天然痘のお話

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新型コロナウィルスもそうですが、人類ははるか昔からウィルスからの病気に悩まされてきました。人の歴史とはある意味で人間とウィルスの対決の歴史でもあります。

基本的にウィルスは頻繁に変異するため絶滅はできないのですが、人類史上で唯一絶滅できたウィルスがあります。それが天然痘。

今回は天然痘についていろいろ話してみたいと思います。

天然痘に感染すると膿疱ができる

天然痘とは天然痘ウィルスに感染することで発症する病気です。飛沫感染や接触感染などにより感染し、7~16日の潜伏期間を得たのち症状が現れます。

初期症状は40℃前後の高熱が現れ、頭痛や腰痛といった症状があらわれます。症状だけを見ればインフルエンザに似ているといえるかもしれません

初期症状を得ると熱はいったん落ち着きます。ただし顔面をはじめとして体の様々な個所に、豆粒状の丘疹(きゅうしん、皮膚が隆起したもの)がでてきます。色は皮膚と同じ色かやや白色です。

再度40℃以上の高熱が発生します。さらに先ほどからできていた丘疹(きゅうしん)が化膿して膿疱(のうほう、ウミがたまったり流出したりする)が出るようになります。

高熱が落ち着くようになると(一般的には2~3週間ほどかかる)症状もよくなっていき、膿疱だったところも瘢痕(あばた、細胞が壊死した後)となって残るのが特徴です。

膿疱ができるのは皮膚だけではありません。この段階になると呼吸器や消化器といった体内にも膿疱がつくられ、それによって呼吸困難などを引き起こすようになります。自症状がひどくなると重篤な呼吸不全を引き起こし、死に至ることも少なくありません。

天然痘がもつ2つの恐ろしさ

ではどうして天然痘がこれほどまでに恐れられたのでしょうか。理由は大きく分けて2つあります。

1つ目は致死率が恐ろしく高いこと。
天然痘の死亡率は20%~40%ほどとかなり高くなっています。致死率に関してはインフルエンザが約2.2%ほど、新型コロナウィルスでも約1.7%ほどであることから、天然痘の致死率は恐ろしく高いといってよいでしょう。

2つ目は感染能力が高いこと。
実は致死率の高いウィルスというのはウィルスとしての性能はあまり優れていません。感染者を増やす前に感染した人を死なせてしまうため、結果としてウィルスが増えなくなるためです。

ですが天然痘は違います。致死率が高いにもかかわらず高い感染力を持っているのです。感染者にできた瘢痕(あばた)のカサブタに天然痘ウィルスが潜んでおり、1年近く生存するなど非常にしぶとくかつ高い感染力を持っています。

ただしウィルスとしてはほとんど変異しない性質があるからなのか、一度感染すれば以降は生涯にわたって感染することがありません。

日本と天然痘

具体的にいつから来たのかは定かではありませんが、日本にも古くから天然痘が存在していました。

たとえば東大寺にある奈良の大仏(正式名称は東大寺盧舎那仏像)。は聖武天皇をはじめ多くの人々が患った病をいやすために作られたとされています。この時の病気が天然痘だったりします。実際に敏達天皇や用明天皇などは天然痘が原因で崩御されており、天然痘で亡くなった方は少なくありません。

天然痘と大きくかかわりがある人として有名なのが伊達政宗でしょう。独眼竜といわれる伊達政宗を「独眼」にしたのは天然痘だからです。(天然痘の膿疱などが眼球にできると失明する恐れがあり、伊達政宗もそうなったと考えられます。)

唯一絶滅したのが天然痘のウィルス

致死率が高く世界中で猛威を振るった天然痘ですが、現在は実質絶滅状態にあります。絶滅した理由は「種痘(しゅとう)」というワクチンによるものです

天然痘ははるか昔から脅威であったことから、様々な治療法が開発されていました。実際に現在のワクチンと同じように、天然痘ウィルスを意図的に体内に入れて免疫を作るという方法もありました。ただし人に感染していた天然痘ウィルスを使用するため100人当たりに2人ほどの割合で死者が出ることもあったので、確実とは言えなかったのですが。

そうした状況に変化が訪れたのは18世紀の半ばになってからです。牛の病気である牛痘に感染した人は天然痘に感染しないことがわかりました。ここから牛痘ウィルスが含まれている膿を接種して、天然痘の感染を防ぐという治療法が誕生します。

なお牛痘ウィルスと天然痘ウィルスは同じ種類のウィルスです。牛痘は牛に感染しやすいような仕組みになっており、人にも感染できるが重症化しないとという特徴があります。

牛痘ウィルスと天然痘ウィルスは同じ種類であることから、牛痘ウィルスで作られた抗体は天然痘ウィルスにも有効であり、牛痘ウィルス自体はひどい症状を作らないことから安全に摂取することが可能です。

牛痘ウィルスを使用した天然痘の予防接種は「種痘」と呼ばれるようになり、世界中で行われるようになります。その結果、20世紀の中ごろに天然痘は撲滅されることになりました。

ただし天然痘のウィルスは絶滅したとされていますが、軍隊などでは今も天然痘のワクチン接種がおこなわれています。(自衛隊でも途中からなくなったが、2001年よりワクチン接種が再開されました)

これは一部の国では天然痘のウィルスが生存しているのではないかとみられているためです。軍隊はそうした国に赴く可能性があることから、現在でも天然痘の予防接種がおこなわれています。

まとめ

現在は絶滅状態にある天然痘ですが、致死率の高さや感染力の高さからすると絶滅できたのは幸運ともいえます。天然痘に感染したときの様子はGoogleなどの検索エンジンを使えば見ることが可能です。ただしなかなかにショッキングな写真などが出てきますので、見るのは自己責任で行うようにしてください。

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