星達也です。今回は最低賃金の上昇のニュースを聞き、世の中の変化について私が懸念している事項をまとめて書いてみました。
やや、形式が固いと思いますが、最後までお読みいただければと思います。
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最低賃金の上昇と世の中の変化
〜平均年収層が最低賃金に飲み込まれる時代の到来〜
ニュースや日常の報道で見かけない日がないほど、大きな話題となっている「最低賃金の引き上げ」。
働いている私たちの給与が上がっていく方向性自体はとても喜ばしい変化ですが、FP1級としての相談現場や企業経営の動向を分析する立場から見ると、今後の社会構造や働き方に非常に大きな影響を及ぼす局面を迎えていると感じています。
社員の給与改定以上に最低賃金が上がるペースの方が速く、このままの勢いが続けば「世の中の多くの労働者が最低賃金水準に収れんしていく」という懸念と、二極化となる懸念の双方を感じています。
今回は、この急激な最低賃金の上昇が企業や労働者にどのような変化をもたらすのか、そして私たちは将来的に経済的な安定と真の豊かさを得ることができるのかについて、FPの視点からわかりやすく紐解いてみたいと思います。
「月給25万円」の会社が直面する最低賃金違反のリスク
転職活動や若年層の採用において、「月給25万円」という条件を聞くと、一見すると比較的安定した良い条件のように思えますよね。ですが、勤務実態によっては、この条件が思わぬ法的リスクを抱えることになります。
例えば、東京都内の企業で「月25日出勤・1日8時間労働(月200時間労働)」という少しハードな条件で、月給25万円が支払われているケースを考えてみましょう。
月給制の場合、最低賃金を満たしているかどうかは、基本給などを1か月の平均所定労働時間で割った「1時間あたりの金額」で判定します。
250,000円 ÷ 200時間 = 1,250円
令和8年度に決定したの東京都の最低賃金(令和8年10月1日スタート)は1時間あたり1,280円ですので、時給換算1,250円となるこのケースは、残念ながら最低賃金法違反になってしまいます。
ここで事業主によっては「うちはボーナスをしっかり出しているから、年間トータルで見ればクリアしている」と思われるかもしれません。
しかし、最低賃金の計算では、賞与や臨時手当、残業代などは明確に除外して計算することが法律で定められています。
あくまで毎月固定で支払われる基本給などのみで、基準をクリアしなければならないのです。
かつては「普通に良い会社」とされていた企業であっても、急ピッチで上がる最低賃金に追いつけず、法律違反のリスクにさらされる時代になっています。昇給という形で適切に対応できない企業からは人が離れていき、最終的にはいわゆる「人手不足倒産」へと追い込まれてしまうのが現実です。
人手不足とコスト高騰が招く省人化・自動化へのシフト
人件費の上昇やそれに伴う法的リスクの高まりは、経営者にとって「人を雇うことには相応のコストとリスクが伴う」という意識持たせることになります。
その結果、今以上に業務の機械化やAI・ロボットなどへの置き換えが行われると思われます。
野村総合研究所(NRI)などの推計によると、日本の労働人口の約49%が、技術的にAIやロボットなどで代替可能になると言われています。特に一般事務や製造現場などのルーティン作業は、機械への置き換えが急速に進みやすいといわれています。
帝国データバンクなどの最新レポートでも、人件費の高騰による「人手不足倒産」が過去最多となっていて、外食産業や非製造業を中心に、AIやロボットの導入といった「省人化投資」が経営を存続のカギとなっているとの見解が示されました。
ただ、今まで働いていた「一般事務の方」「定型の製造業の方」はどうしても世の中の変化に伴って起こる仕事の需要変化「ワークシフト」にさらされることになってしまいます。
一労働者が直面するワークシフトと労働市場の二極化
こうした社会全体の構造変化に伴い、私たち一労働者が置かれる環境も大きく変わっていきます。その中心となるのが「労働市場における二極化」と「ワークシフト」です。
1. 労働者の二極化(最低賃金層 vs 高額所得層)
サービスや商品の価格を上げられず、賃上げの原資を作れない企業で働く労働者は、最低賃金の引き上げに合わせた最低限の昇給にとどまり、実質的に最低賃金レベルから抜け出しにくくなるリスクがあります。一方で、高い付加価値を生み出して価格転嫁に成功している企業や、半導体・AIといった成長産業で働く人材、専門性を発揮して成果を出す人材には高い報酬が集まります。その結果、個人間の格差がより鮮明になっていくと考えられます。
2. 平均年収層と最低賃金の接近(ゼロ距離化)
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、日本の働く人の平均年収は約478万円となっています。年収478万円(賞与4か月分を含むとして月給約29.8万円)の世帯で、先ほどと同様に月200時間労働として計算すると、1時間あたりの金額は約1,493.7円です。東京都の最低賃金(1,280円)との差は、わずか210円ほどしかありません。
毎年55〜60円前後のペースで最低賃金が上がり続けた場合、およそ3.5〜4年で平均的な労働者の時給水準に追いついてしまう計算になります。
(最低賃金に違反しないように、賞与分を給与として支給するなどの企業が増えるかもしれませんが、これも一時しのぎであり、長期の効果はないと考えます)
これまで「平均的」とされていた給与水準で働く人々までもが、最低賃金の水準に飲み込まれていく懸念があるといえます。
最低賃金引き上げで日本人は経済的安定を得られるのでしょうか
では、「最低賃金が上がれば、私たちの暮らしは本当に豊かになるのか?」という点ですが、これについては専門家の間でも見解が分かれています。
「最低賃金を強制的に引き上げることで、企業は生産性を高めるためのIT投資やイノベーションを行わざるを得なくなり、結果として経済全体のパイが大きくなって国民の所得が増える(要は最低賃金が上がると豊かになる)」
との分析がある一方で、
各種金融機関などのレポートでは、「額面の給与(名目賃金)が上がっても、それ以上に物価が上がってしまえば『実質賃金』はマイナスのままとなり、生活の豊かさは実感できないまま推移する」という慎重な意見も示されています。
おわりに
時代の変化の中で、自分と家族の「豊かな暮らし」を守るために
最低賃金の大幅な引き上げやAI・ロボットの導入といったお話は、少し遠いニュースのように感じるかもしれません。ですが、最近、「自動化されたレジスターが増えた」とか「飲食店の注文がタッチパネルになった」など、身近にワークシフトを感じる方は多いと思います。実は私たちの毎日の働き方や、ご家庭の家計管理に直結するとても身近で大切なテーマです。
これからの時代、ただ時間を切り売りして働くスタイルだけでは、上がっていく物価や世の中の変化に対応していくのが難しくなっていくかもしれません。だからこそ、企業も私たち一人ひとりも、「自分にしかできない工夫や強み」を少しずつ磨いていくことが大切になります。
「これからの給料や物価はどうなるんだろう?」
「我が家の家計や子どもの教育費、老後資金は今のままで大丈夫かな……」
そんな不安を感じたときこそ、ライフプランを見直す絶好のチャンスです。世の中の仕組みがどれだけ変わっても、ご自身やご家族が目指す「理想の暮らし」のカタチは一人ひとり違います。
FP(ファイナンシャル・プランナー)として、最新の経済の動きを踏まえながら、皆様が将来も安心して笑顔で暮らしていけるよう、お家計やキャリアに寄り添ったライフプランづくりをこれからもサポートしてまいります。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね。
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