ワクチンのお話

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毎年冬になると多くの人がインフルエンザに感染します。そのためインフルエンザが本格化する少し前から、インフルエンザ対策としてあることがおこなわれます。それがワクチン接種。

ワクチンを接種することでインフルエンザにかかりにくくなることから、毎年いろいろな人がワクチン接種をおこなっています。ところでワクチンとはいったいどういうものであり、どうして病気にかかりにくくなるのでしょうか。

今回はそうしたワクチンに関するお話です。

ワクチン=病原菌を弱らせたもの/無害化したもの

ワクチンの正体ですが、「病原体(抗原ともいう)を弱らせたもの、あるいは無毒化したもの」です。インフルエンザウィルスに限らず、人の体には多くのウイルスや病原菌が侵入してきます。そうした菌やウィルスが侵入しても問題ないのは、白血球など体内に数多く存在している免疫機能のおかげにほかなりません。

体の免疫機能には病原体を排除するほかにもう一つ機能があります。それが病原体を学習するという機能。体内に侵入した病原体を解析して有効な抗体を作り、次回以降は効率よく病原体の排除ができます。

ワクチンとは人がもつ病原体の解析機能と抗体作成機能を逆手に取った治療方法です。弱体化あるいは無毒化した病原体を意図的に体内に入れて、免疫機能にその病原体を学習させて抗体を作らせるようにします。


3種類あるワクチン

ワクチンは病原体ごとに存在しているのですが、同時にワクチンそのものも3種類ありますので、見ていきましょう。

1.生ワクチン(弱毒化ワクチンとも)
病原体そのものを薬などで弱らせたワクチン。弱らせたとはいえ病原体であることには変わりないため、ほかのワクチンよりは強い持続期間の長い抗体が得られます。

ただし弱らせているものの病原体としては生きているため、病原体自体が毒素を放出する場合があり、それが副作用として現れることがあるため注意が必要です。

麻疹(はしか)やポリオのワクチンは生ワクチンに分類されます。

2.不活化ワクチン
死滅させた病原体や病原体の一部のみを使用したワクチン。体内の免疫機能は病原体の遺体や残骸からでも抗体を作れるので、病原体によっては生ワクチンではなくこちらを用いることがあります。

生ワクチンが生きている病原体を使用するのに対して、こちらは死んでいる病原体を使用するのが特徴です。そのため摂取した病原体が毒素を排出しないため副作用はほとんどありません。

ただし生きている病原体と比較すると、免疫機能の学習効果が劣ることから得られる抗体の力が弱かったり持続期間が短かったりする場合があります。

インフルエンザや日本脳炎のワクチンは、不活化ワクチンが用いられています。

3.トキソイド
病原体から毒素を抽出し、弱毒化処理などを施したワクチン。「病原体ではなく独から抗体は作れるのか?」などの疑問をもつ方もいるでしょう。一部ではありますが毒素からでも抗体が作れるので、場合によってはトキソイドのワクチンを用いることがあります。

なおトキソイド自体は不活化ワクチンとかなり似ていることから、両者は同じものとみなされることがあり、ワクチンとしては分類されないことがあります。ここでは別物として扱っていますのでご了承ください。


新型コロナウィルスとワクチン

「新型コロナウィルスに有効なワクチンを早く開発してほしい」という声をよく聞きます。確かに世界で猛威を振るっている新型コロナウィルスのワクチンが開発されれば事態が一気に好転します。ですがワクチンの作成は、簡単ではありません。

ワクチン開発で特に厄介なのが「副作用」です。
副作用の中には接種してすぐに出るものがあれば、数か月ないし数年経過しないと症状が現れないものもあります。特に厄介なのは数か月ないし数年経過しないと症状が現れない副作用です。そのためワクチンを開発する場合は数年単位で状態を観察する必要があり、必然的に時間がかかります。

同時にワクチンの効果にも注意が必要です。ワクチンの中には特定の免疫機能を強化させる場合があります。強化された免疫機能が対象の病原体のみ排除すればいいのですが、開発者の思惑通りに動くとは限りません。

強化された免疫機能が暴走状態に陥り、正常な細胞や関係ない器官を攻撃してしまうことがあるからです。ワクチン開発は病原体を排除する効果のみならず、関係ない器官を攻撃しないことも確認しなければいけないため簡単にはいかないようになっています。

余談ですが、副作用がどのように出るのかは実際にワクチンを接種してみないと確認ができません。そのためワクチン開発には副作用が伴います。ニュースで開発中のワクチンで副作用が出たという報道をたびたび目にしますが、手探りで開発しているため仕方ないことは理解しておいてください。


同時にワクチンが効いたのかどうかの観察もしなければいけません。
人の体には生まれ持った免疫機能があります。よほど厄介な病気でなければ体のもつ免疫機能によって病状は徐々に回復していきます。一見するとありがたい機能でありワクチンの前提となる機能ですが、実はこの免疫機能が厄介なのです。

たとえばワクチンを接種したことで病状が改善された場合、改善した理由は本当にワクチンのおかげなのでしょうか。ワクチンは効かなかったが、体がもつ免疫機能だけで症状が改善された可能性も考えられます。

効果のないワクチンを配布するわけにはいかないので、ワクチンの効果が本当に確認されるまで何度も治験を繰り返さなければいけません。ワクチンを開発する場合は効果を確認するのに時間がかかることから、開発にはかなりの期間を要するようになります。

まとめ

ワクチンとは弱小化あるいは無毒化した病原体であり、体内に弱らせた病原体を侵入させて抗体を作成させる治療方法です。

ワクチンの種類は病原体を弱毒化した生ワクチン、病原体の死骸や残骸を用いた不活化ワクチン、病原体ではなく病原体が排出する毒素を使ったトキソイドの3種類が存在しています。

新型コロナウィルスの脅威にされされている中ではワクチン開発が強く望まれている状況ではありますが、同時に副作用なく効果があるものを開発しなければいけません。そのためワクチン開発には数年の期間を要するようになっています。
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