看護研究を進めるうえで、避けて通れないのが倫理審査です。
研究計画書を作成し、説明文書や同意書を準備して、いざ申請しようとした時に、
「この内容で大丈夫だろうか」
「倫理審査で指摘されそうなところはないだろうか」
と不安になる方も多いのではないでしょうか。
倫理審査は、単に書類を提出すればよいものではありません。
研究対象者の権利や安全が守られているか、研究方法に無理がないか、説明内容に不足がないかなど、さまざまな視点から確認されます。
今回は、看護研究で倫理審査を申請する前に確認しておきたいポイントを紹介します。
① 研究目的と方法が一致しているか
まず確認したいのは、研究目的と研究方法が一致しているかです。
例えば、研究目的では「看護師の認識を明らかにする」と書いているのに、方法では単に数値データだけを集める計画になっている場合、目的と方法のつながりが弱く見えることがあります。
倫理審査では、研究対象者に負担をかけてデータを集める以上、
「その方法で本当に目的が達成できるのか」
が重要になります。
申請前には、研究目的、対象者、調査方法、分析方法が一貫しているか確認しましょう。
② 対象者の選定理由が明確か
倫理審査では、
「なぜその人たちを対象にするのか」
も確認されます。
看護研究では、患者、家族、看護師、学生などを対象にすることがあります。
その際に、対象者の選定理由が曖昧だと、研究の必要性や妥当性が伝わりにくくなります。
特に患者や学生など、立場上断りにくい可能性がある対象者を含む場合は注意が必要です。
対象者を選んだ理由だけでなく、研究協力を断っても不利益がないことを明記しておくことが大切です。
③ 研究協力の依頼方法に無理がないか
研究協力をどのように依頼するかも重要です。
例えば、上司から部下へ、教員から学生へ、担当看護師から患者へ直接依頼する場合、相手が断りにくいと感じる可能性があります。
そのため、
「誰が」
「どのタイミングで」
「どのように」
研究協力を依頼するのかを具体的に書く必要があります。
研究対象者が自由意思で参加を判断できるような配慮がされているか、申請前に確認しましょう。
④ 説明文書が分かりやすいか
説明文書は、研究者のためではなく、研究対象者のための文書です。
専門用語が多すぎたり、文章が長すぎたりすると、対象者に十分伝わらない可能性があります。
説明文書には、少なくとも以下の内容が必要です。
研究の目的
研究の方法
協力内容
所要時間
予想される負担や不利益
個人情報の扱い
研究協力は自由意思であること
途中で辞退できること
辞退しても不利益がないこと
問い合わせ先
特に看護研究では、対象者にとって分かりやすい言葉で説明されているかが大切です。
⑤ 同意取得の方法が適切か
同意書を取るのか、無記名アンケートの回答をもって同意とみなすのかなど、同意取得の方法も確認が必要です。
すべての研究で必ず署名入りの同意書が必要というわけではありません。
しかし、どのような方法で同意を得るのかは明確にしておく必要があります。
例えば、無記名アンケートであれば、
「アンケートの返送または回答をもって研究協力への同意とみなす」
などの説明が必要になることがあります。
研究方法に応じて、同意取得の方法が適切か確認しましょう。
⑥ 個人情報の扱いが明確か
倫理審査で非常に重要なのが、個人情報の取り扱いです。
氏名、年齢、所属、勤務年数、診療情報など、個人が特定される可能性のある情報を扱う場合は、特に注意が必要です。
申請書には、
どのような情報を収集するのか
個人が特定されないようにする方法
データの保管場所
データの保管期間
データの廃棄方法
研究成果公表時の匿名性
などを記載します。
「個人情報に配慮する」と書くだけでは不十分なことがあります。
どのように配慮するのかを具体的に書くことが大切です。
⑦ 研究対象者の負担が大きすぎないか
研究協力にかかる時間や心理的負担も確認されます。
例えば、インタビュー時間が長すぎる場合や、精神的につらい経験を詳しく聞く場合は、対象者への負担が大きくなる可能性があります。
その場合は、
インタビュー時間を短くする
答えたくない質問には答えなくてよいことを説明する
途中で中止できることを明記する
必要時の相談先を示す
などの配慮が必要です。
看護研究では、対象者にとって研究協力が過度な負担にならないかを丁寧に確認しましょう。
⑧ 研究計画書・説明文書・同意書に矛盾がないか
意外と多いのが、書類同士の不一致です。
例えば、
研究計画書では「インタビューは30分」と書いているのに、説明文書では「60分」と書いている。
研究計画書では「匿名化」と書いているのに、同意書では個人名の記載が必要になっている。
このような不一致があると、倫理審査で指摘されやすくなります。
申請前には、研究計画書、説明文書、同意書、依頼文の内容を見比べて、表現や数字が一致しているか確認しましょう。
⑨ 研究結果の公表方法が書かれているか
研究は実施して終わりではありません。
学会発表、論文投稿、報告書作成など、研究成果をどのように公表する予定なのかも記載しておく必要があります。
その際には、個人や施設が特定されない形で公表することを明記します。
特に単施設研究や少人数の研究では、所属や役職、経験年数などの組み合わせで個人が推測される可能性があります。
研究成果を公表する際の匿名性にも注意が必要です。
⑩ 所属機関の様式・ルールに沿っているか
倫理審査の様式や必要書類は、所属機関によって異なります。
そのため、一般的な書き方だけでなく、自分の所属機関のルールに沿っているかを確認することが重要です。
よくある必要書類としては、
倫理審査申請書
研究計画書
説明文書
同意書
研究協力依頼文
アンケート用紙
インタビューガイド
などがあります。
提出前には、最新版の様式を使っているか、必要書類に不足がないかを確認しましょう。
申請前に特に確認したいこと
倫理審査申請前には、以下の点を確認しておくと安心です。
研究目的と方法が一致しているか
対象者の選定理由が明確か
研究協力を断っても不利益がないと書かれているか
説明文書が分かりやすいか
同意取得の方法が明確か
個人情報の保管・廃棄方法が書かれているか
対象者への負担が大きすぎないか
書類同士に矛盾がないか
研究成果の公表方法が書かれているか
所属機関の様式に沿っているか
倫理審査では、研究内容そのものだけでなく、対象者への説明や配慮が十分であるかが重要になります。
まとめ
倫理審査申請では、研究計画の妥当性だけでなく、研究対象者の権利や安全への配慮が確認されます。
特に看護研究では、患者、家族、看護師、学生など、研究対象者との関係性に配慮が必要な場面も少なくありません。
申請前には、
「研究者にとって都合のよい計画になっていないか」
「対象者が安心して判断できる説明になっているか」
という視点で見直すことが大切です。
倫理審査申請書、研究計画書、説明文書、同意書の記載に不安がある方は、申請前に一度チェックしておくことをおすすめします。
必要な方に向けて、倫理審査申請前のチェックリストや、申請書類の確認ポイントも別途まとめています。申請前の整理にご活用ください。