成果主義が失敗した3つの理由

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「年功序列なんてもう古い。これからは成果主義の時代だ」という価値観が一時期流行し、多くの企業で成果主義が導入されるようになりました。

成果主義のおかげで自分のパフォーマンスが正当に評価されて、非常に仕事がしやすくなった。・・・となればよかったのですが、導入してみたら各地で弊害が発生が出てくるようになりました。そのため現在は「成果主義をやめて360度評価制度を導入しよう」などと成果主義を否定する声が一般化しています。

あれだけ熱烈に歓迎されていた成果主義のどこに問題があったのでしょうか。今回は成果主義が抱えている3つの問題点についてお話ししたいと思います。

教育がおろそかになる

成果主義の問題点の1つは「教育がおろそかになる」ことです。成果主義=競争すると認識されていることが多く、他者よりも成果を上げた人が多くの報酬を得られる、と考えている人がいます。

競争することは、悪いことではありませんが他者との競争に勝つことを目的となると少し問題点が発生します。それが「相手と比較して、差によって勝敗を決めること」です。

自分と相手を競い合う場合、自分のパフォーマンスがかなり良かったとしても、相手がそれよりも優れたパフォーマンスを出してしまえば、競争に負けたことになります。まければ給料が下がるなどのペナルティを受けることになりますので、自分の出したパフォーマンスが無駄になるかもしれません。

逆に自分のパフォーマンスがかなり低かったとしても、相手のパフォーマンスがさらに低ければ競争に勝ったことになるため、自分のほうが優れていると扱われます。

こうしてみるとわかることは、成果主義では競争相手を育てるメリットがない、ことです。逆に競争相手が成長してしまうと、自分の給料が下がるのみならず今のポジションすら脅かされるかもしれません。

そのため成果主義が導入されると自分や相手のもっているノウハウが共有されず、メンバーの成長が難しくなります。(最悪、メンバー間で妨害工作が横行し、全員のフォーマンスが下がるという笑えない事態が起きるかもしれません。)

メンバーの成長がなければ自分の地位は脅かされないので個人とすれば問題ないのですが、会社全体で見ると会社単位で成長しないことは将来的な問題となっていきます。

「自分がよければ会社なんて関係ない。」口には言わないがそう思っている方もいるでしょう。会社のために自分が犠牲になるというのは、もう受け入れられない考えですが、だからといって会社の存在を無碍にするのも考え物です。

給料は会社から支給されるのですから。会社が得た売り上げの一部を給料として社員に還元しているため、会社側で得られるお金が増えれば給料の金額も増えていきます。(絶対ではないですが)

言い換えれば会社で得られるお金が少なくなってしまうと還元対象の給料もまた絞られることになり、自分の給料が少なくなります。

「自分が競争で勝つために他者を育てたくない、だけど自分だけ成果を出したとしても給料が増えない」こうしたジレンマが成果主義には付きまとっており、この考えが成果主義の大きな問題点といえるでしょう。

長期的な目線で考えられなくなる

成果主義の問題点の2つ目は「長期的な目線で考えられなくなる」ことです。仕事の種類はいろいろとあり、中には短期的に成果が出るものがあれば、数年単位と長期的に取り掛からないと成果が出ないものがあります。

短期的な仕事も長期的な仕事は機関に違いはあれど、どちらも大切な仕事です。優先順位はその都度変わりますが、どちらの仕事もこなす必要があります。

短期的な仕事と長期的な仕事の中に成果主義の考え方が介入するとどうなるでしょうか。成果主義の成果とは「指定した期間でどれだけの成果が挙げられたのか」というものです。期間は半年ないし1年ぐらいであることが多く、短期的な仕事であれば期間内に終わるため評価されるのに対して、数年はかかる長期的な仕事の場合は期間を超えてしまうことから成果主義では評価されにくくなります。

与えられた仕事をこなすのは大切ですが、仕事における評価や給料の維持はもっと大切です。成果主義によって評価されて給料が上がる可能性のある短期的な仕事と、評価されにくく下手をすれば給料が下がる可能性のある長期的な仕事、どちらを優先して取り組むでしょうか。

評価や給料のことを考えれば、短期的な仕事のほうを優先して取り組むはずです。

短期的な仕事だけで会社が運営できれば良いのですが、長期的な仕事にも会社の運営に大きな影響を与えるものがあります。そうした仕事がきちんと対応されていないと、会社の運営状況が悪くなりあなたの給料にもよくない影響を与えることがあります。


挑戦しなくなる

成果主義の問題点の3つ目は「挑戦しなくなる」ことです。安全な道を選んで進むことはよくありますが、いつも安全な道だけでは選択肢がどんどん狭くなっていき、やがて立ち行かなくなってしまします。仕事でも同じで時にはいつもと違うことをしなければいけない場合もあるでしょう。

ですが成果主義には新しいことに挑戦する意欲をそぐ力があります。
たとえば「今あることを繰り返して10万円を得られる選択肢と、新しいことに挑戦して成功すれば15万円が得られて、失敗すれば10万円を失う」という選択肢があったとしましょう。あなたは挑戦するという選択肢を取りますか?

多くの人はしないと思います。上記の場合、挑戦しなかった場合の期待値は10万円、挑戦した場合の期待値が5万円なので、挑戦することが損となりますから。

また新しいことに挑戦するにはかなりの労力を要します。自分の貴重な労力を割いて挑戦したにもかかわらず、結果は失敗して10万円の損失を抱えてしまうのであれば、挑戦する意味はないと誰もが思うはずです。

「成功よりも失敗のほうが強く心に残る」人の心理もまた影響を与えています。たとえば「1万円を拾ったときと1万円を失ったとき」でどちらのほうが心に強く残るかを考えてみましょう。多くの人は「1万円を失ったこと」のほうが強く心に残るはずです。

失敗が強く心に残るのは、同じ過ちを繰り返さないというある意味での生存本能なのですが、成果主義の仕組みからするとマイナス方向に作用します。

もちろん新しいことに成功したら50万円を与えるようにしたり、失敗してもマイナスにならないようにしたりといった対策をすれば、挑戦を促せるようになるかもしれません。ですが現実にはそうした対策は十分に取れておらず挑戦する意欲をそがれる結果となっています。

まとめ

経済状況の変化により年功序列の問題が表面化したころから、成果主義は問題を解決するものとして祭り上げられるようになりました。ところが成果主義を導入したら導入したらで、メンバーの教育がおこなわれないなどの問題が出るようになり、「成果主義は失敗だった」といわれています。

現在は360度評価など新しい仕組みが導入されるようになっていますが、それらとて問題がないとは限りません。どのような制度であってもメリットとデメリットがあり、完璧な仕組みなどはありませんので気を付けてください。
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