日本人と英語を隔てる本当の壁

日本人と英語を隔てる本当の壁

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どうしたら英語ができるようになるのでしょうか。

学校で長年英語を学んできたにもかかわらず、話せない、聞き取れない、使えない――そう感じている人は多いでしょう。

そして多くの人は、「日本人は英語が苦手だ」と考えています。
しかし、この見方は半分正しく、半分は誤解かもしれません。
正確には、日本人は英語がなくても困らないほど恵まれた言語環境にいるだけなのかもしれません。

日本語を母語とする最大のメリットは、日本語だけで多くの情報にアクセスできることです。

日本語話者は1億人以上おり、出版市場も大きいため、海外ニュースや話題書も比較的早く日本語で紹介されます。政治、経済、科学、教育、医療など、幅広い分野について、日本語だけでもかなり深く知ることができます。

これは世界的に見ると、かなり恵まれた環境です。

たとえば、エストニア や ラトビア のような人口数百万人規模の国では、母語で生活はできても、最新の専門書や研究情報がすべて自国語に翻訳されるわけではありません。高度な情報にアクセスするには、英語への依存度が高くなります。

もちろん、人口が多ければ必ず母語だけで完結するわけでもありません。
例外として、インド は人口14億人超の巨大市場ですが、英国統治の歴史により英語が行政・教育・ビジネスに深く根付いています。また、人口が多い東南アジアの一部地域でも、高等教育や研究において英語が事実上の共通語として機能しています。

一方、日本では外国語ができなくても、生活し、働き、学び、楽しむことが十分可能です。
しかし、この便利さは裏を返せばデメリットにもなります。

日本語だけで生活が成り立つため、外国語を学ぶ必要性を感じにくいのです。
たしかに、日本語は英語と文法構造が大きく異なるため、お互いに習得が難しい言語だと言われます。

しかし、それ以上に重要なのは、日本人は英語がなくても困らない、つまり英語が必要に迫られにくい環境にいるということです。

この視点は、英語教育を考えるうえで非常に重要だと思います。

たとえば、オランダ や スウェーデン のような国では、母語市場が小さく、さらに周囲が多言語環境です。そのため、英語を使わずに高度な情報へアクセスしたり、仕事をしたりするのが難しい場面があります。
だから英語学習のモチベーションが自然に生まれます。

一方、日本では英語ができなくても日常生活で大きく困る場面は多くありません。この環境差を無視して「なぜ日本人は英語ができないのか」と議論するのは、少し的外れな気がします。

ただし、日本語で得られる海外情報には限界もあります。
そこには翻訳者や編集者の解釈が入ります。

外国語を学ぶ価値は、情報がどのような言葉で語られ、何が強調され、何が省かれているのかを、自分で確かめられることにあります。

さらに、インターネットの発達により、この価値は以前よりむしろ高まっています。
かつて一次情報に触れるには、海外書籍を取り寄せたり、専門誌を読んだりする必要がありました。しかし現在では、海外ニュース、論文、動画、ポッドキャストなどに個人でもほぼリアルタイムでアクセスできます。

さらに、学習のしやすさという観点でも、英語には大きな優位性があります。

英語は話者も学習者も非常に多いため、
・教材が豊富
・辞書が豊富
・AI対応が進んでいる
という強みがあります。

学習コストは、各言語の辞典の値段を見れば、おおよその見当がつけられます。例えば、代表的な英和辞典は3,000〜4,000円程度ですが、スペイン語→日本語の西和辞典は5,000〜7,000円程度することも珍しくありません。それだけ英語学習の市場が厚いということです。

これほど教材、辞書、そして最先端のAI支援が揃っている言語は他にありません。

つまり、英語は実は世界で最も学習コストが低い外国語なのです。だからこそ、目標さえ明確なら、日本にいながらでも十分に習得が可能です。

日本語は、それだけでかなり広い世界を生きられる強い言語です。
だからこそ、日本人にとって外国語学習は「生きるために必要なもの」ではなく、世界を広げたい人が選ぶものになりやすいのです。

外国語を学ぶ意味は、単なる翻訳能力ではなく、別の視点を手に入れることなのだと思います。

外国語学習は、努力が比較的そのまま資産になる、数少ない分野の一つなのです。

どうしたら英語ができるようになるのか。その答えは、ノウハウの習得ではなく、「日本語の快適な檻」から一歩外へ踏み出し、自分だけの新しい視点を見つけたいという、純粋な好奇心を持つことから始まるのかもしれません。

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