「行政書士の資格を取りたい。でも、子どもがいるから勉強する時間がない」
行政書士試験の受験を考えている方から、このような話を聞くことがあります。
確かに、子育てをしながら資格試験の勉強をするのは簡単ではありません。
仕事が終われば、保育園のお迎え。
家に帰れば、食事、お風呂、寝かしつけ。
ようやく子どもが寝たと思ったら、もう夜の10時。
そこから六法を開いて、
「行政行為の取消しと撤回の違いは……」
となるわけです。
なかなかハードです。
しかし、私は「子育て中だから行政書士試験は無理」とは思いません。
むしろ重要なのは、**限られた時間の中で、何を勉強し、何を捨てるのかを明確にすること**です。
行政書士試験は「勉強時間の長さ」だけで決まらない
行政書士試験には、憲法、行政法、民法、商法・会社法、基礎知識など、かなり広い範囲から出題されます。
そのため、
「全部きちんと理解してから問題を解こう」
と考えると、勉強時間はいくらあっても足りません。
特に子育て中の受験生にとって、この勉強方法はかなり厳しいと思います。
必要なのは、
試験に出るところを優先して理解すること。
そして、
理解したら、すぐ問題を解くこと。
さらに重要なのが、
なぜその答えになるのかを説明できる状態にすることです。
単に「この問題は3番だった」と覚えていても、本試験で少し聞き方を変えられると対応できません。
「なぜ3番なのか」
ここまで説明できるようになって、初めて知識が使える状態になったと考えた方がよいでしょう。
子育て中なら「3時間の勉強」より「30分を確実に」
資格試験の勉強というと、
「毎日3時間勉強する」
といった目標を立てたくなります。
しかし、小さな子どもがいる家庭では、予定通りにならないことの方が多いでしょう。
突然熱を出す。
なかなか寝ない。
保育園から呼び出される。
休日だから勉強できると思っていたら、家族の予定が入る。
これは仕方ありません。
そこで、子育て中の受験生には、勉強時間ではなく「勉強単位」で考える方法をおすすめします。
例えば、
「今日は民法を2時間勉強する」
ではなく、
「今日は錯誤の過去問を5問解く」
「行政事件訴訟法の原告適格を確認する」
「会社法の機関設計を10問解く」
というように決めます。
これなら30分しか時間がなくても前に進めます。
行政書士試験は、一日に大量の勉強をした人が勝つ試験というより、小さな理解を積み上げ、それを本試験まで忘れないように維持した人が強い試験だと思います。
スキマ時間は「新しいこと」より復習に使う
子育て中の受験生には、スキマ時間があります。
通勤時間。
保育園のお迎えまでの10分。
昼休み。
子どもが遊んでいる横で過ごす15分。
こうした時間も使えます。
ただし、10分程度の時間で難しい行政法の論点を一から理解しようとしても、なかなか頭に入りません。
スキマ時間には、
・昨日間違えた問題を見る
・条文を確認する
・一問一答を数問解く
・覚えた判例を思い出す
といった復習系の勉強が向いています。
そして、30分、1時間とまとまった時間が取れたときに、新しい論点を勉強します。
時間の長さによって勉強内容を変えるわけです。
「今日は勉強できなかった」を気にしすぎない
子育てをしていると、どうしても勉強できない日があります。
ここで一番避けたいのが、
「昨日勉強できなかった」
↓
「計画が崩れた」
↓
「もう間に合わない」
↓
「今年は無理かもしれない」
という流れです。
一日勉強できなかったくらいで、合否は決まりません。
問題なのは、そこで勉強そのものを止めてしまうことです。
昨日0分だったなら、今日は20分やればいい。
20分しかできなかったなら、明日また続きをやればいい。
資格試験では、完璧な計画を作る能力よりも、**計画が崩れたときに戻ってくる能力**の方が重要だったりします。
子育てをしながら受験するのであれば、なおさらです。
子育て世代には「やることを増やす」より「減らす」ことが重要
行政書士試験の勉強を始めると、いろいろな教材が気になります。
基本書。
一問一答。
過去問。
予想問題。
YouTube。
SNSでおすすめされている参考書。
模試。
全部やろうとすると大変です。
特に勉強時間が限られている人は、教材を増やすほど合格から遠ざかる場合があります。
一冊終わっていないのに次の参考書を買う。
過去問が十分できていないのに予想問題を始める。
これは注意した方がよいでしょう。
教材を増やすことと、実力が上がることは別です。
基本となる教材を決めたら、何度も繰り返す。
そして問題を解いて、
「なぜ間違えたのか」
を確認する。
地味ですが、結局これが強い勉強になります。
家族の理解も受験戦略の一つ
子育てをしながら行政書士試験を受験する場合、もう一つ大切なのが家族との調整です。
例えば、
「日曜日の午前中だけ2時間勉強させてもらう」
「試験直前の1か月だけ少し勉強時間を増やす」
といった形で、あらかじめ家族と話しておくことも重要でしょう。
資格試験は本人だけの問題に見えますが、子育て世帯ではそうとも限りません。
勉強している間、誰かが子どもを見ているからです。
だからこそ、家族への感謝も必要です。
合格したときに、
「自分一人で取った資格ではないな」
と思えるくらいで、ちょうどいいのかもしれません。
子育て中だからこそ、資格を取る意味もある
20代の頃とは違い、30代、40代になると、自分の将来について考える機会が増えます。
このまま今の仕事を続けるのか。
転職するのか。
独立するのか。
副業を始めるのか。
子どもが大きくなったとき、自分はどんな仕事をしていたいのか。
行政書士資格を取得したからといって、人生が自動的に変わるわけではありません。
資格は魔法ではありません。
しかし、資格を取得することで、新しい選択肢を持つことはできます。
独立開業する。
行政書士事務所で働く。
現在の仕事に法律知識を生かす。
別の資格へステップアップする。
その意味では、行政書士試験への挑戦は、単なる試験勉強ではなく、これからの自分の働き方を考える機会にもなるでしょう。
○子どもが寝たあとに六法を開く人へ
仕事をして、子どもの世話をして、家事をして。
ようやく静かになった部屋で、行政法や民法の勉強をする。
眠い日もあるでしょう。
「何でこんなことをやっているんだろう」
と思う日もあるかもしれません。
それでも、今日覚えた条文一つ、理解できた過去問一問は、確実に積み上がっています。
一日で合格レベルになる人はいません。
10分、30分、1時間。
その積み重ねです。
子育てをしながら行政書士試験を受験する人に必要なのは、「時間がない」と焦ることではありません。
限られた時間で、今日何を一つ理解するのか。
そこに集中することです。
子育ても仕事もある。
だから、一日中勉強することはできない。
それで構いません。
子どもを寝かせたあとに開いた、その一冊のテキストからでも、行政書士試験への挑戦は十分始められます。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本