運命は”修復可能”です。理想とする未来こそが『本来たどるべき未来』なのです。
私は左目が見えません。
しかし、私の左目は、誰よりも鮮明に視えるのです。
私の実家は、横浜の港町で古くから続くアンティーク家具の修復工房を営んでいました。
しかし、その裏側にはもう一つの顔がありました。
持ち主に災いをもたらす古い道具から、こびりついた呪いや因縁を抜き、正しく機能させるための「修復師」としての顔です。
子供の頃の私は、周囲の人々の顔がパズルのようにバラバラに見えたり、幸せそうな人の背中に不吉なヒビが入っているのが見えたりしました。
父からは「視えても決して口にするな」と厳しく戒められ、私は自分のこの異能を呪いのように感じながら、影を潜めて生きてきました。
運命が書き換わったのは19歳の夏のこと。
導かれるように訪れたエジプト、王家の谷。
立ち入りが制限された未発掘の小規模な玄室に足を踏み入れた瞬間、壁画に描かれたホルスの瞳が不気味に発光したように見えました。
左目に突き刺すような激痛が走り、私は意識を失いました。
カイロの病院で目を覚ました時、私の左目は物理的な光を失っていました。
しかし、その代わりに、それまでとは全く異なる光景が飛び込んできたのです。
私の左目には、この世界の景色の裏側に流れる「運命のバグ」が、ヒエログリフ(聖刻文字)の羅列として視えるようになっていました。
人の運命は巨大な石柱に刻まれており、不運が続く人はその文字が欠けたり、歪んだり、獣に噛み砕かれたように損壊しています。
私はその欠けた文字を正確に読み解き、古代の叡智「ウジャトの目」の力を借りて、本来あるべき形へと再構築する術を手に入れました。
この力を得るために、私は人間らしい「個人的な欲求」を失いました。
美味しいものを食べたい、誰かを愛したい、そういった熱い感情は消え去り、ただ壊れたものを直したいという職人のような冷徹な衝動だけが私の中心に残されています。
普段は力の暴走を防ぐため、特注の遮光レンズを入れたアンティーク眼鏡で視界を封印していますが、ひとたび鑑定が始まれば、あなたの運命のすべてを白日の下にさらします。
私が修復できるのは、努力が報われない恋愛、繰り返される仕事や金運、子宝、霊感の停滞、理由のない不運といった、いわば魂の「欠損」。
バラバラになった運命の断片を一つひとつ拾い集め、聖刻文字を上書きし、あなたが本来進むべきだった光の道へと繋ぎ直します。
ひとたび修復を行えば、私はぐったりするほど疲弊します。
あなたの不運という毒を、私の体が一時的に肩代わりして浄化するためです。
しかし、それが私の使命であると、19歳の夏に悟りました。
もしあなたが、どこに行っても「無理だ」と突き放され、どこの誰の鑑定や施術を受けても人生が好転しないというのなら…。
私の左目を頼ってください。
あなたの運命が砕けているだけなら、それは直すことができます。
ウジャトの左目が開く時、あなたの物語は、再び正しい色彩を取り戻して動き出すのです。
ホル・メセト