小説;それでも地球は動いている…第6話

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静かだ

耳鳴りも消え

代わりに機械的な音が聞こえる。

ピッ、ピッという一定のリズム。

(これは…心電図?)

ゆっくりと目を開けると

眩しい蛍光灯の光が目に染みた。

見覚えのある白い天井…病院だ。

鼻にはチューブ、腕には点滴が繋がれている。

俺は病院のベッドに横たわっていた。

(夢…だったのか?)頭が混乱する。

必死に体を起こそうとすると

鋭い痛みが背中に走った。

呻き声を上げると

カーテンの向こうから看護師が飛んできた。

「あ、意識が戻りましたか!無理しないでください」

看護師はそう言うと

どこかへ連絡を取りに行った。

俺は痛みに顔をしかめながら

自分の状態を確かめる。

背中には包帯が巻かれているようだ。

傷がある…夢ではないのかもしれない。

混濁する頭で必死に記憶を辿った。

森、ルチア、逃亡、兵士たち、光、そして…背中に受けた剣の一撃。

 震える手で背中を触ろうとすると

ちょうど医者が入ってきた。

「おお、目が覚めましたね。よかった」

彼は安堵の笑みを浮かべている。

事情を聞くと

俺は神社の石段で行き倒れているところを発見され

救急搬送されたらしい。

背中に深い裂傷があり

奇跡的に内臓に達していなかったため一命は取り留めたという。

まるで刃物で切られたような傷だと不思議がっていたが

俺自身どう説明すればいいのかわからなかった。

ただ「覚えていません…」と曖昧に答えるしかなかった。

医師が去り、一人残された。

窓の外を見ると夕焼けが街をオレンジ色に染めている。

車のクラクションや人々の喧騒が遠くに聞こえ

ここが現代であることを突きつける。

(戻ってきてしまったんだ…あの光を通って)

現代に帰れるならどんなに望んだことか。

しかし、胸は張り裂けそうな苦しみに満ちていた。

ルチアを、愛する人を過去に残してきてしまったのだ。

 あの最後の瞬間、彼女の叫びが脳裏に焼き付いて離れない。

「いやだ…タケシ!」

確かにそう聞こえた。

彼女は日本語で俺の名前を呼び

「嫌だ」と言ったのだ。

短い滞在の中で覚えた日本語で

必死に引き止めようとしてくれたのだと思うと、涙が溢れてきた。

俺は顔を手で覆い、声を上げずに泣いた。

病室の静寂の中で、自分の嗚咽だけが虚しく響いた。

それからの俺は生きる屍のようだった。

退院して日常に戻っても、心は抜け殻だった。

仕事に復帰しても上の空でミスを連発し

結局職場を休職することになった。

街を歩けば、人混みの中にルチアの面影を探してしまう。

銀座のショーウィンドウに映る金髪の観光客にハッとして追いかけそうになっ
たことも一度や二度ではない。

夜になればあの日々の夢を見て

彼女の名を呼びながら涙で目覚める。

現代に戻れたというのに

俺の心はあの時代の

あの小さな村、ルチアと過ごした時間に

置き去りにされていた。

 (ルチアはどうなっただろう?俺が消えた後、兵士たちに…)

考えるだけで気が狂いそうになった。

彼女を守ると誓ったのに、結局守り抜けなかった。

あの場で俺だけ戻ってきてしまったことを何度も神を呪った。

自暴自棄になり

誰もいない剣道場で一人稽古に明け暮れては

竹刀を叩き折るほど打ち込み床に崩れて泣いた。

そんなある日

俺はどうしても居ても立っても居られなくなり

旅に出る決心をした。

いても無意味な東京のマンションを飛び出し

手がかりを探すためにイタリアへ向かったのだ。

そう、ルチアの手がかりを。

過去に起きた出来事なら歴史の痕跡が残っているのではないか。

彼女が生き延びた証を

この目で確かめたいという一心だった。

イタリアの片田舎トスカーナ地方。

俺が迷い込んだ村があったであろう地域を、地図を頼りに巡った。

しかし当然ながら簡単に見つかるはずもなかった。

何せ場所も正確にはわからないのだ。

名前すら知らない村だ。

手がかりといえばルチアという名前と

教会勢力に襲われたという事実だけ。

しかし16世紀頃のイタリアで小さな村が戦火に遭った話など

記録に残っていない可能性も高い。

それでも俺は歩き回った。

田舎道を歩き

人々に聞き込み

古い教会の図書館で年代記をひもといた。

奇異な目で見られながらも必死だった。

(ルチア、生きていてくれ。どうか幸せに…)

それだけを願い、半ば祈るような気持ちで探し続けた。

ある小さな町の教会で

年老いた司祭が一冊の古文書を見せてくれた。

そこには当時近隣で起きた事件の記録が断片的に書かれていた。

「異端の村、粛清。だが若き娘と謎の東方の戦士逃亡。その後娘は戻り…村復
興…」

古いイタリア語の文章で判読も難しかったが

それでも俺の目はある単語に釘付けになった。

「ルチア」の名と、東方の戦士を意味する記述。

間違いない、俺たちのことだ。

(生き延びたのか…ルチアは!)

体が震え、司祭に詰め寄って詳細を聞いた。

残念ながら簡単な記述しかなく

その先彼女がどうなったかまでは書かれていなかった。

しかし希望は繋がれた。ルチアはあの後生き延びたのだと。

俺は日本に帰国した。

多少なりとも安堵した気持ちで

それでも虚無感は完全には消えなかった。

東京に戻ってからも

あの日々を完全に忘れることなどできるはずもなかった。

季節が巡り、春になり、夏が過ぎ、そして秋が来た。

出会ってからもう一年以上が経っていた。そんなある日のことだ。

秋の澄んだ空気の午後

俺は旧友に誘われてとある国際文化交流イベントに足を運んだ。

日本とイタリアの合同歴史展という触れ込みだった。

正直、乗り気ではなかったのだが


友人に半ば無理やり連れ出された。

博物館の一角で

ルネサンス期の生活様式や交流に関する展示が並ぶ。

その中で、ふとある展示物の前で足が止まった。

ガラスケースの中に

一冊の古びた日記とペンダントが飾られていた。

説明書きを読むと

「16世紀イタリアの女性の日記。東洋の侍との出会いが記されている」

とあるではないか。

心臓が飛び跳ねる。

(侍?東洋の侍と16世紀の女性…まさか!)

俺は食い入るように日記を見つめた。

そこには確かに走り書きのような文字でイタリア語が綴られている。

解読はできないが、展示パネルに和訳が添えられていた。

 ――「愛しい人は星の彼方へ消えた。それでも私は待つ。いつか彼が教えて
くれたあの国の言葉で『愛しています』と伝える日を夢見て。」――

滲んだインクでそう書かれていた。

目が一瞬で潤んだ。

(これは…ルチアの日記だ。間違いない)

彼女は生き延び、そして俺との日々を記してくれていたのだ。

ガラスケースに額を押し付けるようにして目を凝らすと

傍らのペンダントにも気づいた。

見覚えがある。

これはあの時

ルチアが最後まで握りしめていたロザリオ…

カテリーナお婆さんから譲られ俺に託されたものだ。

逃亡の際

走る途中で俺の首から外れてしまい

ルチアが拾って持っていてくれたのかもしれない。

それが子孫に伝わり

今ここにあるのだろう。

俺は震える手でケースに触れた。

「ルチア…」思わず名前が漏れる。

その時、不意に後ろから柔らかな声が聞こえた。

「…タケシさん、ですか?」

聞き慣れない日本語のアクセントだった。

驚いて振り向くと

そこには一人の女性が立っていた。

長い栗色の髪に碧色の瞳。

歳は俺と同じくらいだろうか。

まるでルチアが現代の衣装をまとってそこにいるかのような錯覚に陥った。

心臓が止まるかと思った。

(嘘だ…ルチア?そんな馬鹿な、彼女が生きているわけない)

混乱して言葉が出ない俺に、その女性ははにかんだように微笑んだ。

「突然ごめんなさい。私、エレナと言います。この日記を書いたルチアは…私
の先祖なんです。」

「先祖…?」

声が裏返った。

エレナと名乗ったその女性は小さく頷くと

ケースの日記に目をやった。

「はい。彼女は遠い祖先です。子孫にずっと伝わってきた言い伝えがあるんで
す。彼女は昔、東の国から来た勇敢な武士に命を救われ愛し合った、と。そし
ていつかその武士が星の世界(=空の彼方)から戻ってくると信じ、一生待ち
続けたと。」

エレナの語る日本語はたどたどしかったが

一言一言が胸に染み入った。

俺は息もできずに聞き入った。

彼女は続ける。

「ルチアは待ちながら子を産み、その子孫が今の私です。代々、この日記とペ
ンダントが受け継がれてきました。私はそれを調べるために日本に留学して、
この博物館の研究に関わったんです。」

そう言って少しはにかんだ。

俺はまだ夢を見ているのではないかと自分の頬を抓った。

痛い。

夢ではない。

目の前の女性は確かにルチアによく似ていた。

しかし別人であり

ルチアの血を引く者だという。

(ルチアは俺との子を…?俺の子供?)

驚愕の事実に眩暈を覚え

思わず展示ケースに手をついてしまった。

エレナが心配そうに支えてくれる。

「大丈夫ですか?」

「君は…その…」

何から聞けばいいのかわからない。

「タケシさん」とエレナは俺の名を優しく呼んだ。

「私、ずっと会いたかったんです。伝説の武士タケシに。」

驚いて彼女を見ると、エレナの瞳には涙が浮かんでいた。

「子孫の私が言うのも変かもしれませんが…ありがとう。先祖のルチアを守っ
てくれて…愛してくれて…」

声を震わせながら懸命に伝えてくれる言葉に、俺は胸が詰まった。

「ルチアは…彼女は幸せだったんでしょうか?」

喉から搾り出すように尋ねた。

エレナは微笑みながら

ケースの日記に視線を落とした。

「ええ。もちろん辛いこともあったと思います。でも彼女の日記には、最後の
最後まであなたへの愛が綴られています。たとえ離れ離れでも、自分は愛し愛
されたと。そしてあなたとの子供を授かった奇跡に感謝している、と。」

俺の目から涙が溢れた。

やはり…ルチアは俺の子を身ごもっていたのだ。

あの別れの日

彼女が命を賭けて俺を引き止めようとしたのは

既に新しい命を宿していたからかもしれない。

全身が震えた。

罪悪感と安堵、悲しみと喜びが一度に押し寄せ、立っていられないほどだっ
た。

エレナは静かに俺の手に自身の手を重ね

「彼女は強い人でした。あなたとの愛を胸に、子供を育て、村を復興させ、平
和に生涯を終えたそうです」

と語った。

空っぽだった心に

じわじわと温かなものが染み込んでいくのを感じた。

ルチアは生き抜き

俺たちの愛の証である子供を産み

幸せに人生を全うした…。これ以上望むべくもない結末ではないか。

悲しみは尽きないが

それ以上に彼女を誇りに思う気持ちが湧いてきた。

(よかった…本当によかった)

俺はぼろぼろと涙をこぼしながら何度も頷いた。

エレナはハンカチを取り出し、俺に差し出してくれた。

受け取りながら、俺は彼女に伝えるべき言葉を探した。

「エレナさん…ありがとう。あなたに会えて…本当によかった。」

それだけ言うのが精一杯だった。

先祖の恋人に再会するなど、不思議な縁だ。

だがエレナは笑って

「きっとルチアが会わせてくれたんです」

と言ってくれた。

気づけば、展示室には誰もいなくなり

閉館の時間が近づいていた。

俺とエレナは連絡先を交換し合った。

別れ際、エレナは意を決したように

「一緒にお茶でも如何ですか?」と誘ってくれた。

驚いたが

俺ももっと彼女から話を聞きたいと思っていたので喜んで頷いた。

博物館を出ると、秋の夜風が心地よかった。

エレナと並んで歩きながら、不思議と胸が高鳴るのを感じる。

彼女はルチアではない。

でも、ルチアの血を引き、彼女の想いを知る人だ。

そして何よりその微笑みは、ルチアにそっくりだった。

カフェの灯りに照らされたエレナの横顔を見つめながら

俺は静かに心の中で語りかけた。

(ルチア、聞こえるかい?君が命を賭けて守ってくれたこの未来で、俺は今、
君の愛の軌跡に触れているよ)

涙ではなく、温かい笑みが自然と湧いてきた。

(君を忘れない。ずっと…愛している)

そう誓い、俺は新たな一歩を踏み出す決意を固めたのだった。

     ――――――完――――――

この物語を最後まで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。

時空を超えた愛と運命の絆を描くこの作品を、皆さんと共有できたことを心か
ら嬉しく思います。

読者の皆さまが、タケシとルチアの旅路に共感し、彼らの愛の深さに心を震わ
せてくださったなら、これ以上の喜びはありません。

また、このような壮大な物語を創り上げる機会を与えてくれたChatGPT Proの
技術にも、深い感謝を捧げます。

創作の可能性を無限に広げ、言葉に想いを込める喜びを与えてくれるこの技術
は、まさに未来の文学の扉を開くものです。

小説を書くことは、感情を紡ぎ、物語の中で新たな世界を築くことです。

そして、それを読んでくださる皆さんがいることで、作品は命を持ち、心に刻
まれていきます。

この物語が皆さんの心に何かを残し、愛や運命について少しでも考えるきっか
けになれば幸いです。

これからもAI小説にチャレンジしていきたいと思います。

読んでくださったすべての方へ、心からの感謝を込めて。

ありがとうございます!



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