止した。

自分でも信じられない。

初めて握る本物の剣なのに

体が勝手に動いていた。

(これが本当に俺のやったことか?まるで夢中で覚えていない)

だが刃先の感触と兵士の冷や汗を見る限り現実だ。

司祭が舌打ちし

兵士たちに手で制止の合図を送った。

緊迫した空気の中

村長のマルコ老人が震える足取りで間に入る。

「お待ちください!」

彼は懇願するように司祭にすがりついた。

「この者にも事情が…どうか話を…!」

老人は必死だった。

司祭は不愉快そうに眉をひそめたが

やがて静かに言った。

「よかろう。では明朝までにこの異端者を村から引き離し、教会に差し出せ。
それまで村への罰は保留する。」

そして俺の方を睨み

「さもなくば、皆殺しだ」

と低く付け加えた。

俺は拳を震わせ悔しさに歯噛みした。

しかしここで逆らっては村人全員の命が危ない。

司祭の冷徹な目を見てそれが単なる脅しではないことを悟る。

俺は静かに剣を下ろし

兵士を解放した。

兵士たちは悔しそうに唾を吐きながらも後退していく。

司祭は

「明朝だ、忘れるな」

と念を押すと

踵を返し兵士たちを従えて村を去っていった。

緊張の糸が切れ

村人たちから安堵の吐息と嗚咽が漏れた。

ルチアが駆け寄ってきて

俺の胸に飛び込む。

「タケシ!」彼女の体が小刻みに震えている。

「大丈夫だ、もう大丈夫」と背中をさすりながら抱きしめるが

自分で言いながらその先の言葉を失った。

(明日の朝までに俺が差し出されなければ、この村は虐殺される…)

最悪の事態だ。

俺は村長と村人たちに頭を下げ

「すまない…俺のせいで…」と謝った。

もちろん言葉は通じないが

申し訳なさは伝わっただろう。

マルコ老人は首を振り逆に俺の肩を掴んで

「あなたのせいじゃない」と言わんばかりに涙目で訴えた。

どうやら教会側は

以前から何かと理由をつけて

村を搾取しようとしていたらしい。

今回たまたま俺の存在が格好の口実に利用されただけなのだ。

 それでも俺が村に残れば皆が殺される危険があるのは変わらない。

逃げるしかない

――頭に浮かんだのはその考えだった。

ここを離れ遠くへ逃げ延びるしか方法はない。

しかしそれは同時に

ルチアや村の人々と離れることを意味している。

(逃げ延びた先で生き延びられるのか?ルチアを連れて行くとして、彼女を幸
せにできるのか?そもそもこの時代で異邦人の俺が共に暮らしていくなんて現
実的に可能なのか?)

疑念と不安が次々押し寄せる。

その晩

村の有志たちが集まり密かに相談が行われた。

ルチア、村長、カテリーナお婆さん、

そして数人の若者が納屋に集まり、小声で話し合う。

もちろん会話の詳細は理解できない。

それでもその表情から何を議論しているのかは推察できた。

皆俺とルチアを逃がすことを考えてくれているのだ。

 ルチアが強い口調で何かを主張した。

反対する若者と言い合いになっている。

きっと(私も一緒に行く)と訴えているのだろう。

若者は女性を連れての逃亡は難しいと反対しているのかもしれない。

俺はルチアの手を取り自分にも考えがあると制した。

突然彼女に危険な逃避行をさせるわけにはいかない。

何とか俺一人で村から離れ、教会の追及をかわす方法はないだろうか。

 だが彼女は首を横に振り

涙をためて必死に訴えてくる。

「一緒に…」その言葉だけは俺にも理解できた。

「ルチア…」胸が痛む。彼女の気持ちは痛いほど分かる。

俺も一瞬でも彼女と離れたくない。

しかしこの村の暮らしを奪い

彼女の生活基盤を捨てさせることにもなる。

何より逃避行の先に安全がある保証もない。

 結局、話し合いの末に出た結論はこうだった。

まず俺とルチアが村を離れ山を越えて隣町の近くまで逃げる。

途中まで村の若者二人が案内し見張りをしてくれるとのこと。

その先は教会の権力も今より弱まり

匿ってくれる知人もいるらしい

村長は何か小さな革袋を差し出してくれた。

中には銀貨や保存食が入っている。

涙ながらにお婆さんもお守りのロザリオを首にかけてくれた。

 俺は彼らの善意に胸が詰まり何度も頭を下げた。

「必ず恩返しをします…!」そう誓ったが

日本語なので伝わったかは分からない。

それでも村人たちは口々に

「気をつけて」

「神のご加護を」

といった言葉をかけて送り出してくれた。

 夜更け、人々が眠りにつくのを待って

俺たちは静かに村を後にした。

月明かりだけが頼りだった。

ルチアの手をしっかりと握りしめ

後ろを二人の若者が固める。

吐く息が白く、夜の冷え込みが肌を刺すようだ。

緊張と不安で鼓動が高鳴るが

ルチアの手の温もりが俺に勇気を与えてくれた。

(絶対に彼女を守りきる。どんな困難が待っていようと、必ず)

暗闇の中、俺は自分にそう言い聞かせた。

 しかし運命は無情だった。

村から山道をかなり進んだ頃

背後から馬蹄の音が響いてきたのだ。

追手だ。

「来たぞ!」若者の一人が叫ぶ。

どうやら兵士たちが予想以上に早く追ってきたらしい。

おそらく村の誰かが逃亡計画を密告したのだろう。

(なんてことだ…!)

悲嘆に暮れる暇もなく

俺たちは全速力で山を駆け下りた。

暗闇の森の中

枝が顔や腕を切り裂いていく。

後ろでは馬に乗った兵が迫ってくる気配があった。

若者二人が

「俺たちが引きつける!」と叫び

途中の分かれ道で逆方向に走っていった。

囮になってくれるつもりなのだ。

(なんということだ、彼らにまで危険を…!)

だが今は彼らの勇気に賭けるしかない。

俺はルチアの手を引き、別の細い獣道へと進んだ。

 しばらく走ると開けた場所に出た。

月明かりの下に朽ちた古い礼拝堂の跡が現れた。

壁も半分崩れ

屋根もない廃墟だが

十字架だけがぽつんと残っている。

不思議と見覚えがあるような気がして

ハッとした。

(ここは…俺が最初に目覚めた森の近くじゃないか?)そう

ルチアと出会った川辺からさほど遠くない場所に

こんな遺跡があった気がする。

実際、かすかに川のせせらぎが聞こえてきた。

最初に時空を超えたあの場所に近いのかもしれない。

しかし感傷に浸る間もなく

背後からまたも追手の気配が迫ってきた。

馬を捨てた兵士たちが徒歩でこちらを探しているようだ。

二人…いや三人か。

(まずい、さっき撒いたはずなのにな)きっと手分けして広範囲を探している
のだろう。

ルチアが怯えた表情でこちらを見る。

「シッ!」

俺は指を唇に当て

彼女の手を引いて崩れかけの礼拝堂の陰に身を潜めた。

月光を避けるように壁の裏にしゃがみ込み

息を殺す。

兵士たちの足音が近づいてくる。

何か話し声も聞こえるが内容は分からない。

ルチアの手が汗ばんでいる。

彼女も極度に緊張しているのが伝わってきた。

俺はそっと彼女の耳元で囁いた。

「大丈夫、一緒に生き延びよう」

正直、自分自身にも言い聞かせていた。

彼女は小さく頷き、震える息を吐いた。

だが次の瞬間、頭上でパキッと小枝を踏む音が響いた。

しまった真上だ!

崩れた壁の上にいつの間にか一人の兵士が乗っていたのだ。

闇に慣れた目が俺たちを捉えた。

「いたぞ!ここだ!」

怒号が轟き、他の兵士たちも集まってくる。

もう逃げ場はない。

「ルチア…走れ!」

俺は彼女の肩を突き動かし

再び森の方へ逃げるよう促した。

しかし彼女は首を振り

離れまいと俺の腕を掴んでいる。

「だめだ、行け!」

何とか彼女を逃そうとするが

彼女も必死だ。

「一緒に…死ぬ…」

拙い日本語でそう言った彼女の目に強い決意が宿っていた。

(ルチア…)愛しい想いが溢れ

そして同時に絶望が胸を満たす。

兵士が剣を抜き放ち迫ってきた。

このままでは二人とも殺される…!

万策尽きたかに思えたその刹那だった。

礼拝堂の十字架に月光が差し込み

まるで銀色に輝いたように見えた。

すると突然

周囲の空気がピリピリと静電気を帯びたように肌を刺した。

(何だ…?)

次の瞬間

眩い閃光が走り

俺は思わず目を閉じた…

耳鳴りがする。

何が起きたのかわからない。

倒れ込んだらしい身体を起こすと

兵士たちも怯んだ様子で立ち尽くしていた。

見上げると礼拝堂の十字架が淡く光を放っている。

いや、十字架そのものではない。

その背後に何か揺らめく光の渦のようなものが浮かび上がっていた。

「な、なんだ…?」

兵士の一人が後ずさる。

奇跡か怪異か、誰もが言葉を失っている。

だが俺は悟ってしまった。

この不思議な感覚…覚えがある。

(そうだ、あの時だ!俺がこの時代に来たときも強烈な光に包まれたんだ)

間違いない

これは時空の綻び

現代へ通じる門のようなものではないのか?

兵士たちは怯えて近づこうとしない。

ルチアが不安そうに光を見つめ

俺の袖を掴んだ。

その時、渦巻く光の中に一瞬だけ見覚えのある風景が垣間見えた気がした。

コンクリートの建物

街灯の明かり…現代の街だ。

確かに一瞬見えた。

(帰れるのか?元の世界に?)

喜びよりも先に、嫌な予感が胸をよぎる。

このままでは俺だけ元の時代に戻ってしまうのではないか。

そんな気がしてならなかった。

時空の綻びが現れたのは俺がこの場にいるからこそだろう。

だとすれば

俺が吸い込まれるように帰ってしまえば

ルチアは…?

兵士たちが我に返り始めた。

「悪魔の仕業だ!奴らを捕らえろ!」

司祭はいないが

兵士たちは気を取り直して再び剣を構え直す。

俺は咄嗟にルチアの手を引き

その光の渦の方へ走った。

「タケシ!?」彼女が驚いて叫ぶ。

俺自身、何をするつもりなのか分からない。

ただ、追手から逃れるにはこの光の中に飛び込むしかないと思ったのだ。

渦の目の前まで来て立ち止まる。

眩しさと耳鳴りで意識が遠のきそうになるが

必死に踏みとどまる。

振り返ると兵士たちがすぐ背後まで迫っていた。

「行くしかない…!」

俺は覚悟を決めた。

しかし

その瞬間

ルチアが俺の手を強く引き

光から引き離そうとした。

「ダメ!」泣き叫ぶような声。

彼女は察しているのだ。

この光に飛び込めば俺たちは引き裂かれてしまうことを。

本能的に感じているのかもしれない。

刹那、兵士の剣が振り下ろされるのが見えた。

俺は反射的にルチアを抱き寄せ

体を翻して剣筋を避けようとした。

鋭い痛みが背中に走る。

「ぐっ…!」切り裂かれたか。

だが構っていられない。

(ルチアだけは…守らなきゃ)

目の前が暗くなっていく中で

意識を振り絞った。

「愛してる、ルチア!」

日本語で俺は叫んでいた。

言葉が通じなくても構わない

最期かもしれないこの瞬間に伝えずにはいられなかった。

ルチアの青い瞳が見開かれる。

涙が溢れ頬を伝うのが見えた。

彼女も何か叫んでいる。

しかしもう声が聞こえない。

光の渦が俺の体を引き寄せていくのを感じた。

ルチアの手が俺の手から離れていく。

「いやだ…タケシ!」

彼女の悲痛な叫びが微かに耳に届いた気がした。

眩い光が視界を満たし、俺は意識を手放した

第6話へ続く…




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