心理検査の資料を作るようになったきっかけ
私は今、主に心理検査の解釈や捉え方に関連した資料をまとめて出しています。
一般的な検査結果の解釈だけでなく、
「その結果を生活の中でどのように捉えたらよいのか」という視点について、
現在の自分の中にある考えを整理したものです。
こうして資料を作る中で、
「経験の浅い若手の心理士として、私は何を語れるのだろうか」
ということを改めて考えるようになりました。
最初の土台は、受容
心理士が働く領域は多岐にわたります。私は主に、福祉・教育・医療に関わってきました。
しかし、どの領域でも共通して土台にあるものは同じだと考えています。
それが「受容」です。
私が以前勤めていた医療機関では、心理検査をの結果を書く際に、
・医師向けの所見
・保護者向けの説明文
の二つを作成していました。
医師向けには要点を簡潔にまとめますが、保護者向けの文章ではそのまま同じ内容を書くわけにはいきません。
例えば、専門用語をできるだけ使わず、保護者が受け止めやすい形で伝えることを意識していました。
つまり、私が一番大切にしていたのは、
「最初に読む保護者が、この結果を受け止められるかどうか」
という点でした。
子どもの発達に関して、保護者の方は
「他の子と違うかもしれない」
「発達が遅れているかもしれない」
そんな思いを抱えながら受診されることも多いです。
そして同時に、「そうであってほしくない」という葛藤も抱えていらっしゃいます。
そこに、検査結果という”事実”をつきつけられて、すぐに受け入れられるとは限りません。
これは、実際に多くのケースと、カルテを見ていくうちに
自分の中で得られた”気づき”でもありました。
カルテを見ていて気付いたことの一つに、受診歴があります。
初めて医療機関を受診したあと、その後何年も受診していないという記録が意外と多くありました。
福祉の現場で働く私は、「医療につながったら、その後は支援につながるものだ」とどこか当然のように考えていました。
新人のころの私は、カルテにその後の情報がない子どもを見て、不思議に思っていたのです。
しかし、あるときふと気づきました。これは、もしかしたら。
医療機関に来る必要性を感じなかった
本当は来たくなかった、だからもう行かない
そんな可能性が考えられるのではないかと。
それでは、なぜ数年後に再受診するのか。
私の地域では、
小学校入学や進級などのタイミングで
・通常学級
・支援学級
といった在籍学級を検討する材料として心理検査を受けるケースが多くあります。
つまり、
検査結果が必要になったから再受診する
という可能性もあるのではないか。
と自分の中で考えるようになりました。
ここで一つ整理しておくと、
私は経験年数も浅く、他の地域のことや制度にも詳しいわけではありません。
ここに書いているのは、あくまで自分が現場で感じたことの一つの視点です。
資料作りへの道のり
こうした経験を通して感じるようになったのは、
人は「受け入れること」ができないと、先に進めない
ということでした。
もちろん、行動が先に来て、
あとから気持ちがついてくる場合もあります。
ただ、多くの場合は、
ある程度の受容があってはじめて前に進めるのではないかということです。
そんな背景もあり、私は本業とは少し離れた形ではありますが、
心理検査に関する資料を整理する作業をはじめました。
(ただ、やりたかっただけというのもあります)
福祉領域では、支援が中心で、心理検査を実施する機会はそれほど多くありません。
それでも私は
「検査が好き」
「検査がしたい」
と言っていた、変な人だったかもしれません。
そのため、医療機関でテスター(検査者)のアルバイトをしていたこともありました。
そして今回、こうして資料をまとめてみて、一つ気づいたことがあります。
どうやら私は、
検査を実施すること自体が好きだったわけではないということ。
これは自分にとって、意外で大きな気づきでした。
では、なぜそこまで検査にこだわっていたのか。
それは、
私自身が検査に救われたから。
というのも、
自分の中にあった生きづらさが、自分が検査を受けた結果を見て、
腑に落ちたからです。
知能自体は平均だけど、偏りがあるからしんどいんだな、とか。
学生時代、
「どの教科もまんべんなくできないといけない」
「周りの人と同じようにできないといけない」
そんなふうに思っていたことが自分を苦しめていました。
日本ではよくある考え方かもしれません。
この検査の結果は、
その思い込みを手放すための”一つの裏付け”となったように思います。
だからこそ私は、
検査結果をどう生活と結び付けて捉えるか
という視点に興味を持ちつづけているのだと思います。
もし、こうした資料が誰かにとって何かのヒントになるなら。
そんな思いで、今は資料として公開しています。