面接で「コミュニケーション能力が高い人がほしい」という企業がほとんどだと思いますが、そこに「私はコミュニケーション能力が高いです」と答える方がいます。
10年間、採用面接の場に立ち会ってきた私からすると、この言葉を聞くたびに「難しいな」と思います。
悪意があるわけでも、準備不足なわけでもない。むしろ真面目に準備した結果として出てくる言葉だからこそ、構造的な問題があります。
この言葉がなぜ逆効果になるのかを、面接官の視点から説明します。
なぜ「コミュ力が高いです」が広まったのか
就活/転職の攻略法として、「企業が求める人物像を把握して、それに合った言葉を用意する」というアドバイスがあります。
「コミュニケーション能力を重視する」と書いてある企業説明を見て、「コミュ力が高いです」という言葉を用意する。やりたいこととしては理解できます。
でも、これは「正解っぽい言葉を外から持ってくる」作業であって、「自分の経験から言葉を生み出す」作業ではありません。
そして面接官は、その違いを感じ取っています。
面接官が「コミュ力が高いです」を聞いたときに思うこと
正直に言います。
「コミュニケーション能力が高いです」と言われると、多くの面接官は次の質問を考え始めます。「本当にそうなのかを確認しないといけない」と思うからです。
なぜかというと、面接はアピールの場であることが一般化されているからそう言っている可能性があるのがまず1つ。また、アピールでなかったとすると、「自分のことを高く評価したい」という気持ちである可能性もある、など、多角的な可能性を面接官は確かめる必要性にかられるからです。一日に何人も面接していると、自己申告と実態が合っていない場面を何度も見てきます。だから「高いです」という言葉を、そのまま受け取ることはまずありません。
もう一つあります。本当にコミュニケーション能力が高い人は、コミュニケーション能力のような非常に抽象的なものを「高い」とは言いません。たいてい「自分のコミュ力の得意なこと・苦手なこと」を具体にするなど、ある程度定義をもって語ります。例えば、「場を和ませるのは得意だが、意見が対立したときの調整は苦手だった。だから〇〇という経験を通じて〜」というように、コミュニケーション能力を分解して得意不得意に分けて俯瞰していたり、コミュニケーションということに対していろいろな角度から想定をもてている。
「高いです」の一言で済ませられる人は、逆に自分の能力を深く把握できていない可能性を感じさせます。
最も根本的な問題:言葉と行動の矛盾
よく言われる「コミュニケーション能力」の中でも確実に1つ重要な要素があります。それは「相手に伝わる力」です。
その力が高い人は何をするかというと、「自分はコミュ力が高い」と言葉で訴えるのではなく、話の構成や言葉の選び方、相手の反応を見ながら話す姿勢そのもので示します。
つまり、コミュ力が高い人は「言わない」でその場のコミュニケーションで「示す」のです。
逆に言えば、「伝える力が高いです」と言葉で主張した瞬間、その人は「示す」ではなく「言う」ことで証明できたと思ってしまっている。
面接官はこの矛盾と表層理解を、はっきり意識しないまでも感覚として受け取っています。「なんとなく説得力がない」「言っていることとできていることに乖離があるような気がする」と、明確に言語化に至らずとも違和感を蓄積していきます。
面接官が実際に見ていること
「コミュニケーション能力が高い人がほしい」と企業が言うとき、採用側が本当に見たいのは「今この場で、自分の考えを整理して相手に伝えられるか」です。
面接という場そのものが、コミュ力の証明の場です。
だから面接官が実際に見ているのは、こういうことです。
・質問の意図を正しく理解して答えているか
・話の構成が整理されていて聞きやすいか
・「なぜ?」と深掘りされたとき、続きが出てくるか
・自分の言葉で話しているか、それとも用意した文章を読み上げているか
「コミュ力が高いです」という言葉は、この4つのどれも証明しません。
では何を話せばいいのか
「コミュニケーション能力が高い」とはそもそも何か、から整理します。
多くの人が思い浮かべる「コミュ力が高い人」は、「話がうまい人」「場を盛り上げられる人」です。でも面接官が採用場面で見たいのは、それとは少し違います。
面接官が「コミュ力がある」と感じる人は、「相手が言葉にできていないことを引き出せる人」です。
自分の言いたいことを流暢に伝えられる人ではなく、相手の話を聞きながら「この人が本当に言いたいのはここだ」と気づき、それを返せる人。議論が詰まったとき、感情的になっている相手に対して、言葉を選びながら場を動かせる人。
コミュニケーションは一方向ではありません。「相手がいて、相手が変わる」ことで初めて成立します。
では何を話せばいいのか
その答えは、「自分がうまく伝えた話」ではなく、「相手の反応が変わった瞬間のある話」です。
たとえば、こういう方向です。
「ゼミの議論が平行線になったとき、私は声が大きい一人に『あなたが一番心配しているのは〇〇ですか?』と聞きました。するとその人は、『そうじゃなくて、実は〇〇が不安だった』と話してくれました。主張の裏にある本音が出た瞬間、議論の空気が変わりました。言葉の表面ではなく、相手が言えていない部分を引き出すことで、初めて話が動くと気づいた経験です。」
この話の何が違うかというと、「私がうまくやった」ではなく「相手が変わった」が描かれています。一方的な発信ではなく、双方向のやり取りの中で何が起きたかが見えます。そして「なぜそのアプローチをとったか」という意図も入っている。
面接官がコミュ力を見たいとき、本当に確認しているのは、コミュニケーションを通じて「この人は相手を動かすことができるか」です。それは「何を言ったか」より、「相手がどう変わったか」の話でしか伝わりません。
面接官が見たいのは「今この場で自分の考えを伝えられるか」です。その証明は、言葉ではなく、あなたが話す内容と話し方そのものにしかありません。
借り物の言葉で自分を演じるより、自分の経験から出てくる具体的なエピソードを話すこと。それが、面接で「刺さる言葉」になる唯一の方法です。
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