『元刑事』の医療現場奮闘記~第8回:その言動、実は「犯罪」です。カスハラと応召義務の境界線~

記事
法律・税務・士業全般
第8回トビラ.png
皆さん、こんにちは。
今回は、私が以前講演でお話しした内容をもとに、多くの医療従事者が不安に感じている「どこからがハラスメント(違法行為)なのか」、そして「応召義務との兼ね合い」について整理してお伝えします。

医療現場には「患者さんのためなら多少の無理は我慢すべき」という、いわゆる「受忍義務」の空気が根強く残っています 。

しかし、その「我慢」がスタッフの心身を壊し、結果として他の患者さんへの診療に支障をきたしては本末転倒です。

【ハラスメントの9つの態様と「罪名」】

厚生労働省が監修した「カスタマーハラスメント対策マニュアル」では、ペイシェントハラスメントを

①時間拘束型
②リピート型
③権威型
④暴言型
⑤威嚇・脅迫型
⑥暴力型
⑦施設外拘束型
⑧誹謗中傷型
⑨セクハラ型

の9つのタイプに分類していますが 、実はその多くが刑法上の犯罪に該当する可能性があります 。

主なものを挙げていきますと、
1.暴言型・威嚇型: 「バカ」「無能」といった人格否定は侮辱罪、「殺すぞ」「SNSで晒してやる」といった脅しは脅迫罪にあたります 。
2.時間拘束型・リピート型: 何時間も居座る、あるいは不当な要求で電話を繰り返す行為は、不退去罪や威力業務妨害罪に該当します 。
3.暴力型: 殴る、蹴る、物を投げるなどは、当然ながら暴行罪や傷害罪、器物損壊罪です 。
4.セクハラ型: 執拗なつきまといや不適切な接触は、ストーカー規制法違反や不同意わいせつ罪などの対象となります 。

【「応召義務」は絶対ではない】

「正当な理由がなければ診療を拒んではならない」という医師法第19条の応召義務。
これが、現場が毅然とした対応を躊躇(ちゅうちょ)する最大の壁になっています。

しかし、厚生労働省の指針でも明確にされていますが、「診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合」や「他の患者の診療に支障が出る場合」などは、診療をお断りする「正当な事由」になり得ます 。

ハラスメント行為を繰り返す相手に対し、医療者としての義務(説明や誠実な対応)を尽くした上であれば、必要以上に「応召義務」に囚われる必要はありません。

つまり、ハラスメント行為に対して毅然と対応することは、義務違反ではなく、むしろ組織として正しい判断であると言えます。

【現場を守る「3つの盾」(即実践編)】

元警察官としての私の視点から見て、現場で即座に実施すべき対策は以下の3点です。

録音・録画の徹底: 客観的な証拠は、相手への強い抑止力になります。
「記録させていただきます」と宣言するだけで、多くの人は冷静さを取り戻します。
原則として承諾を要しないケースが多いですが、院内ルールや状況に応じた配慮は必要です。
2人以上で対応: 孤立を防ぎ、証人を確保するためです。
また、場所を面談室などに変えることで、物理的・心理的な主導権を握ります。
「打ち切り」の宣言: 合理的な説明を繰り返しても納得しない場合は、「本日の対応はここまでとします」と打ち切る勇気を持ってください。
※ただし個別の事案については、状況に応じた慎重な判断が必要です。
 判断に迷った場合や、現場での具体的な対応に不安がある場合は、状況整理 からでもお手伝い可能です。

【最後に:組織としての決意】

ペイシェントハラスメントは、スタッフ個人の問題ではありません。
病院という「組織」が責任を持って対応すべき課題です。

スタッフを守ることは、最終的に病院の質を守り、他の善良な患者さんを守ることに繋がります。

「これはおかしい」と感じたら、一人で抱え込まず、まずは組織の中で共有してください。
それでも解決が難しい場合は、外部の知見を頼ることも有効です。
必要であればお手伝いします。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら