集団免疫のお話

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コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発が急がれる中、一部の人たちから「集団免疫によって免疫を獲得すればいい」という声が上がっています。実際にスウェーデンなどでは集団免疫の獲得を目指していました。(現在は方針を変換)

言葉だけで何となく行うことの意味を理解できる集団免疫ですが、いったいどういうもなのでしょうか。

集団免疫=多くの人に免疫を獲得させる

集団免疫とは「特定の病気を多くの人に感染させて免疫を獲得させる」ことです。人の体には様々な免疫機能が備わっており、その中には1度体内に侵入してきたウィルスや病原菌などを学習・分析して抗体を作る機能があります。

体内で抗体が作られると、ウィルスや病原菌などは速やかに排除できるようになります。1度感染した病気にかかりにくくなるのは、こうした抗体を獲得する機能のおかげにほかなりません。

コロナウイルスもインフルエンザなどのウィルスと変わりないので、1度感染すれば抗体ができて以降は感染しにくくなります。

集団免疫ならば医療費を節約できる

集団免疫のメリットは何といっても「医療費が節約できる」ことです。薬やワクチンは処方してもらうのにお金がかかります。ですが自分で自分の体内で抗体を持ってしまえば、薬やワクチンのお世話にならないことから、そうしたものに支払うお金を節約できます。

患者だけでなく国としても医療費を節約できるため、スウェーデンなどの一部の国では、そうした目的もあって集団免疫を取得するという選択をしたのかもしれません。

集団免疫の獲得には大量の感染者が必要

多くの人が抗体を得るには多くの人を病気にさせなければいけません。こうした大量の病人を出すのが、コロナウイルスのデメリットです。
具体的にどれくらいの人を感染させなければいけないのでしょうか。集団免疫を獲得するは国民全体の43%以上が感染させる必要があるといわれています。
感染しても無症状の人もいるので、一概には言えませんが国民全体の何割かを病気に苦しませることが、集団免疫を得るには必要です。

もう一つ「どれくらいの人がなくなるのか」にも気を付けなければいけません。多くの人を病気に感染させるということは、言い換えれば一定数の人がその病気で亡くなってしまうことを意味しています。

たとえば日本で集団免疫の獲得を考えてみましょう。日本全体の人口は1億2,000万人といわれているので、集団免疫を獲得するには5,160万人もの感染者を出さなければいけません。

コロナウイルスの死亡率は時期によって変わりますが、ここでは1.7%とします。(年齢や抱えている疾病によっては上がったり下がったりしますので気を付けてください。)

5,160万人の1.7%ということは87万人となるため、日本で集団免疫を獲得するときは87万人の人がなくなることになります。87万人もの人がなくなるのはさすがに政府も看過できないでしょう。

獲得した抗体がいつまで持続するかわからない

集団免疫によって獲得した抗体がどれくらい持つのかはわかりません。たとえばインフルエンザの抗体は5か月しか持たないように、獲得した抗体によっては一定期間までしか持続しないことがあります。

もちろん永久ともいえる長い期間保有できる抗体もあるのですが、コロナウイルスの抗体がどれくらい持つのかは獲得して数年は経過してみないとわかりません。
集団免疫の獲得には多くの感染者や亡くなる人を伴います。にもかかわらず得られた抗体が短時間しか持続しないものだったら、果たして得た意味があるのでしょうか。

まとめ

人の体には抗体を獲得する能力があり、集団免疫ではそうした人の性質を利用して病気に対抗をします。ただし多くの人が抗体を獲得するには、多くの人が感染する必要があり、場合には死者が伴います。

医療費の節約などを目的として集団免疫を獲得すべきという声もありますが、いろいろと問題が多いので、現実的とは言えないでしょう。
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