あなたも、家族と一緒にいるのに、なぜか自分だけ浮いているような感覚に襲われたことはありませんか。
目に見える暴言や拒絶ではなく、部屋の温度、視線、ちょっとした言葉の端々から伝わってくる“排除の空気”。
それが続くと、心はじわじわ削られていきます。
僕のセッションにも、そんな感覚を抱えた海さんがやって来ました。
感謝としんどさが同時に胸にある——その揺れをどう扱えばいいのか、一緒に探っていく時間になりました。
「……話していいのか分からないんですけど」
海さんは、深く息を吐きながら言葉を切り出した。
実家の家族とは、もう長く連絡を取っていないという。
きっかけは、長女である姉の一言だった。
——「発達障害じゃない?」
社会福祉士の姉が、衝突の多さを理由にそう告げた。
「それで誤解が解けるなら」と受けた検査の結果は“該当せず”。
だが姉は納得せず、親族に「海は発達障害」と伝えてしまった。
それから、家族からの扱いは変わってしまった。
「話し合おうとしたこともあったんです。でも、“わがまま”“聞きたくない”で終わってしまって……」
海さんは、視線を落とし、膝の上で指をぎゅっと握った。
僕は黙って待つ。
やや間を置き、彼女は続けた。
「帰省しても、夏にクーラーのない部屋をあてがわれたり、リビングも客間も使わせてもらえなかったり。
家事をしても笑われるんです。陰でこそこそ言われて……」
その言葉に混じる小さな震えは、怒りというより、繰り返し蓄積した疲労に近かった。
僕は問いかけた。
「じゃあ、その状況であなたができる“小さなコントロール”って、どんな形でしょうね?」
海さんは少し考えて、「感情的にならないこと……ですかね」と答える。
僕はうなずく。
「感情的に反応するのは自然なこと。でも、相手が理不尽なら、それを逆に利用する手もあるんです。
例えば、病院の費用を出してもらう提案をしてみるとか、言質を録音して確認する形にするとか」
海さんは小さく笑った。
「そんな発想、なかったです」
「大事なのは、相手を打ち負かすことじゃなく、あなたが消耗しない距離を見つけること。
心の中で『かわいそうな人だな』と思うだけでもいい。言葉にしなくても、その視点を持つだけで、受けるダメージは変わります」
海さんは肩の力を少し抜き、「あ、ちょっと楽になりました」と言った。
その声は、セッションの初めよりも柔らかかった。
【3つのポイント】
1.家族だからといって、全てを受け入れる必要はない
2.相手の理不尽さを“利用する”視点を持つと、感情に飲まれにくくなる
3.心の中でだけ優位に立つことで、自分の居場所を守れる
【僕からの問いかけ】
あなたは、家族との間にどんな距離を置いていますか。
“距離をとる”ことは、愛情を失うことではなく、心を守る選択です。
関係を断ち切るかどうかよりも、自分が安心できる関わり方を見つける方が大切かもしれません。
今日だけでも、“できることだけ、少しだけ”試してみませんか。
(※このストーリーはサブフィクションであり、個人情報保護のため一部内容を脚色しています)