スペイン風邪のお話

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2020年より突如台頭し、様々な国で脅威となった新型コロナウィルス。2020年10月時点になっても明確な治療法は確立されておらず、どのような方法をとればいいのかは現在も議論されています。

とはいえ、人の歴史には様々な病気が登場してきており、明確な治療法のない中でも人々は様々な対策を施してきました。そうした歴史の中で新型コロナウィルスに向けて役に立つものはあるのでしょうか。

ありました。それが「スペイン風邪」です。第一次世界大戦中に誕生したこの病気は世界中に蔓延し多くの人々が感染しました。今回はそうしたスペイン風邪から、今行うべきことを学んでいきましょう。

スペイン風邪=インフルエンザ

最初に伝えておきたいことがあります。それが「スペイン風邪=インフルエンザウィルス」であることです。

20世紀初頭の時点では、インフルエンザウィルスはまだ見つかっておらず、症状が風邪をひどくこじらせたように見えたことから「風邪」という名前が付けられました。(インフルエンザという言葉が誕生したのは1933年からです。)

またスペインという国名が病名についていますが、スペイン風邪の発祥の地はスペインではありません。第一次世界大戦中は各国で情報統制が敷しかれており、中立国であったスペインは情報統制がおこなわれていなかったために、いち早くスペイン風邪の報道された結果によるものです。

日本人の40%が感染したスペイン風邪

スペイン風邪はの感染者は世界で5億人いたとされており、全人口の約27%が感染しました。世界規模で語ってもよいのですが、今回は日本に限定して語りますのでご了承ください。

まずは日本でどれくらいの感染者を出したのか見ていきましょう。スペイン風邪は第1波~第3波があり、それぞれで感染者数と死者数は以下の通りになります。
第1波、1918年8月~1919(大正8)年7月、感染者:2116万8398人、死者:25万7363人(致死率:1.22%)
第2波、1919年8月~1920年7月、感染者:241万2097人、死者:12万7666人(致死率:5.29%)
第3波 1920年8月~1921年7月、感染者:22万4178人、死者:3698人(死亡率1.65%)
合計:1918年8月~1921年7月、感染者:2380万4673人、死者:38万8727人(死亡率1.63%)
引用、スペイン風邪 - Wikipedia
当時の日本の人口は5500万人であることから、スペイン風邪の感染者は約43%となります。コロナウィルスはまだそこまで到達していないので、スペイン風邪の感染者数は驚くべきものといえるでしょう。

第1波~第3波でそれぞれの違いを見てみると、第1波が最も感染者数を出していることがうかがえます。このときはまだ誰もスペイン風邪の抗体を持っていなかったので感染しやすかったのかもしれません。

致死率で特化しているのが第2波です。第1波と第3波が約1%ほどなのに対して第2波は約5%とかなり凶暴性が増しています。ただし第1波で抗体を獲得していた人が多かったのか、感染者数はそれほど多くなったのが不幸中の幸いだともいえるでしょう。

ちなみに第2波で致死率が増した理由ですが、スペイン風邪のウィルスが変異した可能性が高いです。現代でもインフルエンザウィルスは短期間に変異を繰り返すように、スペイン風邪もまた変異し、凶暴になったと考えられます。

最後の第3波では感染者数も死者数も大幅に減少しています。これは治療体制が確立しつつあったことと、市民たちに病気が認知され警戒されたからでしょう。
またスペイン風邪のウィルス自体がさらに変異して凶暴性が少なくなったことも考えられます。(むやみに凶暴性を増やして患者を簡単に死なせてしまうとウィルス自体が増えないため、ウィルスが自分の凶暴性を抑えるように変異することがあります。)

スペイン風邪は1918年~1921年の約3年にわたって猛威を振るっており、新型コロナウィルスもそれくらいの期間、脅威であり続けると思ってよいでしょう。

今も昔も「自粛」で対応した

スペイン風邪の脅威にさらされた当時の人たちの対応ですが、結論から言うと当時の人も「自粛」で対応しました

たとえば当時の首相であった原敬はスペイン風邪の第1波が来たときに感染しました。療養のおかげで状態もよくなったのですが、天皇陛下に感染させることを恐れて、一週間ほど天皇陛下の参加する会議には自粛していかないようにしています。(なお当時は天皇陛下に病を移さないことが何よりも優先されたため。)

明確な治療法もない病には自粛で対応するほかないので、当時の人々も病に感染したら自粛するような選択をしていました。ですが自粛は経済活動を収縮させる行為です。そのため「病ごときで自粛するな」と声を上げる人もそれなりに存在しており、自粛派と反自粛派で激しい論戦が繰り広げられていました。

現代でも新型コロナウィルスでは政府から自粛を呼びていますが、一部の人からは「経済活動のため自粛するな」という声が上がっています。このように自粛に反対する人たちは今も昔も存在していたのです。

まとめ

スペイン風邪は1918年8月~1921年7月の約3年間にわたって流行し、2380万4673人もの感染者を生み出すなど、当時の人々にかなりの脅威を与えました。

新型コロナウィルスがどれくらいの影響を与えるかはまだ不鮮明ですが、スペイン風邪のように3年近くにわたって流行することを考えておいたほうがよいでしょう。

治療法が確立していない病に対して、おこなえることは自粛などに限られています。自粛に反対する人もいますが、病に感染しない患者を増やさないためにはやはり自粛が有効ですので、覚えておいてください。
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